「ひとり遊びができない…」子どもの自立心を育む3つのコツ&家庭でできるアイデア

モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第7回は「一人遊び」についてです。
無理なく、自然とひとり遊びを楽しめるように
「ひとりで遊んでて」と声をかけても、「何をしたらいいの?」とすぐに大人のところに戻ってきてしまう。そんな経験をされた保護者の方も多いのではないでしょうか。そうした姿の背景には、子どもたちを取り巻く環境の忙しさがあるのかもしれません。
大人と同じように、子どもたちも忙しい毎日を過ごしています。保育園や学校、習いごとはもちろん、家族や友人とのお出かけなど、日々の予定の多くは大人が決めたもので埋め尽くされています。
また、たとえ少しゆっくりできる時間があったとしても、退屈させないようにと、大人が先回りして遊びや刺激を与えてしまうことはよくあるでしょう。もちろん、子どものことを思っての行動ですが、常に大人が遊びや過ごし方を用意していると、子どもが「何をしようかな?」と自分で考える機会は、いつの間にか減ってしまうかもしれません。また、「おもてなし」されることに慣れてしまうと、自分から何かを生み出す意欲や創造性も育ちにくくなってしまいます。
今回は、子どもにも大人にも無理なく、自然とひとり遊びを楽しめるようになるための3つの工夫をご紹介します。
1.ひとり遊びの時間を、毎日の流れにそっと組み込む
自由で好きなことをできる時間でも、いつも誰かに遊びを用意してもらっている子どもにとっては、どう過ごしてよいのか分からず戸惑うことがあります。だからこそ、ひとりで過ごす時間を毎日の生活の中にそっと組み込んでいくことが大切です。
たとえば、「おやつのあとに10分間は、好きな遊びをするひとり時間」というふうに、短い時間から始めてみるのも良いでしょう。タイマーや絵カードなどを使って見える形で知らせると、子どもも安心してその時間を受け入れやすくなります。毎日決まった時間に「自分の時間」があることで、子どもにとってそれが自然と生活の一部になっていきます。それが子どもにとって自然と生活の一部になっていきます。そうした積み重ねが、少しずつ「ひとりで過ごすこと」への自信にもつながっていきます。
2.一緒に遊ぶときは、子どもに選ばせてリードしてもらう
ひとり遊びの時間と同じくらい大切なのが、大人と一緒に過ごす時間の質です。特に意識したいのは、子どもに自分で選んでもらう機会を意識的につくることです。
たとえば「今日はどの遊びが一番したい?」「この2つのおもちゃの中でどっちにする?」と子どもに聞いてみて、自分で選んでもらいます。当たり前のことですが、子どもが自分で選べるようになるためには、「自分で選ぶ」経験を日々重ねていくことが不可欠です。遊びの内容を自分で決めて、それを一緒に楽しむ。こうしたひとつひとつの経験が、少しずつ子ども自身の自信や、「ひとりでもやってみよう」という意欲につながっていくのです。
3.自分で選びやすい環境を用意する
「なにして遊ぼう?」と迷っている様子が見られるときは、身のまわりの遊びが少しマンネリになっているのかもしれません。そんなときにおすすめなのが、おもちゃや絵本のローテーションです。これはモンテッソーリ教育の教室でもよく行われている方法で、いつも目にしているものを少し入れ替えるだけで、子どもの目には新鮮に映り、「やってみたい」という気持ちが自然とわいてきます。
たとえば、おもちゃをいくつかのグループに分けて、月ごとに入れ替えてみるだけでも効果があります。季節や行事に合わせた絵本をそっと棚に置いておくのも、子どもの関心を引き出すきっかけになります。また、日々の会話の中で子どもが興味を示したテーマに合わせて、関連する絵本や図鑑を用意しておくのも良い方法です。そして、久しぶりに出してきたおもちゃに「わぁ、こんなのあったね」とひとこと添えるだけでも、子どもはその遊びに自然と引き込まれていきます。大人にとっては少し手間がかかりますが、こうしたひと工夫が、子どもにとって選びたくなる環境づくりにつながります。
子どもに小さな選択のチャンスを
子どもの決める力や自分から行動を起こす力は、日常の中で少しずつ育っていくものです。「ひとり遊び」の時間も、大人と一緒に過ごす時間も、その大切な練習の場になります。忙しい毎日だからこそ、子どもに小さな選択のチャンスをそっと用意してあげたいものです。
「自分でできた」という経験の積み重ねが、やがて大きな自信につながっていきます。そして、大人がすべてを用意して楽しませようとしなくても大丈夫。大人は子どものエンターテイナーである必要はないのです。子どものペースを大切にしながら、ゆっくりサポートしていきましょう。
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