「子どもが自分の話をしてくれない…」なぜ?コミュニケーションの基本を振り返ろう
子どもがあまり自分の話をしてくれず、「何を考えているのか、よくわからん!」と頭を抱えてしまっているパパもいるのでは? 大阪教育大学教授で大阪教育大学附属天王寺小学校長の小崎恭弘さんに、子どもとのコミュニケーションのポイントを教えてもらいました。
まずは「コミュニケーションとは何か?」を考えてみましょう
社会人として最も求められるスキルが、コミュニケーションです。これは仕事をされている方は皆さん、感じていることではないでしょうか。もちろん仕事以外でも、夫婦関係、友人関係、趣味やクラブの集まり、保育所や幼稚園の保護者とのお付き合いなど、全てにおいてコミュニケーションが存在しています。そう考えると社会は、人とのコミュニケーションでできている、と言っても良いと思います。当然子育てでも、コミュニケーションはとても大切なものです。
その大切なコミュニケーションですが、皆さんはどこかで習ったり、トレーニングを受けたりしたことはありますか? 実際にはあまり機会がなかったのではないでしょうか。人との関わりが深い、保育士や教員の養成においても、コミュニケーション単独の授業は、実は設定されていません。
では、コミュニケーションはそもそもどのようなものなのでしょうか。一般的にコミュニケーションは、「人と人との間に交わされる、さまざまななやりとり。言語や身振り手振り、表情などを活用して行われるもの」とされています。これは人だけではなく、動物や昆虫などの間にもあります。鳥の鳴き声や蛍の光なども、コミュニケーションの一つなのです。基本的には相手との相互的な関わりであり、子育てにおいては子どもとの良い(good)関わりのことです。良くない関わり「バット(bad)コミュニケーション」というものもありますからね。
もう少し丁寧に見てみると、コミュニケーションは以下の4つのプロセスから成り立つものなのです。
1. 自分が相手に対して何かしらのメッセージを持ち、発信をする
2. そのメッセージを相手が自らのアンテナで受け取り、変化が起きる
3. その変化に伴い、今度は相手が自分に何かしらのメッセージを返信する
4. その返信を受け取り、また新しい変化が起き、次のコミュニケーションが始まる
つまり自分と相手とのお互いのキャッチボールのようなイメージです。一方的なものでもなく、また相手の要求に従うだけのものでもありません。もしそのような一方通行、あるいは強制的な関わりであれば、それはコミュニケーションではないのです。ちょっと自分を振り返ってみてください。そんな子育てになっていませんか?
パパに大切にしてほしいコミュニケーションとは
上記を理解した上で、パパにはまず、子どもをきちんと見てほしいと思います。この「見る」ということがとても大切です。なぜなら、大人と子どもでコミュニケーションの種類が異なるからです。
大人は、会話や文字により豊かなコミュニケーションを取ることができます。これを「バーバルコミュニケーション」と言います。言語的なコミュニケーションで、日常的にとても便利で、分かりやすいものです。しかし、子どもたちは大人ほど言語的な能力が高くありません。子どもたちのコミュニケーションは言語に頼らない、言葉以外のものが重要なのです。これを「ノンバーバルコミュニケーション」といいます。つまり「非言語」を活用したコミュニケーションなのです。
赤ちゃんを例に考えてみると分かりやすいです。赤ちゃんにパパが一方的に言葉で指示をしても、それはほとんどの場合は無意味です。言葉ではなく、赤ちゃんの表情や仕草、声の調子や全体的な雰囲気などを見て、子どもの気持ちを推測したり対応を考えたりします。これらはどれも言葉によるものではありません。子どもがもう少し大きくなっても、それは同じなのです。
つまり子どもたちとの関わりでは、言葉も大切にすればよいのですが、それ以上に子どもの何気ない仕草や表情に目を配り、そこから子どもの思いや変化に気付くことができればよいと思います。そんな子どもたちとの日々の丁寧な関わりが、子どもとパパのきずなを、より強くしていくことにつながりますよ。
教えてくれたのは
小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。
http://kasei.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/teachers/5.html
ナビゲーター
担当カテゴリー
学び・遊び・教育
大阪教育大学教育学部 教授 小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校元校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。