モノで釣っていいの?子どもが自ら動きだすご褒美の決め方

モノで釣っていいの?子どもが自ら動きだすご褒美の決め方

子どもにとって、うれしい「ご褒美」。努力やすばらしい成果に対してご褒美をあげることもありますし、モチベーションアップのために事前に「~ができたら〇〇ね」とご褒美を用意することもあるでしょう。けれど、「ご褒美のためだけに頑張る子にならないかな?」「ご褒美がないと動かない子になるのでは?」という心配もあるかもしれません。ご褒美を使って子どもの力をうまく引き出すにはどのようなやり方がいいでしょうか。
子ども一人ひとりに最適なレッスンと苦手のフォローをしてくれる話題のタブレット教材「RISU算数」を展開する RISU Japan株式会社の代表取締役 今木智隆さんにお話を聞きました。

ご褒美をあげる2つのシチュエーション

子どもにご褒美をあげる場面は、大きく分けて2つあります。上手なご褒美の使い方を考えるには、まずはこの2つの場面を分けて考える必要があります。

1つ目のご褒美は「成果に対するご褒美」です。子どもの努力の結果がすばらしいものであったときに、褒めてあげたい気持ちを表現して与えるご褒美になります。このご褒美は、子どもは「もらえるもの」だとは事前に知らず、サプライズの要素が強く、よりうれしい気持ちをもちます。
もう1つは「モチベーションアップのためのご褒美」です。こちらは達成したい目標に対して、やる気をさらにアップさせるために設定するご褒美となります。成果に対するご褒美と違う点は、子どもは事前にご褒美がもらえることを知っている点です。ご褒美をもらうために自分はどうするべきかを考えたうえで、目標を達成するための行動に取り掛かります。

ご褒美をあげる側としては、これらのシチュエーションを混合して考えると誤った設定になってしまうことがあります。ご褒美の設定を誤ると、子どものモチベーションを上げるはずだったのに、かえって下げたり、不満をためることにつながります。

「成果に対するご褒美」とは

それではそれぞれのシチュエーションについてNGパターンも交えながら、上手なご褒美のあげ方を考えてみましょう。まずは、成果に対するご褒美のあげ方についてです。

「成果に対するご褒美」NGパターンの例

成果に対するご褒美の特徴は、先ほどもお伝えしたように「子どもにとっては予期していないもの」であることです。ご褒美を伝える場面では、すでに「何をしたから」の部分は行なわれた後というタイミングになります。

このとき注意したい点は「何に対するご褒美か」の伝え方です。

・テストが100点だったから、ほしかったゲームを買ってあげるね
・進級テストに1発合格だったから、来月のおこづかいは100円アップするね

例えばこのようなご褒美の設定は、その子の努力よりも結果だけに注目して良し悪しを判断しているかのような伝え方です。このような伝え方は“当たり前にできていることが基準”のような印象になってしまい、そうできなかったら自分はダメな子というプレッシャーを与えてしまう場合があります。
また、このようなご褒美は、慣れてしまうと子どもから先回りしてご褒美をねだったり、交渉してくることも考えられます。

・テストが100点だったから、おもちゃ買ってよ!
・もし次の進級テストに合格したら、何買ってくれる?

こうなると、ママやパパも「ご褒美のために勉強や習い事を頑張るわけじゃないのに、順序がおかしい!」と感じますよね。

「成果に対するご褒美」OKパターンの例

例のような事態を防ぐためには、どのようなご褒美の設定がよいでしょうか。考え方としては「頑張って努力して得たすばらしい成果を一緒に喜んであげる」気持ちで設定するとうまくいきます。ご褒美というより、お祝いにするのです。例えば次のような声掛けをします。

・テストが100点なんてすごいね!がんばって勉強していたからだね。
・進級テストの合格、おめでとう!やったね、お父さんお母さんもうれしい!

そして、ご褒美の設定は物よりプライスレスな価値があるものを選ぶことで、子どもから物をねだられることを避けられます。

・がんばっていたから、今日の夜ご飯は〇〇(子ども)の好きなものにしよう!何が食べたい?
・合格のお祝いにみんなでケーキを食べて乾杯しようよ!

このような伝え方をすれば、一緒に喜びたい気持ちを子どもと分かち合うことができます。そして子どもも、ママやパパが努力をしっかり見ていてくれることや、同じ気持ちになって喜んでくれることが伝わり、自己肯定感が上がって次も頑張ろうという気持ちになれます。

「モチベーションアップのためのご褒美」とは?

次はモチベーションアップのためのご褒美というシチュエーションです。こちらは先ほどまでと違い、事前に子どもとご褒美について取り決めをしておくことで子どもをやる気にさせたい、という目的があります。

「モチベーションアップのためのご褒美」NGパターンの例

このような場面でのご褒美設定は、ご褒美が貰える条件を明確にすることが大切です。例えば次のような設定は、ご褒美の条件が明確ではありません。

・今度のテストまでちゃんと勉強を頑張ったら、ゲームを買ってもいいけど
・ずっと部屋をきれいにできるなら、新しいおもちゃを買ってあげる

「ちゃんと」「頑張ったら」「きれいに」このような言葉は、人によって感覚が違うものです。子どもにとって精いっぱい頑張ったことでも、ママやパパから見て合格ラインに達していなかったことでご褒美が貰えなかったとしたら、子どもは不満に思いしこりが残ってしまいます。「ずっと」も期限があいまいな言葉です。いつまでやればいいのか分からないので努力することに疲れてしまいます。

学習で言えば、
・このページが終わったらおやつね

というような設定も注意が必要です。「終わったら」を基準にすると、お子さんは「終わらせること」に意識が向いてしまい、計算練習であれば適当に問題を解いたり、漢字練習であれば走り書きのような字になったりと、身につかない勉強になってしまうことがあります。

「モチベーションアップのためのご褒美」OKパターンの例

上手にご褒美を設定するには、ご褒美を得られる条件を明確にすることが大切です。伝える前にあいまいな表現がないか振り返ってみるとよいでしょう。

学習では
・全部〇にすることができたらおやつね
・このプリントが100点になったらテレビを見ようか

と、子どもの実力に対してご褒美を出すようにします。そうすることで、子どもは「ただ終わらせるだけではダメだから早く正確にやろう」という意識を持つようになります。
自分でご褒美を決めさせる方法も有効です。やらされる勉強ではなく、自分から目標を立てて勉強することの練習になりますね。

ご褒美で子どもの気持ちを動かすのは抵抗がある、というときは?

ママやパパの中には、ご褒美をエサに子どもの気持ちを釣っているようで抵抗がある、と考える方もいらっしゃるかもしれませんね。
そのような場合は、ご褒美ではなく「習慣にする」という方法を試してみてください。

・おやつの前にはプリントを1枚やろう
・ご飯を食べたら絵本を1冊読もう

などのように、生活リズムのなかに頑張りたいことを入れてしまいます。習慣化は歯磨きのように、小さい頃に身につけてしまえば一連の流れでラクに続けられるようになります。それぞれのご家庭に合った方法で取り入れてみてください。

ご褒美も習慣化も大切なポイントは「楽しく取り組む気持ち」

今回はご褒美の設定について、2つのシチュエーションでNGパターンとOKパターンをお伝えしました。また、ご褒美に頼らない習慣化という方法もご紹介しました。
どのような場合でも、大切なことはお子さんが楽しい気持ちで取り組めるように考えてあげることです。おうちの方はお子さんの努力に寄り添い、一緒に成長を喜んであげる気持ちを忘れないようにしましょう。ご褒美をあげる・もらうという関係が、上下の関係になったり、指図する側とされる側というような関係にはならないようにしてくださいね。
教えてくれたのは

今木智隆/RISU Japan株式会社代表取締役
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。
タブレット教材「RISU算数」

ナビゲーター

算数教材「RISU」代表取締役今木智隆の画像

担当カテゴリー

学び・遊び・教育

算数教材「RISU」代表取締役 今木智隆

RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。

学び・遊び・教育:新着記事

電子書籍

幼稚園児とママ・パパの情報誌

親子の保育園生活を応援する情報誌