クラスに乱暴な子がいる…どう対応したら良い?親としてできる「見守り」と「サポート」

このコラムでは大阪教育大学教育学部教授の小崎先生が、「こんな時どうしたらいいの?」「子育ての“ココ”が知りたい!」という皆さんのお悩みに答えます。今回は未就学児のお子さんについてのお悩みです。
Question: クラスに乱暴な子がいます。親としては「あまり関わってほしくない」のが本音ですが、教育上良くないかな…という気持ちもあり、うまく距離をとって付き合う方法を教えてください
親としてとても悩む事柄ですね。明確な正解がわかりにくい問題だと思います。それではなぜこのことに悩むのでしょうか。それを少し考えてみましょう。
本音と建前に悩む親ごころ
質問の中にも「本音」という言葉が出てきています。ということは、本音以外の部分もあるということです。一般的にこのような場合は「建前」でしょう。この場合「本音=あまり関わってほしくない」ということです。
それでは建前はどのようなところでしょうか。「建前=いろいろな友達とみんな仲良くしてほしい」などでしょう。つまりこの「本音と建前」の二つの思いの中で、判断に迷っているということです。
その上「教育上良くない」という社会的な常識が顔を出してきます。私個人としては「関わってほしくない」、けれど社会的には「みんな仲良くしたほうが良い」。こちらもまた「私と社会」という二つの立場の間で思い悩んでいるのでしょう。
子育ての基本と社会との接点
子育ての基本は、保護者の方が思うように子どもを育て、しつけていけば良いものだと思います。とはいえ、親の個人的な思いだけで子どもが育つものでもありません。社会全体のルールや規律や規範、人とのお付き合いの仕方や社会である程度やっていくことのできる立ち振る舞いや、マナーや常識などもやはり必要にはなります。
そのように考えると、子どもを一人前に育てるということは、とても壮大な物語なのです。だから悩みますし、だから面白いものなのです。
子どもと一緒に考えてみよう
そのような視点に立ってみると、このようないろいろな悩みや葛藤を子どもと一緒に共有して、その解答を一緒に考えてみてはどうでしょうか? お子さんが小学生であれば、ある程度いろいろな思いや気持ちを考えたり、またどのようにすれば良いかのお話ができるのではないでしょうか。

例えば、その乱暴な面が気になる子について、ご自身のお子さんはどのように思っているのでしょうか?お話はされましたでしょうか。保護者の方と同じように乱暴で近寄りたくないと思っているのでしょうか?あるいは乱暴とも思っていなかったり、乱暴だけど一緒にいたいと思っているのでしょうか?そんなところから、話をしてほしいと思います。
「◯◯君ってどんなお友達なの?」「◯◯さんは少し乱暴な時があるみたいだけど、どう思う?」「一緒に遊んでいて嫌な思いをしたことはないの?」
まずは親の価値や思いを横に置いておいて、お子さんの素直な気持ちを聞いてほしいと思います。その上で親としての思いや、あるいはあなたを心配していることについて、話してほしいです。保護者の方は「距離をとってほしい」と思っていても、本人がどう思っているのかがやはり大切になりますし、その思いを無視して行動のみを望んでも、多分うまくはいかないと思います。
それらの確認の上で、本人があまり関わりたくなかったり、一緒にいたくないと言うのであれば、先生に相談をして物理的に、席を離す、または班を変えるなどの対応も一つの手段として考えられます。しかし意外に、本人はそうでもなかったり、一緒に遊びたいという思いがあるのであれば、距離を取るのではなく、暴力にならない関わり方や方法を一緒に考えてほしいです。
「いろいろなこと」を学ぶのが学校
教室という限られた空間の中で、小学校はさまざまな活動がダイナミックに行われます。完全に距離を取るということはなかなか難しい面はあります。だからこそ、その乱暴なお友達も、それ以外の方法や人との関わりを学び、行動の変化が必要になります。もちろんその変化の役割を、お子さんが担う必要はありません。それは教師と親の役割です。
教室の中にはいろいろな子どもたちがいます。もちろんみんな良い子ですが、時々困ったことや難しいことが起きるのも事実です。そんなことはない方が良いのですが、やはりあります。
しかし一方でそんな「いろいろなこと」を学ぶのも学校の一つの役割です。親は子どもを真剣に守りながらも、どこかでそういう「いろいろなこと」や、「いろいろな子ども」についてもお子さんと一緒に考えてほしいです。
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担当カテゴリー
学び・遊び・教育
大阪教育大学教育学部 教授 小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校元校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。