【習い事】続ける?やめる?親子で納得できる「続け方」・「やめ方」のポイント

このコラムでは大阪教育大学教育学部教授の小崎先生が、「こんな時どうしたらいいの?」「子育ての“ココ”が知りたい!」という皆さんのお悩みに答えます。今回は未就学児のお子さんについてのお悩みです。
Question: 習い事を嫌がるときがあります。続けるかやめるか、⾒極める⽅法を教えてください
そもそも習い事とはなんでしょうか。当たり前なのですが、義務教育でもありませんし、絶対しなくてはいけないものではありません。
しかし子どもたちのことを考えると、何か好きなものや得意なものがあるほうが豊かな気もしますし、もしかすると将来何かの役に立ったり、もしかすると職業やプロスポーツ選手などにつながる可能性もあります。そう考えると、する必要はないものとはいえ、いろいろと考えたり悩んだりするのがこの「習い事」だと思います。
今回のご相談もいくつかの視点に分けて考えてみましょう。
習い事を嫌がるということについて
始める時はあんなに喜んでいたのに、そして習い事のためにいろいろな道具や準備にお金や手間をかけたのに、いざ始まると嫌がってしまう。親としてはやりきれないですよね。
それでは習い事を嫌がる子どもはどんな思いを持っているのでしょうか。いろいろな意味で、自分の思ったことと現実が違うという、そのギャップに戸惑っていることがあるのでしょう。
例えば、
- 自分が思っているようにうまくできない
- レギュラーになれない、試合に出られない
- 練習がしんどい、面倒くさい
- 友達に負けたり失敗してしまう
- 先生やコーチに怒られる
- 友達と遊べない、他のことができない
このような感覚は子どもには多々あることでしょう。自分の思い描いた理想や夢などだけが先行して、現実が伴わなかったり、自分の思いとかなり違いがあるということです。ある意味それが子どもの特性であり、その見通しができないのが子どもなのです。
習い事を始めるタイミングで、やめることまで考えておく
だからこそ保護者は習い事を始める場合、その「最初」を大切にしてほしいと思います。もう少し極端に言うと、始めるタイミングでどういう形でやめるのかまでを考えてほしいです。これはなかなか難しいことですが、ゴールの設定を最初にするということです。
例えば水泳であれば「4種目泳げるようになるまで」。ピアノであれば「あの曲が弾けるようになる」「一定のグレードが終わるまで」などです。
習い事は進めば進むだけ、その上のものや段階やレベルが存在します。スポーツや音楽などは、それがプロにつながるものもあるわけですから、終わりがないものなのです。
もちろんそれを目指していくのも一つの選択ですが、そうでないのであれば、どの辺りまでを子どもと一緒に楽しめるのか、また大切にできるのかなどを含めてスタートの段階で考えていきましょう。子どもには、そのゴールはなかなか分かりにくいものです。保護者の思いと子どもの思いの擦り合わせを、最初に行ってほしいです。

やめる、続けるの判断について
しかし、なかなか最初からゴールを設定して始めることは難しいと思います。その場合は「やめる、続ける」の判断を迫られます。
ご質問には「見極める方法」とありますが、残念ながらそのようなものは存在しません。厳しい言い方かもしれませんが、子育てはそもそも「保護者がわが子を見極めながら、自由に行えば良いもの」です。だから最後は保護者の方の思い次第です。その見極める幾つかの視点を一緒に考えましょう。
子どもの負担の大きさを考える
今の活動や練習が、子ども自身にとってあまりに負担が大きかったり、その活動自体が辛かったりして子どもの気持ちがついていけていないことはありませんか?そのコントロールや配慮は、丁寧にしてほしいです。習い事をしたが故にそのものが嫌いになってしまった、などはとても不幸なことだと思います。子どもの気持ちや体の負担感とのバランスを考えましょう。
やめぐせがついてしまわないのか
自分に合わない、自分の思っていたものと違う、こんな感覚はいろいろなところで起きます。勉強、クラブ、仕事…。その度にすぐにやめてしまう、次のものに向かっていく。良い場合もあるとは思いますが、何事もある程度関わったり取り組んだりしていく中で、良さがわかったり面白さが増す場合もあります。
その手前で何でもかんでも放り出してしまうのは、少しもったいない気がします。周りの支援などで習い事への関わりが深まり、継続できる場合もあります。そこの見極めはしてあげましょう。
次のステップにつながるやめ方なのか
何かを始める気持ちは大切ですし、うまくいかずにやめる場合も、そのことに少し意味づけをしてほしいと思います。「次はもう少し慎重に選ぶ」「新しいことは自分で頑張る」など、やめることがきちんと次につながるようになれば、そのこと自体無駄なことではないでしょう。問題は意味なく始め、意味なくやめ続けていき、結局は何も残らないという状態です。
習い事を通して、子どもたちに何を伝えたいのか、親子で一緒に考えよう
習い事についてのお話ではありますが、根幹には物事にどのようにつき合うかという子育てのお話になりますね。親としていろいろな経験をさせてあげたい気持ちはとても素敵です。同時にだからこそ、その習い事を行うことで、子どもたちに何を伝えたいのか、何を育てたいのかなどを、親子で一緒に考えてほしいと思います。
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担当カテゴリー
学び・遊び・教育
大阪教育大学教育学部 教授 小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校元校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。