松岡修造さん流・独特な読み聞かせのスタイルとは?初の絵本「できるぞう できたぞう」のプレゼントも

絵本「できるぞう できたぞう」(1650円)作/松岡修造、絵/ふくながじゅんぺい、出版/文化工房

絵本作りのきっかけは自身の子育て経験から

――絵本を作ろうと思った理由を教えてください

自分の子どもたちに絵本を読み聞かせしていた経験から、親として絵本に助けられてきたと感じています。そこで、今度は、子育てをしているご家族への応援メッセージを届けたいと思い、特に親御さんに読んでもらいたくて絵本を作りました。

――松岡さんも、読み聞かせをされていたんですね。

近所の図書館でいろんな絵本を借りて、毎晩3冊ほど読んでいました。疲れて寝ちゃうと本で叩かれたりして(笑)。子どもは続きが気になるんですよね。

僕は普通の読み方はせず、たとえば「歯磨きなんて大嫌いだ」というセリフがあったら、毎回違うトーンや動きをつけて読んで、子どもたちを楽しませていました。ある意味、舞台のような感覚で。そして、僕が4歳の子どもに本を読んでいるとしたら、“自分もいかに4歳になれるか”が僕にとっては大事でした。本気で絵本の世界に入り込んで読んでいたので、 実は一番楽しんでいたのは僕だったのかもしれません。

主人公はオレンジのゾウ その理由は?

――ゾウがオレンジ色なのはどんな意味があるのですか?

僕はオレンジが大好きで、パンツや靴下も毎日オレンジ色。この色は元気をもらえるんですよ。本来のゾウの色とは違いますが、イマジネーションの世界観として絵本の中ではあってもいいんじゃないかなと思って、描いてもらいました。

――ふくながじゅんぺいさんの絵の感想をお聞かせください

シンプルでいて優しい色合い。なので、子どもが自由に解釈できる絵だと感じました。言葉と絵が自然と重なり、伝わってくる。ふくながさんが僕の想いを丁寧にくみ取ってくれて、自然体の絵が生まれたと思います。読む側の感性でいろいろな意味に捉えられるからこそ、言葉のインパクトだけではなく、シンプルさも大事にしてくださって、より伝わる絵本ができあがりました。

できたとき自分に拍手を 喜びを自分の力に変えて

――絵本はどのように読んでほしいですか?

親子で読んでほしいです。できなかったことができるようになる過程は、子どもだけでなく親の喜びでもあります。テニスのジュニア合宿では、できた瞬間に自分で自分に拍手しようと伝えています。初めてできたことを喜べる人は、その経験を自分の力に変えることができる。そして、周りの人もその喜びを同じように共感してくれることも大切です。どんなことでも、できるってスゴイこと。親も一緒に喜んであげてほしいですね。

応援するときに「頑張れ」という言葉だけでは使わない

残念ながら、感情論や根性論だけで「できる」ようにはなりません。「頑張れ」という言葉は好きですが、やり方を教えずに、ただ頑張れと言っても、できないのは当たり前。ここで大事なのは、どのように頑張ればいいのか、その方法も一緒に伝えることです。同じ言葉でも、その人がどういう感性でどう受け取るかによって、意味が変わってくる。だからこそ、言葉には力がある、生きてるなって思います。

――できないことができるようになる。子どもの成長の途中で読む絵本になってもいいですよね。

個人的に一番好きなのは「チーター」が出てくるところです。「きのうのじぶんをおいこチーター」というセリフがあるのですが、「誰かと比べる」「誰かに勝つ」のではなく、「昨日の自分を追い越していく」「自分を毎日更新していく」ことがより大事だと理解できれば、失敗を怖がらなくなります。また、「失敗してもいいよ」という親の思いがわかれば、チャレンジする勇気もわいてくる。力強い応援メッセージが込められているページなので、お気に入りです。

子育てで心がけてきたこと 感情のコントロールと手紙の力

自分の気持ちを手紙に込めてひと呼吸

言葉には感情がストレートに出てしまうので、イライラしていたら、相手にも伝わってしまいます。どうしても、感情が先走って冷静さを失い、「なんでこんなこと言っちゃったんだろう」と反省する時も。明らかに僕のミスなんですよね。子どもたちにも、よく「短気ぞう」って言われます(笑)。なので、ひと呼吸するために、子どもに手紙を書く機会が増えました。他の子どもには絶対に言わないような言葉も、自分の子どもには感情的になってしまって、ついつい…。良い意味では、深い愛情なのでしょうが、子どもに対する甘えですよね。だから、手紙を渡すだけの一方通行でもいいのかなと思って、冷静になって、伝えたいことを手紙に書くようになりました。

苦しい時にもらう手紙は一生心に残るメッセージ

テニスのジュニア合宿などで、子どもたちを強烈に追い込んでいく時がありますが、本当につらい時、苦しい時に、預かっておいた親御さんからの手紙を渡すんです。心が崩れそうな時に、その手紙を読むと、親御さんの思いが、心に響いて大泣きする子も。今でも、「あの手紙が僕を救ってくれた」とか、その手紙の衝撃は一生忘れられないものになるようです。そこには、真の愛情が詰まっていますから。

解決策を子ども自身に導かせるためのホワイトボード

自分の子どもには、なかなか素直になったり優しくなったりすることが難しい。そこで、子どもたちから何か相談があった時は、具体的に今ある悩みをホワイトボードに書き出して整理していきます。僕からは答えを言いません。ただ、ずっと子どもの話を聞いて、書き出していくだけ。そうすると、子どもたちは自分で答えを見つけられるんです。

親の役割は「信じる」こと 深刻にならず真剣に向き合って

――読者のママパパたちにエールをお願いします!

親の役割は信じるに尽きます。親は子どもにとっての安全地帯。何があっても守るという思いを、どれだけ子どもたちに伝えられるか。何が成功かなんて、見た目にはわかりません。その子にとって幸せな選択をすることが大事で、親にできるのは、信じることなのかなと思います。親の希望からズレてきていると思っても、それは超ちっぽけなことなんですよ。その時は本気で悩むかもしれませんが、新幹線の駅みたいに通り過ぎてしまえば、深刻なことはなにもない。

大切なのは、子どもと本気で向き合うこと。深刻になりすぎず、真剣に向き合う。そうすれば、今悩んでいることも、きっと通過点だと思える日が来るはずです。どうか親御さんたちは子どもを信じて、見守ってあげてください。

PROFILE●

松岡修造さん

スポーツキャスター・元プロテニスプレイヤー。1995年、ウィンブルドンで日本人男子62年ぶりベスト8進出。現在はジュニアの育成・強化とテニス界の発展に尽力する一方、メディアでも幅広く活躍中。3児の父としての顔も持つ。

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絵本「できるぞう できたぞう」を抽選で5人にプレゼント

この記事を最後まで読んでくれたあなたにうれしいお知らせ。記事で紹介した松岡修造さんの絵本「できるぞう できたぞう」を抽選で5人にプレゼントします。

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