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給食の器はあえて陶器で 卒園までに三色食品群が分かる子に「にじいろ保育園」食育への盛んな取り組み

保育園や幼稚園を取材して、園の理念や特色を紹介するコラム「園のこころ」がスタート。第1回は、東京都・大田区にある「にじいろ保育園大岡山」。園長の市橋さんと園を運営するライクキッズ広報の加藤さんにお話を聞きました。
「三色食品群」は卒園までにほとんどの子が覚える!食育への取り組み
――はじめに、「にじいろ保育園」の理念について教えてください。
加藤さん:「にじいろ保育園」は、首都圏を中心に160園以上を展開しています。ひだまりのようにあたたかい「第二のわが家」として、木のぬくもりが感じられる空間づくりを大切にしています。クラスの名前には「だいち」「そよかぜ」「ふたば」「うみ」「そら」「たいよう」など、自然の名前が付けられています。
食育にも力を入れていて、食品を栄養素から三色に分類する「三色食品群」は、卒園までにほとんどの子が覚えてしまうんですよ。給食では、器を大切に使うことを教えたいという思いから、陶器の食器を使っています。給食のメニューは栄養士が考えた、全園共通の献立を使用していますが、自園調理なので、食育や行事など園ごとに独自のメニューを考案することもありますよね。

市橋さん:毎年、園ごとに保育のテーマを決めているのですが、「にじいろ保育園大岡山」の今年のテーマは「絵本」です。『おどるカツオブシ』という絵本を読んだときは、ホットプレートでお好み焼きを作ってカツオブシがおどるところを子どもたちに見てもらいました。
加藤さん:先生たちの出身地の郷土料理を出している園もあって、おもしろいなと思いました。海外交流の一環として、交流する相手国の料理を給食で出すこともあります。
子どもたちとクッキングもします。みんなでカレーを作ったときは、年長組の子たちが買い出しを手伝って、小さい組の子たちが野菜を洗ったり皮をむいたりして、仕上げは年長組さん。「みんなで作ったね」という達成感があって、よかったですね。
栄養士さんたちには「卒園するまでに、自分で食事を終えられるようになってほしい。食べることを自信につなげてほしい」という思いを持っているため、苦手なものを無理に食べさせることはせず、そうした方針も、とてもすてきだと感じています。

大豆に触れたり

ニンジンの型抜きをしたりなど食育の取り組みはいろいろ。
遊ぶ時間はなくても一緒過ごす時間の「密度」が大切
――「にじいろ保育園大岡山」にはどのような特色がありますか。
市橋さん:当園は、保育士さん、栄養士さん、看護師さん、それぞれが専門知識を生かして協力して子どもたちと保護者の方を支えていて、保育の質が高いと思っています。年次ごとのフォローアップ研修や、動画視聴できるカリキュラムなど研修も充実していて、どうすれば保育を通して子どもたちの非認知能力を伸ばすことができるのか、みんなで勉強しています。
環境にも恵まれていて、近くにある洗足池公園へお散歩に行ったり、桜の季節にはお花見に行ったりします。園庭には固定の遊具を置いていないので、子どもたちはフラフープやボールを使って、思い思いに遊んでいます。
――お子さんを保育園に通わせている保護者アンケートによれば、3割以上の人が「平日、子どもと遊ぶ時間を十分にとってあげられない」と回答しています。
市橋さん:私も子育てをしてきた親の1人として、保育園から帰ってからの限られた時間で、食事、お風呂、寝かしつけという重労働をすることが、どんなに大変かは想像できます。時間が少ないなかでもお子さんと「遊んであげたい」と思っていらっしゃる親御さんには頭が下がります。
遊ぶ時間はなくても、一緒に過ごす時間の密度が大切ではないでしょうか。ごはんを食べながらその日あったことを話したり、「おいしいね」と共感したりすることで、心が触れ合いますよね。お風呂に入りながら遊んだり、寝かしつけながら絵本を読んであげたりすれば、十分楽しい時間になると思います。
あとは、「あなたを大切に思っているよ」ということを、心で思っているだけでなくて、言葉にしたりギュッと抱きしめたりして、お子さんに伝えることも大事じゃないかな。「ありがとう」「ごめんね」「大好き」「うれしい」「楽しい」と言葉にして伝えてあげてください。
イヤイヤ期の子どもの訴えは肯定し楽しい提案で気をそらす
――「イヤイヤ期で、ママじゃなきゃダメとか1人でやりたいとか、急いでいる朝や早く帰りたい帰り道に言われるとしんどい。心穏やかに過ごすコツはありますか」という質問も寄せられています。
市橋さん:2歳頃からのイヤイヤ期は自我の芽生えなんですよね。自己主張が強くなるのは成長の証で、喜ばしいことなんですけど、お母さんお父さんは大変ですよね。先日も、「保育園まで歩いて行きたい!」と言うから、お母さんと30分以上かけて歩いてきたのに、やっと保育園に着いたら「自転車で来たかった!」と泣いた子がいました。右に曲がったら「左へ行きたかった!」と泣くのがイヤイヤ期なんですよね。
そういうときは、「そう、左へ行きたかったの、今度のお休みに左へ行こうね」と子どもの訴えを肯定したうえで、楽しいことで気をそらすといいですね。保育園でも、外遊びから「中に入りたくない!」と言う子には、「今日の給食、からあげだって!」とか「絵本を読もうか」とか、楽しい提案をするようにしています。
とはいえ、何をしてもダメなときってあるんですよね。そういうときはもう、パジャマのままでもプリンセスのドレスでも、どんな状態でもいいから、とにかく保育園へ連れてきてください。
――「園ではいい子にしていると言われるのに、家では全然言うことを聞かずに暴れまわるわが子とどう向き合えばいいのか」というお悩みもあります。
市橋さん:そういうお子さんは、むしろ心配ないと思いますね。家はリラックスできる場所で、お母さんは甘えてもいい存在だということがわかっている、賢いお子さんだと思いますよ。
子どもに言うことを聞いてもらうには、親子の間の信頼関係が大事です。子どもとの約束は必ず守り、子どもの話も聞いてあげる。その上で、伝えたいことは「アイ(私)メッセージ」で伝えると、お互いに心穏やかでいられます。
たとえば。「危ないから走らないで」ではなくて、「お母さん、あなたが車にひかれたら悲しいから走らないでね」、「モノを投げたらダメ!」ではなくて、「モノを投げたら壊れちゃうし当たると痛いから、お母さんはやめてほしいな」という風に。よかったら参考にしてみてください。

お母さんお父さんが笑顔でいることが子どもの幸せにつながる
――最後に、子育て中のママ、パパにメッセージをお願いします。
市橋さん:まずは、大切なお子さんを生み育ててくださりありがとうございます、と感謝をお伝えしたいです。赤ちゃんが産まれたときの感動は忘れられないですよね。一方で、小さな命を育てることに、不安や戸惑いを感じることもあるのではないでしょうか。子どもが産まれたときは、親も1年生です。お互いに失敗しながら、成長していくのだと思います。
そして何より、お母さんお父さんが笑顔でいることが子どもの幸せにつながると思っています。私たちは、家族にはなれませんが応援団にはなれます。保育園には、保育の専門家も、栄養の専門家も、保健の専門家もいます。「子育ての応援団が増えた」と思っていただきたいですね。
【にじいろ保育園大岡山】
所在地:〒145-0063 東京都大田区南千束3-1-6
アクセス:東急目黒線大岡山駅徒歩7分
TEL:03-6421-9415(月曜~土曜 7時〜20時30分)
運営:ライクキッズ
定員数:99名(合計)
企業と連携し保育業界の課題解決へ
「にじいろ保育園」を運営するライクキッズの親会社であるライクは、日本生命保険相互会社と資本提携し、保育業界全体の課題を解決するために「保育イノベーション コンソーシアム」を発足させました。ニチイ学館、学研ホールディングス、グローバルキッズ、ニッセイ情報テクノロジーを加えた計6社で連帯して、保育士の待遇改善、人材不足解消、デジタル化推進などの課題に取り組んでいます。
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取材・文/林優子