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フランス人の夫が驚いた、“香る季節”という贅沢

フランス人の夫が驚いた、“香る季節”という贅沢

朝の空気が少しひんやりしてきたなと思ったら、ふわっと風に乗って届く金木犀の香り。
この香りが漂うと、「秋が来たんだな」と感じる方も多いのではないでしょうか。
私はこの香りを嗅ぐたびに、胸の奥がきゅっとして、懐かしい気持ちに包まれます。
そして、今この香りを、子どもたちと一緒に感じられる幸せをかみしめています。

秋を感じる金木犀の香り

幼稚園バスを待つ朝、ふと風が吹くとどこからか金木犀の香りが漂ってきました。

「いいにおい〜!」
子どもたちが小さな鼻をくんくんさせて、笑顔で空を仰ぐ姿が本当に愛おしい。
そんな瞬間、私はいつも胸がぎゅっとなります。

金木犀の香りって、不思議ですよね。
どこか懐かしくて、少し切なくて、子どものころの帰り道や夕暮れの校庭の風景まで思い出させてくれるような香りです。

でも、フランス人の夫にとってはこの香りは未知の存在のようで、「キンモクセイってなに?」と。日本の秋の香りを子供達も必死で説明。みんなこの香りが大好きなので、「このオレンジ色のお花だよ!」「秋の匂いなんだよ!」と教えてくれました。

フランスにはない金木犀

どうやらフランスでは、こんなふうに街じゅうを包む“季節の香り”があるわけではないそうです。
彼にとっては、この甘くやさしい香りが“はじめて出会う秋の匂い”。
「日本って、香りでも季節を感じるんだね」と、少し驚いていました。

たしかに、日本の街は季節ごとに香りが変わります。
春は桜、夏は新緑と雨のにおい、秋は金木犀、冬は澄んだ冷気。
どこにいても、香りが季節を知らせてくれる国です。
それは、忙しい日々の中でも“自然とともに生きている”証のようにも感じます。

一方でフランスでは、季節よりも“人や暮らしの香り”が印象に残ります。
春のミモザ、夏のラベンダー畑、秋のブドウの発酵する香り、冬の暖炉や焼き菓子の匂い。
そして何よりも、香水やキャンドルなど“自分で香りをまとう文化”が根づいています。
香りは季節ではなく「個性」や「記憶」を表すものなんだそう。

エルメスの香水にも

そんなフランスの老舗ブランド・エルメスにも、実は金木犀をテーマにした香水があります。
調香師がアジアを旅したときに出会った金木犀の香りに心を奪われ、
「この香りを世界に届けたい」と願って生まれたものだそう。
遠く離れた国の香りが、ひとりのクリエイターの心を動かし、香水という形で世界に広がっていった──
そう思うと、日本の街角に咲く金木犀が、なんだか誇らしく感じます。

五感を通して季節を味わう

日本では、香りや風、色で季節が移ろい、日々の中に“感じる時間”があります。
そんな文化の中で、子どもたちが五感を通して季節を味わいながら育っていくこと。
それはきっと、目には見えないけれど、とても大切な感性の土台になるのだと思います。

香りの記憶

だから、この朝のひとときを大切にしたい。
みんなで金木犀の香りを感じて笑い合ったこの時間を、
いつか子どもたちが大きくなってどこかで同じ香りに出会ったとき、
「そういえば幼稚園のバス停で、ママと“いいにおい!”って言ったね」
そんなふうに思い出してくれたら、どんなに嬉しいだろう。

母として、そんな小さな記憶を、香りと一緒に残していけたらと思います。

香りは、国も文化も越えて、人の記憶や感情を結んでくれる。
子どもたちは「いい匂い〜」と笑い、私は懐かしさにキュンとして
夫は新しい日本の秋を発見する。
季節を感じる心が、子どもたちの“やさしさの根っこ”になりますように。

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神奈川県

Akiko

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旅行、お出かけ、お菓子作り、工作が大好き!ピアノとスイーツ作りが大好き長女(5歳)生まれつき重度難聴の次女(2歳)パンとチーズにうるさいフランス人夫の4人家族。

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