先取り学習や計算力を鍛える勉強法ってどうなの?大事なのは思考力

先取り学習や計算力を鍛える勉強法ってどうなの?大事なのは思考力

子ども一人ひとりに最適なレッスンと苦手のフォローをしてくれる話題のタブレット教材「RISU算数」を展開する RISU Japan株式会社の代表取締役 今木智隆さんが、算数が好きになる、得意になる親子の関わり方を教えてくれました。未就学児親子は必見ですよ!

「計算力=算数力」と勘違いしていませんか?

まわりの子が1ページ20~30問もある計算ドリルをどんどん進めていたり、「○○ちゃんは習い事で、もう小学校の勉強を先取りしていて、しかも結構先の学年まで進めているらしい」というようなウワサを聞いたりすると、「うちの子にも、もっとたくさん計算問題をやらせた方がいいかしら…」と不安になることはありませんか? 計算ドリルや百マス計算は、算数のよくある勉強方法です。このようなスピード重視で計算力を鍛える勉強方法は、算数を得意にするために効果的なのでしょうか?

日本では長らく、算数の勉強の主流は「速く、たくさんの計算問題を解く」という方法でした。ママやパパが小学生だった頃を思い出してみてください。毎日の宿題で計算ドリルを反復練習したり、算数の授業で百マス計算のスピードを競ったりしていましたよね。このような勉強方法を繰り返せば、確かに計算は速く解けるようになるでしょう。しかし、本当の意味で「算数を得意」にしたいなら、計算力だけを鍛える勉強方法は効果的とはいえません。

算数の領域は計算だけではない
計算問題をひたすら練習すれば、問題が速く解けるようになる効果はあります。計算だけでいえば学年を先取りして、どんどん新しい問題に進むこともできるでしょう。しかし、算数で学ぶのは計算だけではありません。図形や時計など、四則計算以外の領域もあります。また、テストでは文章問題が出題されます。文章問題はテストの配点が高く設定されます。計算の練習ばかりでは文章の読解力や思考力は鍛えられないので、どこかの段階でつまずきが出てしまいます。

スピードを重視することによる弊害も
普段から速くたくさん計算することを重要視しすぎると、子ども自身が「速く問題を解くことが大切だ」と無意識に思い込むことがあります。早押しクイズのように、問題文をちゃんと読まないまま答えようとしてしまうのです。例えば目についた数字を、ただ拾って式を立てたり、早とちりをして重要なキーワードを見逃してしまったりする子が見受けられます。
ミスをした後の取り組み方にも影響が出ている子もいます。「しまった、間違えた!」と気づいても、速く解かなきゃという姿勢なので、問題文を読み直さずに、ただ文章から別の数字を拾ったり、式に当てはめる場所を適当に入れ替えたりして答えを出してしまいます。問題文の意味を理解しようとしていないのです。

親はこんな態度を取っていませんか?
親が直接「速く計算しなさい」と言わなくても、例えば次のような態度や声かけは、子どもに「算数は計算を速く解くことが大事だ」という印象を与えてしまいます。

【子どもに「算数は計算を速く解くことが大事」だと誤解させる例】
・計算ばかりさせる勉強方法を与える
・大量の計算問題に制限時間を設けるなどして、スピード勝負で取り組ませる
・宿題や課題が速くできたことをほめる
・勉強中に子どもの手が止まっていると急かす

親心としては、計算問題をスラスラ解いている姿を見ると、つまずきがないように見えて安心するものです。もし勉強中にお子さんの手が止まっていたら、親はどうしていますか?「ひょっとして、この問題がわからないのかしら…」と不安に思い、声をかけたくなるかもしれません。もしくは「また気が緩んでいる、勉強に集中していない」と考え、速く問題を進めるよう急かしたくなるかもしれません。
しかし、子どもはこの止まっている時間に「思考力」を鍛えていることもあるのです。少し手が止まったからといって、すぐに声をかけると、子どもの“じっくり考える時間”を遮ってしまうことになります。

計算スピードよりも重要視したい「思考力」

算数を得意にするために重要なのは「思考力」を鍛えることです。これは文字通り、問題に対して自分の頭でちゃんと考え、何を問われているのか理解する力のことです。最近の中学入試でも問題文の長いものが多く出題されていて、思考力が備わっているかを重要視する傾向が窺えます。
これからの時代は、パソコンやスマホを使うのは当たり前になります。これらのツールを使えば、計算の答えはあっという間に得られます。そのような時代に、計算力(計算速度)を磨くことは強みになるでしょうか。買い物をするときにはちょっと便利かもしれませんが、将来に渡って役に立つのは「速く計算できること」よりも「パソコンやスマホに何を計算させるのか」を考えられる力のほうです。つまりそれが思考力なのです。

問題を解くプロセスの大半は思考力
ここで算数の文章問題を解くプロセスを整理してみましょう。

【算数の文章問題を解くプロセス】
1.文章をしっかり読む(現状把握)
2.大切な数字やキーワードを拾う(解決に役立つものを探す)
3.問題を理解する(自分は何を求められているのか)
4.式を立てる(解決策を考える)
5.解く(解決する)

この流れからわかるように、「計算力」を使うのは5番のプロセスだけなのです。これは算数以外にも、一般的な問題解決のプロセスを考えても同じ流れになります。計算力を重視することは、仕事に例えるなら、指示されたことを機械的に手を動かしてやるだけの姿勢になりがちだということです。子どもには1~4のプロセスを自分で組み立てられるような、強くしなやかな「思考力」を身につけてほしいですよね。

子どもの「思考力」を鍛える具体的な方法とは?

思考力の鍛え方について、算数で効果があるのは「問題文の音読」です。子どものなかで「算数は国語ではない」という意識があるので、文章を「読んだ気になっているが実はちゃんと読んでいない」というパターンはよくあります。音読をすることで一つひとつの数字やキーワードを落とさずに拾うことができます。文章を最後まで読むことで、「自分が何を解くことを求められているのか」を確認することも大切です。ザッと読んだ気になって「わからない…」と思っている子は、音読をするだけで「なーんだ、わかった!」と解けることもあります。

計算ドリルや百マス計算は計算力を磨く効果がありますが、算数に必要な力はそれだけではないことをお伝えしました。もし、難しい問題を前にお子さんの手が止まっていたら、これは思考力を伸ばすチャンスだと思ってください。

×「さっきから、ちっとも進んでいないじゃない」
×「この問題を解くのに何分かかっているの?」
ではなく、

◎「この問題、何か気になることがあるの?」
◎「〇〇ちゃんは、どうしてこの式になるって考えたの?」

思考力をより深めるような声かけをしてあげましょう。とにかく答えればいいやという考えから、問題の趣旨を理解しようとする姿勢へ変わっていくはずです。しっかり問題の本質を捉えることで、応用問題にも強い思考力を身につけることができます。

教えてくれたのは

今木智隆/RISU Japan株式会社代表取締役
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。
タブレット教材「RISU算数」

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担当カテゴリー

学び・遊び・教育

算数教材「RISU」代表取締役 今木智隆

RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。

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