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子どもが「マージャンプロになりたい!」と言ったら?Mリーガーママ・日向藍子さんが語る子育てとマージャン

&あんふぁん編集部が今、気になる人へインタビューを行う「あなたに会いたい」企画。最近子どもの習い事や教育の一環として注目を集めている「マージャン」。プロとして活躍する日向藍子さんは、私生活では6歳・年長の女の子のママ。等身大の目線を活かして出版した著書『5さいからはじめるマージャン』についてや、マージャンを通して学べること、マージャンプロのママとしての日常について話を聞きました。
マージャンを始めて3年後、21歳でプロに
実はマージャンには子どもの頃から慣れ親しんでいたわけではなく、18歳の頃に初めて触れました。高校を卒業後に上京して服飾系の学校に通っていたのですが、そのときのアルバイトとしてマージャン店に勤務したのがきっかけです。
アルバイト先として選んだのは、知り合いがマージャン店を開くので働き手を探していたというタイミングと「時給が良かったから」というのが一番の理由です(笑)。仕事内容としては、主にドリンクの提供などでマージャンを打つ機会はなかったのですが、合間にやってみたらとても楽しくてはまりました。プロの方がゲストでお店に来る機会もあって、そこではじめて「マージャンプロ」という仕事があるのだと知りました。
そこからマージャンにのめり込み、服飾系の学校を卒業しても就職せずにマージャン店で働き続けていました。マージャンって運の要素もあるので、自分が強くなったのかどうか成長度合いが分かりにくいところがあるんです。だからこそ「マージャンの世界で自分の強さを試してみたい!」と思い、21歳のときに受けたプロ試験に合格してプロになりました。マージャンを始めて3年ほどでの出来事です。
マージャンプロの仕事の中に「Mリーグ」(※)があるのですが、私は「渋谷ABEMAS」というチームに所属して戦っています。いい順位を取ってチームを勝利に導くのが役割ですね。
※Mリーグ…マージャンプロリーグ戦のひとつ。トッププロだけが出場できるナショナルリーグ
娘世代の子どもたちにもマージャンの楽しさを広めたい

『5さいからはじめるマージャン』の出版の話をいただいたとき、ちょうど娘が5歳で、当事者目線で子どもにマージャンを好きになってもらうきっかけがこの本を通して作れる、と思いました。子どもがどんな内容だったら興味を持ってくれるかを考えて、全ページラフから書きましたし、マンガが付いているのですが、その内容を考えたり、カラーデザインも編集の方と相談したりしながら隅々までこだわりました。私の中でも思い入れの強い一冊です。



「ママの本」と言ってくれるのがうれしい
原稿をもらって机に置いておくと、娘がペラペラとページをめくって読んでくれていました。夢中に読み込んでくれている様子を見ると、「子どもにちゃんと届いてる!」という実感があってうれしかったです。出来上がった本を見て「ママの本できたんだね!がんばってたもんね、よかったね!」と言ってくれて、「ママの本」だと認識してくれているのがとてもうれしいです。「保育園の本棚にも置きたいな!」と言ってくれています(笑)。
子どもがいるファンの人が「本買いました!」と言ってくれたり、お子さん本人からの手紙をもらったりもしました。Amazonの口コミも好意的な声が多く、うれしい反響でした。
小さい頃から親しむマージャンの良さ
人気の習い事として名前が上がったり、子ども向けのマージャン教室が増えていたりする現状を見ると、マージャンに対して良いイメージを持ってくれている人が増えているんだなと感じられてうれしいです。
マージャンはいろいろな面で人生で必要な能力を培えると感じています。1~9の数字を扱うので、まず数字への理解が深まります。「役」と呼ばれる牌の組み合わせを考えることで構想力が鍛えられ、「何を捨てるか」という取捨選択や、「次はどうしたらいいか」と対策を練る力、逆転に必要な点数を逆算する力も身につきます。
2万5000点を4人で取り合うゲームなので、気持ちのいい場面ばかりではありません。だからこそマナーが大切で、始まりと終わりの挨拶や、イライラして牌を投げないといった感情のコントロールも求められます。1ゲームの中でこうした力を総動員する競技なんです。負けることの方が多く、トップになれるのは1人だけですが、運だけでなく技術も大きく影響するので「どうしたら勝てるか」を突き詰めて考え続けられることが、マージャンの難しさであり楽しさだと思います。
マージャンは年齢問わずできる
やり方が分かれば大人とも対戦できるので、それこそおじいちゃん・おばあちゃんたちとも世代問わず一緒に楽しめるんですよね。体力的な差がないですしケガすることなく、いい意味で子どもも大人も対等に戦えます。「孫と一緒にマージャンができる」というのは、おじいちゃんたちもうれしいのではないでしょうか。
うちの子は6歳で1人で打つことはまだできませんが、数字は理解しているので、誰がトップなのか、勝っているか負けているかというのは分かります。「Mリーグ」が放映される日は夫と娘が自宅で見て応援してくれています。私が負けたときには「ママよくがんばったよ、またトップとれるよ、つぎがんばろう」と頭を撫でて励ましてくれます。
日向さんに憧れて子どもがマージャンプロになりたいと言ったら?
マージャンだけで生活が成り立つ人って本当にひと握りなんです。だからプロでもマージャンを打つ仕事以外にもいろいろな活動をしていますし、別の職業を持ちながらマージャンプロとして活動している人もいます。驚くことに医者や弁護士をしながらマージャンプロだという人もいるんですよ。
そういう意味では、マージャンに限らずいろいろなことをやってみて、その先にマージャンプロで活動したい、という思いが強くあるのであれば、選択肢に入ることはうれしいなと思います。でもそれ以前に、算数が必要であったり、対策を練る力、改善策を考えていく力が必要になので、日常のことがきちんとできる人になる、ということがまずは大事だと考えています。
本当になりたいとなれば、現実的にはプロ試験に受からないといけませんが、どんな人でも何歳からでも目指せる職業なので、チャンスはあるしいつでもチャレンジできる仕事だと伝えたいです。
試合前の緊張や気持ちをコントールする方法

人前に立つことには緊張しないタイプなのですが、試合前は毎度緊張しています。特に「Mリーグ」はチームでポイントを積み重ねていくものなので、負けたときの重みも違います。負けた日の夜は寝られないし、とはいえ勝った日もアドレナリンが出て眠れないのですが…。
緊張することってストレスですよね。でも、今私は37歳という年齢で、日常で緊張して「ドキドキ」できる機会ってそうそうないんですよね。仲が良くても毎日夫にドキドキするわけではないですし(笑)。でもマージャンは試合の度にドキドキさせてくれる、なかなかない感情を味わえるのは幸せなことですし、感謝しないといけないなと思うようになりました。
マージャンプロママの日常 家庭との両立は試行錯誤
21歳でプロになった当時は、結婚や出産を機に退会する女性の先輩は多かったので、両立は難しいのかなと感じることもありましたし「いつまでこの仕事ができるだろうか?」「結婚するなら、この仕事を認めてくれる人がいいな」など、常に先行きは不安でした。
私はそんな中、ありがたいことに結婚・出産を経ても続けることができていますが、家庭との両立は本当に難しい問題です。基本的には夜に試合があるので、娘からは「ママは夜に家にいない」と言われますし、寂しい思いをさせていると思います。
試合から帰るのは真夜中ですが、朝は必ず起きて保育園に見送り、試合に行く前には夕飯を作ってから家を出ます。夫が私の作った夕飯を食べている娘の動画を送ってきてくれるので、それを見るのが楽しみです。「あなたのことを一番に考えているよ、大好きだよ」って欠かさず伝えてコミュニケーションを取っていますね。
夫は保育園の準備や園との面談の日程調整なども完璧にこなしてくれるんです。私がこうして活動できるのは本当に家族の協力があってこそ。とても感謝しています。
娘はもうすぐ小学生になるので、「ママはお仕事しているんだ、だから旅行に行ったり好きなものを買ってもらえたりするんだ」と徐々に私の仕事についても理解してくれるようになりました。最近は欲しいものがあると「ママ!ちゃんと働いてる?」なんてことを言うように(笑)。
ファンのママたちから育児相談されることも
ファンの中にもママさんが結構いるので、育児の相談をされることもあります。「子どもに強く当たっちゃった」とか、悩みに対して「分かる分かる!」って共感したり、「お互いに頑張ろうね」って励まし合ったりしています。
普段の生活に追われていると思考が内に向いてしまって、「誰からも感謝されないし、自分なんて…」とネガティブな状況になりがちです。だからこそ私は、気持ちを外に向けて、子どもにも夫にも積極的に感謝の気持ちを伝えるようにしています。この記事を読んでくれている子育てをがんばっているみなさんにも、私からは「もう十分毎日がんばっているよ!みんな偉いよ!」と声をかけてあげたいですね。
いつか子ども向けのマージャン番組を作るのが目標
これはいろいろな場面で言っているので、いつかかなえたい目標のひとつなのですが、子ども向けのマージャン番組を作りたいと思っています。小さい子でも理解しやすいような番組を作って、もっとマージャンの裾野を広げていきたいですね。頭脳スポーツの一種として認知を広げて、もっと受け入れられる世の中になるといいなと考えています。
企画/&あんふぁん編集部、撮影/渡邉真一、取材・文/渋谷彩乃




























