「料理がめんどい」人必見!自炊料理家が伝える“料理を楽しむコツ”と、子どもの頃から料理に親しむメリット

毎日の献立や栄養バランス、子どもの好き嫌いなど料理の悩みはつきません。そんな「料理がめんどい」人必見!自炊にまつわる問題を網羅した話題の書籍『自炊の壁−料理の「めんどい」を乗り越える100の方法』著者、“自由すぎる”自炊料理家の山口祐加さんに料理を楽しむコツをお聞きしました。
「料理」「自炊」の意味を違う視点から考えてみる
朝ごはん、お弁当、夕食…毎日料理をしていると作業的になってしまい、大変だと感じることがあります。そんな親御さんたちの悩みに対して、自炊料理家の山口祐加さんに心が軽くなるお話をお聞きしました。

自炊が苦手だと感じてしまう理由は?
料理のプロセス多すぎ問題
私の料理教室の対象者は「料理が苦手な方、初心者」限定なのですが、参加者が料理が苦手だと感じた理由は本当にさまざまです。食材が余って使いきれない、献立を考えるのが大変、切るのが遅くて嫌になるなど、キリがありません。料理は献立決めから買い物、冷蔵庫などにしまう、調理、盛り付け・配膳、片付け・皿洗い、保存、ゴミ捨てと、プロセスが多すぎるので、「料理がめんどい」と感じてしまうのかもしれません。
理想と現実のギャップ
大人になるまで料理をしたことがなかった人ほど、「上手に作りたい!」という気持ちが強くなってしまうのだと思います。子育ても同じではないかと思うのですが、やったことがないからこそ、こんなふうに育てたいと理想像があって現実とのギャップで悩んでしまう。
料理は入ってくる情報がきれいに整えられているものばかりで、雑誌やテレビなどではテーブルもスタイリングされてお皿も料理に合わせて選ばれています。お膳立てされた料理しか見ていないので自分で実際にやってみたときに自分は劣っていると思い込んでしまう。プロの料理と家庭料理を比べてしまうことで自分は料理が苦手だと感じてしまうのではないでしょうか。
苦手意識をなくすためには、SNSに投稿されている料理も含め、見せるために作られた料理と家庭料理を切り離して考えたほうがいいですね。
料理を楽しむコツ1.ミニマルに始めて「名もなき料理」をたくさん作ろう
私は、料理のベースにあるのは、生で食べにくいものに火を通すように「食べにくいものを食べやすくする行為」だと思います。だから「食材をどうやって切ったらいいですか?」という質問には「口に入る大きさにきればいいんですよ」と答えます。
いきなり100%を目指さず、ミニマルに始めたらいいんです。例えば、あらゆる料理は「食材×調理法×調味料」という方程式で表すことができます。調理法といっても無数にあるわけではなく、生のまま、焼く(炒める)、煮る、ゆでる、揚げるぐらいしか日常的には使いません。味付けも本書では「味付け三種の神器」として、「塩+油」「しょうゆ+みりん」「酢+塩+油」という本当に基本的な味付けを紹介しています。どんな食材でも、このどれかの味付けで適当に料理をつくることができるんです。
他にも「塩分1%」「野菜+タンパク質」といった料理の法則を紹介しているのですが、「肉じゃが」のように「有名な料理」ではなくて、料理の法則に沿って、その日その場で生まれた炒め物や煮物など「名もなき料理」をたくさん作ってみてください。再現性がないから飽きないですし、自分で勝手にネーミングするのも楽しいですよ!

料理を楽しむコツ2.毎日の献立は考えない!
私は、人間はそもそも献立を考えることに不向きなのではないかと最近感じていて、もう献立を考えることを諦めたらいいのではないかと思っています。「献立は立てるものだ」という理想があって、追いつかない自分を責めてしまう、これも料理を苦手だと感じてしまう理由のひとつではないでしょうか。
私の場合は、食べたいものが日々変わるので、献立は立ててもしょうがないと思っています。例えば、献立を決めて準備をしていたとしても、帰宅時間が遅くなって調理する時間がないということもあるわけです。そういうときに、献立を決めていると自分を苦しめてしまうので、「決めない」という選択肢もあると思います。献立を考えるのが向いている人もいれば、向いていない人もいます。自分に合ったやり方を選ぶのがいいですね。
「料理の型」を作ろう
料理にはあまりに選択肢があって、制限することが必要です。それが「料理の型」です。私が日々繰り返し作っている料理は、主菜、副菜合わせてせいぜい10パターンぐらいの「型」しかありません。作りやすく得意な料理で、食材を入れ替えながら日々充分やりくりできる「型」を作ると良いですね。
献立も同様に「型」を決めるのが楽だと思います。一汁一菜を作る、昼は麺類にする、みそ汁だけ作るなど、自分なりのハードルを下げた方法から始めればいいんです。

料理を楽しむコツ3.“自分のために”料理を作れば楽しくなる!
私の「オンライン自炊レッスン」に参加する親御さんの中にも、子どもの好き嫌いやアレルギー対応で食材が限られたりする中で、料理自体が義務的になってしまったという方がいました。料理が楽しくなくなる理由はいろいろあると思いますが、私としてはお母さん・お父さんが自分のために料理を作ってほしいと思っています。
辛いものが食べたければ、子どもが食べられるものを一品くらい用意して、あとは自分の好きなものを用意すればいいのです。子どものために作ったのに食べてくれないとイライラしてしまうことってありますよね。それが子どもにとって、かえってマイナスになると思います。今日のご飯がおいしいかどうかより、お母さん・お父さんが機嫌よくしていることのほうが大切なのではないでしょうか。
料理を楽しむコツ4.料理・家事について考える時間をつくる
料理や家事をすることが大変だと感じたり苦しんでしまうことがあれば、その原因を因数分解して考える時間をつくることも大切です。忙しい毎日を過ごしていると、考える暇さえなくなって作業的になってしまいます。自分との会話、家族との会話を通して家族が助けてくれるなら、分担したり一緒にやればいいのです。
一緒に暮している家族なので、一人で抱え込まないでみんなでやってみてはどうでしょう。子どもは、ある程度の年齢になると「手伝いたい」と言い始める時期がきます。その瞬間を絶対に逃しちゃいけないと思っていて、「また今度ね」と先延ばしにしていると、「料理や家事は大人がやるものだ」というマインドになってしまいます。テーブルのセットをする、昆布を切るなど、なんでもいいのでできることから始めてもらって、家事を分担することができる力を育てていくのが良いと思います。
子どもの頃から料理に親しむメリットは?
子ども向けにもオンライン自炊レッスンを行なっている山口さんに、子どもの頃から料理に親しむメリットについて、お聞きしました。
子どもの頃から料理をすることは自立の一歩につながる
子どもが親元を離れたときに、一人で暮らせる生活力がないと困りますよね。一緒に過ごせる今のうちに、子どもが料理や家事を覚えておくことは、自立の一歩につながります。料理や家事が日常になれば、いずれ子ども自身が楽になります。
子どもに愛情を注ぐことは大切ですが、甘やかされて育つというのとはまた別だと思うので、その線引きも家庭内で考えないといけませんよね。当然ですが、子どもはやったことがないことはわからない。親御さんが積極的にきっかけを与えないと経験できず、何もわからない状態になってしまいます。「過保護と愛情は別」なので、積極的に経験をさせて、子どもの自立生活力を育むことは大切です。
家事は限られた時間や資源を活かしていかに効率よくできるかです。考えて行動することは勉強にもつながりますし、からだを動かして学べることも多いです。
子どもが料理に挑戦するときのサポートで意識したいことは?
私は自炊する人を一人でも増やすことを目標に活動しています。子どもたちは未来の自炊人だと思っているので、子どもの頃から自炊することが当然になったらいいなと思って、子ども向けのレッスンを始めました。レッスンではとにかくみんな楽しそうで、見ていて素晴らしいなと思います。
子どもたちにとって料理は遊びのひとつなので、材料をこぼしてしまったりしても失敗ではありません。ご家庭でお子さんが料理に挑戦することがあったら「初めてのことだもんね」と見守ってあげてください。卵焼きのかたちが上手にできなくても、食べたら「おいしいね」って、それだけで大成功なんです。
自炊の壁 料理の「めんどい」を乗り越える100の方法

著者:佐々木典士、山口祐加
出版社:ダイヤモンド社
「どうすれば、自炊を楽しく続けられるのか?」コスパ、レシピ、味、献立、キッチンの5つの壁を乗り越えれば、こんがらがった料理の当たり前が消える!料理がもっと自由になる!料理入門中のミニマリストと、ゆるすぎる自炊料理家が100のテーマで「壁」を解き明かす、一生モノの“自炊”啓発書。
企画・編集/&あんふぁん編集部、文/やまさきけいこ、写真/中川正子
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