【幼児期の学習】気分にムラがあるのは当たり前? 効果的な声かけは
・やらないので「やめる?」って聞くと「やる!」と言うのに、結局やらない…いつも困っています。(保育園/幼稚園/未就園児保護者)
・親が「できているよ、大丈夫、上手」と本当にそう思って言っても、本人が納得せずに「できていない!嫌!」となることがあります。完璧主義やこだわりを和らげる方法があれば知りたいです。字を書いてうまくいかなかった時にぐちゃぐちゃと殴り書きをしたりヤケになる姿もどう注意していいのか難しいです。(幼稚園保護者)
・親の言うことはどうしても指示のように感じてしまうのか、子どもが教えられることを嫌がります。受け入れやすい教え方を知りたいです。(幼稚園児保護者)
・分からないとぐずるので教えるのですが、聞く気もないような感じなので「もうおしまいにしよう」と言うと、「まだやるの!」と返されるのでどう対応していいか分かりません。(未就園児/保育園児/幼稚園児保護者)
どのお悩みも「あるある」で、我が家もそうだと共感する方も多いと思います。今回は幼児期の学習について子どもの気持ちに寄り添う学習の進め方を考えます。
小さい子は「気分にムラがある」のは当たり前
毎日子どもの相手をしているおうちの方からすると「うちの子はどうして」「いつもこんな調子で大丈夫?」と心配になるかもしれませんが、そもそも小さい子は気分にムラがあるのは当たり前。当然の反応と思えば少し気持ちが楽になります。
幼少期の子どもが気分屋なのは 1.好奇心旺盛 2.イヤイヤ期 3.自分でやりたい年頃 3つの要素がちょうど重なる時期だからです。毎日の学習を親の言う通りにやらせるのは、至難の業と言えるでしょう。
中には、一度親が子どものわがままに折れて譲歩してしまうと、子どもがどんどんわがままを言うようになるのではないかと心配して、一歩も譲らない姿勢で対峙しなくてはいけないと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、お互いに意地を張り合うのでは、どちらかが「勝ち」どちらかが「負ける」まで膠着した状況が続きます。おうちの方の気持ちは理解できますが、この方法では親子とも疲れ切ってしまうでしょう。
子どもは自分の「嫌だ」という気持ちに対して、原因を探るのも解決策を見つけるのもまだまだ下手なのです。おうちの方が子ども側の目線に立って、何が嫌なのか、どうだったらいいのかを一緒に考えてあげることが大切です。
駄々こね真っ最中に正論は通じない
子どもは一度「駄々こね」スイッチが入ってしまうと「そういうのは良くないよ、やめなさい!」と言っても、正論は通じません。ますます火がついて手が付けられなくなることもあります。
まだイヤイヤ期を抜けきらない時期ですから、親の言うことが正しいと分かっても素直に聞けない時期ですし、親の言う通りにやるより自分の考えでやってみたい時期でもあります。おうちの方は、そんな子どもの気持ちに寄り添って、北風と太陽のお話のように、子どもを上手く操る必要があるのです。
場面別、子どもの気持ちに寄り添う対処方法
では、具体的にどの場面で、どんな言葉かけが有効か、子どもの気持ちに寄り添う対処方法を紹介します。どの場面にも共通して言えるのは、次の2つのことがポイントです。
1.子どもの気持ちに寄り添うスタンスで対応して、声がけを工夫する。
2.子どもが嫌がっているときには、無理にやらせない。
それでは具体的に見ていきましょう。
【例1】やる気がないとき、そもそも嫌がって学習をしないとき
プリントをするよと言っても嫌がったり、毎日の決まった学習時間になってもやる気がなかったりする場面です。このように本人にやる気がないときは、無理やり机に向かわせても長続きしませんし、嫌々やっているだけでは内容が頭に入りません。学習は面白くない、嫌いだという印象を強くしてしまうだけなので、やる時間を改めたり、指示しない形に言い換えて誘ったりする方法が効果的です。また、幼児は集中力が長くは続きませんので、たくさんの問題が並んでいるものよりも、1回にやるのは多くても3問くらいまでのプリントなどにする方が取り組むハードルもぐっと下がります。また、バツがつくよりも全部マルで終わる方が達成感も得られるものです。
【おすすめの対処法】
・じゃあ、●時まで遊んでからプリントする?(時間で区切る)
・いつやるか●●くんが決めて(子ども自身に決めさせる)
・(保護者)も●●ちゃんの横で一緒に勉強しようかな(指示せず誘う)
・(問題量が多い時)この大きな1番だけやってみようか。(分量で区切る)
【例2】分からない、上手くできないことに癇癪を起こすとき
問題が解けない、字が上手く書けないなどを理由に泣いたり怒ったり、イライラして何度も書き直したりする場面です。このようなときは、先ほどの例とは反対にやる気はみなぎっているものの、思うように上手くできない自分自身に対して「嫌だ」という気持ちが向いています。もっと良くありたいと思っている気持ちに対して「そういう態度は良くない」という指摘は逆効果です。どうしたら上手くいくか一緒に考えてあげたり、励ましてあげたりする方法が効果的です。
【おすすめの対処法】
・そこができてないから嫌なの?(気持ちを汲んであげる)
・どうすれば嫌じゃなくなるのか、一緒に考えようか(力になれることを伝える)
・ここまでやれて、すごいよ!あと少しだからきっとできるよ!(できている部分を認めて励ます)
【例3】親が教えようとすると嫌がるとき、話を聞かないとき
間違えた問題について正しい答えを教えたいのに嫌がる、解き方を説明しているのに話を聞かないという場面です。このような場面では、嫌がっている理由を親が見極める必要があります。疲れていて集中力がないのか、教えられるのが嫌で自分でやってみたいのか、難しすぎて嫌になっているのか……などの理由です。子どもの様子から判断して、理由に合わせた対処方法を試してみましょう。
【おすすめの対処法】
・(疲れて集中力がないとき)今日はおしまいにしよう、でも次はここまでやろうね(子どもに約束させる)
・自分でやってみて、分からないと思ったら聞きに来てねと言って少し離れた場所から見守る(子どもから聞きに来させる)
・(難しすぎたとき)これはまた今度にして、違う問題から先にやろうか(後日、できたときに褒める)
幼児期は繰り返し伝えることが大切
もう1つ、おうちの方が気になっているのは「気分によってやらない日を認めるのはサボり癖につながるのでは?」という懸念ではないでしょうか。
人間は機械ではないですから、子どもに限らず大人だって気分や体調によって計画通りにできない日はありますよね。あまりに約束を守れない日が続いてルールが形骸化してしまっては意味がありませんが、そういった場合はそもそも、そのルール設定が子どもにとって無理がなかったかを見直す必要もあるでしょう。
約束事は、子ども自身に決めさせることも効果的です。子どもですから約束を忘れてしまうこともありますが、おうちの方が「約束したよね」と声をかけると、「ハッ」という顔をするはずです。
子ども自身は「約束=大切なもの」と思っているので、一生懸命守ろうとします。すぐ忘れてしまうのは子どもの特性ですから、そのことには怒らず、何度も繰り返し「この約束をしたよね」と声をかけることで、いずれ自分から動けるようになるでしょう。
今の時期だけという割り切りも必要
今回は、幼児期の学習について、癇癪や気分のムラがあるときの対処方法を考えました。幼児期の子どもと日々向き合うのは大変な労力ですが、おうちの方が「ちょうど今はそんな時期」と割り切る気持ちも必要です。約束事は守らせたい、学習習慣を付けたいという気持ちはとても理解できますが、今すぐに解決せねばと思うと親も強情な態度になってしまいます。習慣は、言ってすぐに身に付くものではありませんから、肩の力を抜いて長い目で見守りましょう。根気強く伝え続けることで、親の思いはいずれきちんとお子さんに伝わりますよ。
教えてくれたのは
■今木智隆/RISU Japan株式会社代表取締役
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。
▶タブレット教材「RISU算数」
ナビゲーター
担当カテゴリー
学び・遊び・教育
算数教材「RISU」代表取締役 今木智隆
RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。