遊びが多い子ほど強い!STEAM教育的子育て法とは? 中島さち子さんインタビュー(後編)

遊びが多い子ほど強い!STEAM教育的子育て法とは? 中島さち子さんインタビュー(後編)

ジャズピアニストで、STEAM教育の第一人者として活躍する中島さち子さん。2020年に、2025年開催の大阪・関西万博のパビリオンや企画・運営を担うテーマ事業プロデューサーの一人として選ばれました。今回、中島さんへ独占インタビュー。前編、後編の2回シリーズで紹介。後編では、STEAM教育者として全国各地へ飛び回る中島さんに、STEAM教育的、幼少期に大事な子育て法について聞きました!

全国各地へSTEAM教育の普及活動も。写真は「トキワ松学園中学校高等学校」での「情報集中講座」の様子

PROFILE 中島さち子さん

音楽家・数学研究者・STEAM 教育者。株式会社steAm 代表取締役、一般社団法人steAmBAND代表理事、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー、内閣府STEM Girls Ambassador、東京大学大学院数理科学研究科特任研究員。高校2年の時に、国際数学オリンピックで金メダリストを獲得。音楽数学教育と共にアート&テクノロジーの研究も進める

※「STEAM」とは…21世紀型の新しい遊び・学び。Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art/Arts(アート・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)などを横断する創造的・実践的・主体的な学び方、生き方のこと

幼少期は、触ったり、匂いをかいだり、自然の中で”五感を育む”ことが大切

「科学、技術、工学、数学」の英語の頭文字をとった「STEM」に芸術の「A」を加え、これらの分野を横断的に学ぶ「STEAM教育」。海外では、STEAM教育に関する絵本がたくさんあり、色とりどりで答えは一つではないんだそう。

日本はちょっと真面目で、例えば習い事にしても、結果を決めてやることで一つの答えを目指してしまう場面も多いですよね。私は、STEAM教育において、子どもたち全員が自分だけのオリジナルのものを創り出せるような環境が大切だと思っています。そのために重要なのは、やっぱり「五感」を育むこと。幼少期は、触ったり、匂いをかいだり、走ったり、と身体性を伴う環境で育つことが大事だと思います。やはり自然の中で遊ぶことは良いですよね。五感を使って外で遊ぶというのは、子どもたちにとっての情報量が格段に違います。

デジタルとアナログが融合する今、最近の子は平均的な優等生の回答をする子がとても増えてきています。「AIが拾えない、人の気持ちがある」「AIの答えがが全てではない」ということも明確で、これから子どもたちが成長するにあたり、ちゃんとその”気持ち”に気づけるかどうかが、とても大事になっていくのではないかと思います。

誰もがつくり手、発信者になれるこれからの時代は、勉強というより遊びとして“知”が入ってくる環境です。だからこそ、自分で“自分の好きなもの”を発見してほしい。そうすることで、子どもたちの未来が自分らしくなるための仕掛けが見つかるのではないでしょうか。STEAM教育的な考えでも、そういう自由やワクワクこそが大切なのです。

子どもたちが考えたプログラミングについて個別に指導(写真は「トキワ松学園中学校高等学校」)

「教育は待つことが大事」。子どものペース、タイミングで

よく「教育は待つことが大事」といいますが、お母さん、お父さんがその子なりのペースやタイミングに合わせて待ってあげることが大切です。

思った以上に時間が掛かるものですが、そこで一旦立ち止まってあげることで、子どもたち自身が「自分が選びとった」という自信にもつながります。私の母は、私が小さいころ川を3時間ずっと眺めていたら、隣で本を読んだりしながら一緒に待っていてくれたそうです。今の私なら、どう考えても、自分の娘に「もう帰ろう」と絶対に言ってしまいますが(笑)、母は待っていてくれました。だからといって、皆さんが3時間待たなきゃいけない、というわけではないのですが、今は川で何かを見たいとか、きっと子どもなりのタイミングがあり、そこで少し待ってあげる、というのも大事な時間。最終的に、その瞬間こそが、自分らしくなれるきっかけだったりします。自由とかワクワクする瞬間というのは、そういうところから生み出されていくんだと思います。

遊びが多い子こそ強く、「自分の得意」が見えてくる

親は、子どもたちのことを思い、よかれと思っていろいろな場を作ったり、習い事をさせたりしますが、なかなか親の思い通りにはいかないもの…。

やはり、その子のペースで「自分が選びとった」と、思えるような環境、感覚が大切なんです。そのためには、子どもに対して、一人の人間として接することが大事。お母さん、お父さんが頑張りすぎてしまったり、しっかりしなきゃいけないと思う必要はありません。むしろ、大人が子どもになる、つまり一緒になって面白がる姿を見せることも大切なのです。何かを一緒に試してみたり、時には失敗したりするというのが大事だと、私自身も子育てをしながら学びました。

例えば、数学者でも、得意なものが全然違います。逆に言うと、その好きなもの、得意なものをつかめたものだけが、研究者としてずっと残っています。何となくできるというだけでやっていくと、どこかでつぶれてしまうんですよね。学びも、小さい時に遊びが多かった人が強い。「できないことが楽しい」「面白い」と、できないからこそ試行錯誤する。まさに遊びの状態で、自分の得意なものが見つかった人こそが強いんです。

遊びの状態が長かった人こそ、一つの形にとらわれずさまざまな分野で活躍し、自分なりのものを表現できる。私自身もそうでしたが、子どもたちにも、そんな風にいろんなことを面白がりながら、試行錯誤することで、ちょっとずつ、自分の得意を見つけていってほしい。「自分が選び取った」という自信から、今いる子どもたちの未来が自分らしく輝いていったらうれしいですね。

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