「魔女の宅急便」コリコの街を求めてスウェーデンへ。映画で見た風景を一望
「魔女の宅急便」コリコの街を求めてスウェーデンへ。映画で見た風景を一望
スウェーデンは宮崎駿監督にとって、初めての海外ロケ地
13歳の魔女キキがひとり立ちし、魔女の修行に選んだのがコリコの街。そのコリコの街を描く際、大いに参考にした場所は「スウェーデンのストックホルム、バルト海のゴトランド島ヴィスビーの町」であると、スタジオジブリが公言しています。
「魔女の宅急便」大いに参考にした場所
スウェーデンのストックホルム、バルト海のゴトランド島ヴィスビーの町
引用元:スタジオジブリWebサイト Q&A
スウェーデンがコリコの街のモデルとなったのは、実は「長くつしたのピッピ」がきっかけ。
「長くつしたのピッピの世界展」の記事でも触れていますが、1971年に宮崎駿監督が初めて海外ロケハンに出かけ、ストックホルムやゴットランド島を歩き回った経験を、後の1989年に公開された「魔女の宅急便」に活かしたそうです。
中世ハンザ同盟都市ゴットランド島Visby(ヴィスビー)
私がまず、始めに訪れたのがVisby(ヴィスビー)という街。バルト海に浮かぶゴットランド島は、ストックホルムから南に位置するスウェーデン最大の島で、北欧有数のリゾート地として知られています。
島の中心都市であるヴィスビーが繁栄したのは、ヴァイキング時代。12~15世紀にハンザ同盟の中継貿易港として、ヨーロッパ経済発展に重要な役割を果たしました。スウェーデン領になったのは、17世紀半ばのことだそうです。
中世の雰囲気が色濃く残る城壁に囲まれた古い町並み、教会の廃墟や遺跡は、当時ハンザ同盟時代の特徴をよく伝える都市として、1995年にはユネスコの世界文化遺産に登録されています。
ちなみに、コリコの街にもこのような城壁があるのですが、キキがトンボと不時着した飛行船付近の海岸で、初めて心を通わせ笑顔で会話するシーンの背景美術にも描かれています。また、「バラの都」とも呼ばれるヴィスビーには、そこら中にバラが咲き誇っていてとてもキレイでした。
民家では植物の手入れがきちんとされていて、窓際もオシャレに飾られるなど、スウェーデン人のゆとりある暮らしぶりが垣間見られました。私自身はというと、つい休憩も忘れて歩き回ってしまいました。
街中を散策すると、メルヘンチックな風景が目に飛び込んできます。黄色い壁の家や緑の扉の家など、歩けば歩くほど「魔女の宅急便」の世界観を感じられました。
街の頂上から見える風景は、まさに「コリコの街」そのもの!オレンジ色の屋根の数々、その奥には一帯の海が広がっています。
キキがコリコに来て、初めてグーチョキパン店を訪れる前に、見下ろしていた景色とそっくりです。乳母車に乗った赤ちゃんを連れたママにおしゃぶりを届け、初めておソノさんと出会うあのシーンが、思わず目に浮かびます。
豊かな自然にも恵まれるヴィスビーの街には、気軽に立ち寄り休憩することができる公園や、誰でも無料で入場できる植物園もあり、日本ではお目にかかれない植物も多く見られました。
今回宿泊したホテルは、「クラリオンホテル・ヴィスビー」。宿泊客には小さい子どもを連れた家族も見られましたが、レストランやスパ、プールなどの施設が充実していて、子連れ旅にもおすすめ。14世紀の建物を使用し、中世の雰囲気漂うクラシックなインテリアが特徴のホテルです。
美しい町並みに心癒されたヴィスビー滞在から、名残惜しくも次に向かうのは、スウェーデンの首都ストックホルム。旅路はフェリーで約3時間。今回、私は船旅を選びましたが、飛行機を利用すれば、ストックホルムから1時間以内でヴィスビーへ行けます。
キキが見たあの風景を一望できる、ストックホルム市庁舎
「見て!海に浮かぶ街よ!」
これです!この風景が見たかったんです!家族や友人に見守られながら旅立ったばかりのキキが、先輩魔女と出会った後で突然の豪雨に遭い、偶然乗り合わせた貨物列車で一泊した後に、初めて目にするあの景色そのまんまです。感動!
この風景は、ストックホルム市庁舎の塔をひたすら登ることで眺めることができます。体力のある子どもなら良いのですが、乳児連れだと少し厳しいかもしれません。
入場可能時間が40分間のみで収容人数に制限があるため、どうしても塔に登ってこの景色が見たい人は、早めに行って整理券をもらうと良いですよ。
初めてコリコに来たキキの気分になれる、ストックホルムの随所
水の都ストックホルムは、コリコと同様に海に囲まれた港町。映画のように、カモメもそこらじゅうに飛んでいました。海を横断するのは、かわいらしい見た目の蒸気船。ストックホルム市庁舎前の船着場から乗ることができ、夏期には多く運行されているようです。
また、ストックホルムの街中には、キキがコリコに降り立つ前のシーンにも登場するような、青空市場も多く見られました。新市街にあるヒョートリエット広場では、毎週日曜日にフリーマーケットが開かれ、骨董品などが売られているそうです。掘り出し物が手に入るかも?
他にも、コリコに来たばかりのキキが、都会の人々に「魔女」という存在を受け入れられず、落ち込みながら座っていたシーンにも似た、階段付きの銅像がある場所も発見。
中世の面影を残す、旧市街ガムラ・スタンを散策
旧市街ガムラ・スタンの景色も、「コリコの街」の雰囲気を存分に感じさせてくれる場所でした。こちらは、ガムラ・スタンの中心地にある大広場。「魔女の宅急便」の世界観そのまま、カラフルな中世の建物が軒を連ねていました。
ほら、今にも自転車に乗った黒ぶちメガネの少年がやってきそうでしょう?
こちらはモーテン・トローツィググレン通り(Marten Trotzigs Grand)。ストックホルムで一番狭い路地で有名な場所です。その幅はなんと幅90cm!トンボと出会ったばかりのキキが、ほうきで飛び立った路地にも似ています。
ガムラ・スタン散策中には、ストックホルム大聖堂(Storkyrkan)の時計塔を見ることもできました。ストックホルム最古で、スウェーデン王室の結婚式などが行われる、由緒ある教会なのだそうです。
映画終盤に飛行船「自由の冒険号」に壊されてしまう、あの時計塔と屋根の形がそっくりです。フォルムは先ほどのストックホルム市庁舎の形に似ているので、この2つを合体させたかのようなデザインで描かれていることが推測できました。
「好き」を再発見できた、スウェーデンひとり旅
育児や仕事に追われていると「自分は何が好きだったっけ?」「どんなときにワクワクしていたっけ?」と、時々自分がわからなくなってしまう時期がありました。そんな中、今回の旅を通じて、私がジブリ作品の中でもダントツで「魔女の宅急便」が好きだった理由が、スウェーデンに来てようやくわかった気がします。
物語だけではなく、中世ヨーロッパの雰囲気、作品が持つあの世界観そのものに惹かれたのでした。そして、スウェーデンという国には、私が心から本当に好きだと思えるものが、ギュッと凝縮されていました。昔からなぜか落ち着く港町、冒険心をあおる船、絵本のような風景、洗練されたデザイン、そして豊かな自然。
もともと北欧デザインが好きだったので、スウェーデンには行っていたとしても、ゴットランド島ヴィスビーは「魔女の宅急便」が好きでなければ、行く機会がなかったかもしれません。
ヴィスビーにはゆったりと流れる時間があり、その街の美しさからも、人々の温かさがひしひしと伝わってくるような、本当に素敵な街でした。3日間どんなに歩き回っても、私以外の日本人は1人も見られませんでしたが、それでもまったく心細さを感じることなく滞在することができました。
素晴らしい出会いを与えてくれたスタジオジブリや宮崎駿監督、そして海外ひとり旅に快く行かせてくれた夫には本当に感謝です!もし、スウェーデン旅行をする機会があれば、ヴィスビーにも訪れてほしいと思います.