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パパは夜暗闇で悪魔になるの?パパが寝かしつけをした日のこと
絢ちゃん(仮名、1歳)の夜のスケジュール
18:00 夕ご飯
19:00 パパと一緒にお風呂
19:30 寝る
絢ちゃんとは、うちの娘です。
上記が理想的なスケジュールになります。
家事と育児の両立は大変
ママが絢ちゃんを寝かせるのですが、寝かせるのに1時間かかるとすると、20:30からママはお風呂に入って、洗い物をして、おもちゃの片付けをして、洗濯物を畳んで、と結構やることがたくさん残ったまま。
絢ちゃんは夜寝るのに苦労するので、2時間かかることもあるし、そもそも夕寝が遅くなっちゃって21:00くらいに寝かせ始めることもあります。なかなかスケジュール通りにはいきません。
ママは絢ちゃんを寝かせた流れでそのまま寝てしまうこともあります。
僕は、ママが寝てしまうのは、後に残されている片付けや洗い物のことを思うと気が重くなるからだと疑っていました。つまり、ママは現実逃避しているのだと思っていました。
僕はそんな状況が不満でした。
「もっと効率よくやってよ」とママに言うこともありました。でもママもサボっているわけではないので、同じような状況が続きました。
家事が夜中まで山積みで、僕は積もった家事を横目に翌日の予習をしているみたいな。(若手外科医は予習が欠かせないのです。)
僕が寝かせればいいんじゃない?
あるお風呂上がり。
どうしてもママに家事をもう少し早く終えて欲しいと思っていた僕はついに決心しました。
絢ちゃんのスキンケアをして、パジャマに着替えさせている時、
「じゃあ、今からおれが絢ちゃん寝かせるからその間にママはお風呂入ってきたら?」
とママに言いました。
「ホント?おっけー、じゃあよろしく」
とママは不敵な笑みを浮かべながら、着替えを持ってお風呂場に消えていきました。
というのも、僕が絢ちゃんを寝かせている間に、ママはお風呂に入ってその後家事もやれば効率よくなるんじゃないかと考えたのです。しかも、絢ちゃんを寝かせる1時間半で僕も一緒に寝れば勉強の気分転換ができるので一石二鳥です。名案です。
「よし、絢ちゃん、そろそろねんねしよっか」
僕は、いつもママが寝かせる直前に言っている掛け声をマネして言ってみます。
すると、絢ちゃんも最近覚えた「ねんね」を連呼しながら、素直に僕の腕の中に収まります。
最初からこうすればよかったんだ。もう少し早く「僕が絢ちゃんを寝かせれば家のことがうまく回る」ということに気付いていれば、と少し悔やみながら寝室に向かいました。
絢ちゃんはこの時、まだ「ねんね」を連呼していて、ごくごくいつも通り。
僕も「ねんね」と言って絢ちゃんをあやしました。ママはすでにお風呂に入っています。
寝かしつけは難しい
しかし、寝室のドアを開けた瞬間にそれまでの和やかなムードが一変しました。
「うえーん」
突然、絢ちゃんが泣き出しました。
真っ暗な部屋に連れて行ったからダメだったのかな。そういえば、ママはいつも先に寝室の電気を常夜灯にしていたな。ということで、絢ちゃんを一旦明るい部屋に戻して、常夜灯にしました。
ところが、明るい部屋に戻っても絢ちゃんは泣いています。
僕は型通りに赤ちゃんが泣いている理由を考えます。
オムツかな?いや、オムツのラインは黄色のまま。
おっぱい?いや、もう卒乳している。
喉が乾いたのかな?ストローマグで水を与えてみたけど、一口含んでブーっと吐き出す。
そうか!やっぱり眠たいんだ。もう遅いもんね。それなのにパパが明るい部屋に戻したから悲しくなったんだね。ごめんごめん、絢ちゃん。
眠いから泣いていると結論がついたところで、急いで常夜灯の寝室へ。
「ぎゃー、ぎゃー」
しかし、絢ちゃんは泣き止むどころか、より激しく泣き始めました。
そこからは何をやっても泣き止む気配なし。
「ぎゃー、ぎゃー」
「大丈夫だから!じっとしてれば寝れるから」
「ぎゃー、ぎゃー、ぎゃー」
暴れ回る絢ちゃんを強引に抱き寄せて寝かせようとしますが、力を入れれば入れるほど泣き声は大きくなります。さっきまでのリラックスモードは吹き飛んで戦闘モードに。
「なんでこんなに泣かれないといけないんだろう...」
汗だくになって泣いている実子と闘うのは、ほんとに悲しかったです。
パパは夜暗闇で悪魔になるのかもしれません。
救世主登場
しばらくして、お風呂上りのママが濡れた髪の毛をバスタオルで包みながら、爽やかに寝室に現れました。
「どれどれ、絢ちゃんは寝れそうかな?」
「いや」
どこからどうみたら寝れそうやねん。と言いたいところですが、寝かせられなかったのが恥ずかしくて短い一言しか言えず。
ここで選手交代です。言葉のやりとりはありませんでしたが、まるでパパ、ママ、赤ちゃんの3人が息を合わせたかのようにスムーズにバトンタッチが行われました。絢ちゃんも含めてその場の全員が、今どうするのが最善なのかを完全に理解していました。
ママの姿をみて少し穏やかになっていた絢ちゃんは、ママに抱かれた瞬間にピタッと泣き止みました。僕は自分の無力さよりもママの偉大さを感じました。ママってやっぱり凄いんだなと思いました。
(じゃあ、今からおれが絢ちゃん寝かせるからその間にママはお風呂入ってきたら?)
一人リビングに放たれた僕は、自分の言ったこの言葉を恥じました。
寝かせられないどころかより眠れなくさせてしまった。明日の予習をする気も失せました。一石二鳥とはなんだったのか。
静かに起きている
リビングで10分くらいぼーっとしている間に、寝室はもう静かになっていました。
(すごいなあ、さすがだなあ)
もう僕はすでにママを尊敬していたのだと思います。
そして絢ちゃんの寝顔を拝借しようとそっと寝室を覗きました。決して音を立てないように。
すると、絢ちゃんはなんと普通に起きていました。静かではあるけど、座ったりハイハイしたりつかまり立ちをしたりしてじっとはしていませんでした。
静かになった=寝た、と思っていたけどそうではなかったのです。山積みの家事が億劫でママは絢ちゃんを寝かせた流れでそのまま寝てしまっているわけではなかったのです。勝手にそう思われてしまっていたママが不憫で、ほんとに謝りたい気持ちでいっぱいです。(謝ることはできていません。)
絢ちゃんは寝かされる時、ひとしきり泣いた後、静かに暴れてから時間をかけて寝る、ということを後から聞きました。
僕はママがどうするのかしばらく黒衣になって見ていました。ママはその間、ずっと絢ちゃんを見守ってタイミングをみてゴロンさせたり優しく声をかけたりしていました。そんなに楽そうではなかったです。少なくとも一緒に寝れるような状況ではありませんでした。
僕には耐えられないなと思いました。まあ、耐えれるも耐えれないも、僕は絢ちゃんにとって夜暗闇で悪魔なので、そもそも寝かせる能力がありません。
「ちょっと、おれには無理やったわ」
戦いから帰ってきたママに申し訳なく声をかけます。
「思ったとおり」
僕が謝らずともママは笑顔で優しく答えてくれました。赤ちゃんに対するように優しく。
「絢ちゃんを寝かしつけている間に、できるときは皿洗いとかやるよ」
収まりが悪かったからか、本心からか、家事を手伝う旨が僕の口をついて出てきました。
僕も少しは手伝うように
といういきさつで、今ではやれるときは家事しています。特にママが絢ちゃんを寝かしつけているときに。自分の勉強が忙しくてできないときもありますが、少なくとも家事が山積みであったとしても、それを不満に思わなくなりました。
ママはママで僕に期待することはなく、やってくれていたらありがとうだし、寝かしつけが終わって家事が山積みのままでも何も言わず淡々とやる、という感じです。いい感じに落ち着きました。
やはり、やってみるということは大切です。
寝かしつけなんて楽勝と思っているパパは少なくないんじゃないでしょうか。
パパ見知りとは?
ところで、パパは暗闇で悪魔になるという話ですが、このことをパパ見知りというそうです。
赤ちゃんは脳や視力の発達により人を判別できるようになります。生後6ヶ月くらいから人見知りが始まるのは、自分の親しい人とそうでない人を見分けられるようになるからですね。
さらに親しい人の中でも特別なのがママです。お腹にいるときから一緒で、生まれてからもおっぱいをもらうのも寝るときにそばにいるのもママ。
パパも特別だ(と思いたいところです)けど、ママは本当に特別。
特に夜の暗闇とか知らないところとか怖い場所ではママ一択!ママ以外は、パパも知らない人も同じレベルなのです。パパ見知りというよりはママ以外はダメという感じですね。
当然、パパはパパ見知りを防ぎたい、自分の子なんだからたまには寝かしつけもしてあげたい、と思いますよね。
パパ見知りを防ぐには、赤ちゃんが生まれた時からママと同じかそれ以上に赤ちゃんのお世話をすることです。それができれば、むしろママ見知りに持ち込める可能性すらあります。ママ見知り状態に持ち込めば、きっとママは家事を完璧にこなしてくれるでしょう。
ママ見知り状態に持ち込むのと、家事を少しでも手伝うのとどちらが実現しやすいかはパパ1人1人の判断にお任せします。
お互いの足りないところを補い合うのが夫婦です。それぞれのスタイルがあるのでこうすべきだという決まりはないと思います。
今回の経験で、お互いに相手のできないことを見つけて、それをやってあげるという意識を持つことが大切なのかなと思いました。
僕の場合は、皿洗いです。
家事を少しでも手伝って欲しいなあと思っているママは、是非この話をパパに読んでもらってください。それか、実際にこの話の通りに寝かしつけをお願いしてみてもいいかもしれないですね。