中学受験しないのは本当に不利?「しない選択」の価値と家庭でできる学びの工夫

中学受験しないのは本当に不利?「しない選択」の価値と家庭でできる学びの工夫

中学受験しないという選択をするご家庭も増え、「このままでいいのかな?」と迷う声も聞かれるようになっています。最近は「中学受験が話題に上る機会も増えていますが、未就学児〜小学校低学年の段階では、まだ自分ごととして捉えにくいという保護者の方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、受験する・しないに関わらず、幼児期から低学年の間にどのような学びの土台を育てるかが、のちの学校生活や学びの意欲に大きく関わってきます。今回は「受験しない選択」が実践できる学びのコツについて解説します。

中学受験を取り巻く今の状況

少子化の影響で小中学生人口は減っていますが、特に首都圏では中学受験する子どもの割合は増加傾向にあります。
首都圏模試センターによりますと、2025年度の首都圏中学受験者総数は52,300名、受験率は18.1%であり、2024年度からほぼ横ばいの過去最高水準となっています。
出典:首都圏模試センター「2025年の首都圏私立・国立中学受験者数は52,300名と微減。受験率は過去2番目の高さに!【速報】」

中学受験を選択する理由としては、「大学付属校や私立中高一貫進学校で大学受験を有利に進めたいから」「私立中学の教育環境の良さを評価しているから」「公立中学校の学力低下が懸念されるから」といった声が多く聞かれます。

一方で、中学受験しない選択をするご家庭では「子どもに過度なプレッシャーをかけたくない」「受験勉強に費やす時間とお金を子どもの興味関心に使いたい」といった考えがあるようです。

「受験しない」ことで得られるメリット

中学受験しない選択には次のようなメリットがあります。

興味関心に沿った学びや時間を大切にできる

スポーツや音楽などの習い事、読書や探究活動などに時間を使えるため、子どもの興味に沿ってのびのびと学ぶことができます。友達や家族と一緒に過ごす時間を確保しやすいこともメリットです。

英語・数学の先取りで高校・大学受験に備えやすい

例えば中学受験対策で必要となる「つるかめ算」「植木算」などの特殊算は、中学受験以外では基本的に必要とされません。そのため中学受験しない場合は、高校受験や大学受験に直結する数学や英語の先取り学習を効率よく行うことができます。

高校受験で上位層を狙いやすくなる

中学受験で中高一貫校に入学した子のほとんどが高校受験を回避することになります。中学受験の段階で成績の最上位層が抜けるため、高校受験では上位層のライバルが減るというメリットもあります。

「受験しないデメリット」も知っておこう

一方で中学受験しない選択にはデメリットもあります。

目標がないと学習習慣が定着しにくい

中学受験に向け高いモチベーションで計画的に学習を進める子と比較して、中学受験しない子は明確な目標設定がないため、学習習慣を定着させることが難しいデメリットがあります。

学校任せにすると基礎の取りこぼしが起こりがち

中学受験を目指す場合はスパイラル学習と呼ばれる塾のカリキュラムをこなしたり、テストや模試を頻繁に受けたりすることで学習内容の定着が促されます。受験をしない場合は家庭で計画的に定着度のチェックを行わないと、小学校の学習内容が不十分なままになってしまう可能性があります。

高校受験では内申点や実技教科対策も重要に

高校受験は中学受験に比べ内申点が重視されます。提出物や欠席日数など、子どもによっては学力以外の要因で受験を有利に進められない可能性があります。また5教科以外の実技教科の点数も無視できなくなります。

受験しない家庭が意識したい「4つの学びのコツ」

では、中学受験を選択しない家庭ではどのような点を意識して学習すればよいか、4つのコツを解説します。

① 学校の授業を大切にし、復習習慣をつける

まず授業内容の復習を丁寧に行います。一日10分復習時間を作るだけでも、学習内容の定着率は大きく上がります。
方法は、授業内容をノートにまとめ直したり、間違えた問題をノートに書き写してテスト前に見直したりします。人に教えること(学習のアウトプット)も有効なので、親が質問して子どもに説明させる方法もおすすめです。

② 苦手はその場でつぶす

中学受験しない場合は、苦手なことにじっくり取り組む時間の余裕があります。必要に応じて前の学年の内容に戻ったりしながら、丁寧に理解を深めましょう。
小学校時代の小さな苦手の積み重ねが、中学・高校での大きなつまずきにつながります。苦手は気付いたときに解消しておくことが大切です。

③ 英語・数学は先取りで基礎を固める

英語と数学は、高校受験・大学受験で差がつきやすい科目です。これらの科目は小学校時代からしっかり勉強をしてくる子も多いので、校内のテストで平均点を取れていても、実際にはできる子との学力差が大きく開いているケースがあります。英語と算数・数学は積み上げ型の科目なので、早い段階から先取り学習を進めてしっかり基礎を固めましょう。

④ 自分でスケジュールを立てる練習をする

中学受験は親の管理が大きいですが、高校・大学受験は子ども自身で学習管理をできる子が確実に伸びます。まずは1週間の学習スケジュールを立てる練習から始めましょう。学習終わりに「今日できたこと」「難しかったこと」「明日やること」を振り返る3行日記を書くこともおすすめです。自分を客観視するセルフマネジメント力が育ちます。
また、英検、数検、漢検などを計画的に受検することは、目標を持って学習するモチベーション維持に役立ちます。検定に合格すると高校受験で有利になることも多いので、ぜひ活用しましょう。

「実体験」が思考力と表現力の土台に

中学受験をしない子は、受験をする子に比べて時間にゆとりがあります。その時間をお子さんの「学びたい!」「やりたい!」を叶える時間に充てられることは、しない選択の大きな強みと言えます。
たとえば、読書や自然体験、科学館・博物館への見学、プログラミングなどは、お子さんの思考力・表現力の土台を作ります。「なぜ?」「どうして?」という疑問を自分で考えたり調べたりする経験が、学力の本質的な伸びにもつながるのです。
特別なお出掛けをしなくても、家族で過ごせる団らんの時間に日常のニュースや社会問題を話し合うのも勉強になります。「なぜこの事件が起きたのか?」「自分ならどうするか?」を考える習慣は、高校受験や大学入試での志望理由書・面接などで強みを発揮します。
受験事情と子どもの進路選びについては、以下の記事も参考にしてください。
引用:わが家に合うのはどっち?小学校受験と中学受験の違いと考え方
引用:「国立小学校ってどんなところ?」受験しなくても知っておきたい、子どもの育ちにつながるヒント

まとめ:中学受験をしなくても、「自分らしく伸びる学び方」はある

今回は中学受験を「しない選択」の価値と、家庭でできる学びのコツを解説しました。受験はあくまで選択肢のひとつです。どんな進路でも大切なことは、自分の力で学び続ける姿勢と日々の積み重ねになります。まずは基礎学力をしっかり固め、家族との会話や実体験を通して、お子さん自身が「なぜ?」「どうして?」と考える力を育てていきましょう。

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担当カテゴリー

学び・遊び・教育

算数教材「RISU」代表取締役 今木智隆

RISU Japan株式会社代表取締役。京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、ユーザー行動調査・デジタルマーケティング専門特化型コンサルティングファームの株式会社beBitに入社。金融、消費財、小売流通領域クライアント等にコンサルティングサービスを提供し、2012年より同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した小学生の算数の学習教材で、延べ30億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーのハイレベルなアフタースクール等からも算数やAIの基礎を学びたいとオファーが殺到している。

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