子どもがなんでも触りたがるのは成長のサイン!? 「感覚の敏感期」を知っていますか
2歳を過ぎたあたりから、なんでも触りたがる「感覚の敏感期」がやってきます。触ってほしくないものに限って触りたがるし、取り上げると悲鳴をあげる…大人にとっては大変な時期ですが、子どもにはとても重要な成長過程なのです。
なんでも触りたがるのは成長のサイン!?
モンテッソーリ・メソッドでは2歳半〜6歳ごろを「感覚の敏感期」と呼んでいます。視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の五感に代表される感覚器官が最も育つ時期で、子どもは感覚への刺激にとても敏感になります。
2歳を過ぎた頃から、子どもは何にでも触りたがるようになります。「これはなんだろう?」「もっと知りたい!」という衝動に突き動かされるように、見るものすべてに触れて感触を確かめたり、じっくり見たり、匂いを嗅いだり、あるいは口に入れてみたりして、物の実態を捉えようとします。
言葉を覚えるよりも少し前の時期、子どもの感覚は最も鋭くなります。言葉を知らない分だけ、自分の感覚を通して身の周りの事柄を吸収しようとしているのです。たくさんの物に触れさせて、ぜひこの時期だけの特権を存分に活かしてあげてください。
大人が触ってほしくないものほど子どもには魅力的に見えるようなので、危険なものや高価なものはあらかじめ目に触れない場所に置くことをおすすめします。
言葉のない世界で得られるもの
例えば「机」に触れているとき、幼児はどんなことを感じているでしょうか。木製の天板の滑らかな手触り、手を動かした時のツルツルと滑る感じ、表面の温度感、体ごと寄りかかっても壊れない頑丈さ、広げた両手よりもまだまだ広い平面、手で叩いた時の「トントン」という乾いた音、ほのかな木の匂い…体ぜんぶを使って感じ取った、これが子どもにとっての「机」です。
感覚には子どもそれぞれ個性がありますから、同じ机に持つイメージは子どもによっても違います。「机」という言葉の先入観に縛られない分だけ、子どもの感覚は自由で幅のあるものなのです。ですから、「これは机って言うんだよ」と言葉を伝えるのは、子どもが十分に味わった後がよいと思います。
「これは何?」と子どもから聞いてきたなら、まずは「触ってみて」と一緒に感じるように声をかけてみます。「すべすべだね」「あったかいね」「いい匂いだね」という具合に味わったところで、「これはね、机だよ」と伝えます。あるいは、触っただけで子どもはもう満足かもしれません。子どもの「これは何?」は必ずしも名称を聞きたいわけであるとは限りません。子どもの探究心は疲れを知りません。次々に新しい物に触れて、学んで、また触れて、学んで…を延々と繰り返すのです。
一方で、私たち大人はすでにたくさんのことを経験しているだけに、感覚を使う機会が減っています。見たことのないものでさえ、言葉で説明されればなんとなく理解することができてしまいます。
しかし、知らない物や事柄を学ぶ時には体験してみるのが一番良いということを、誰でも知っています。百聞は一見に如かずという言葉がある通り、人から聞いたり、想像したことと実際とは違っていることは多々あります。見た目はおいしそうに見えないものでも、食べたらとてもおいしかったという場合もあるでしょう。
大人が子どもの感覚を理解するのは難しいことですが、意識を変えてみるだけでも随分違います。例えば、いつもより低い姿勢で子どもの目の高さを疑似体験したり、子どもと一緒に床に寝転んでみるだけでも世界が変わって見えますよ。
子どもは感覚で味わい、行為そのものを楽しむ
感覚器官を成長させている最中の子どもたちの「楽しさ」とは特有のものです。大人の行動には何かしらの目的がありますが、子どもは行為そのものを楽しみます。例えば…
- 鉛筆で自由に線を描いている子どもは、実は紙と鉛筆が擦れる音や感触を楽しんでいるのかもしれません
- 粘土を触っている子どもは、ぐにゃぐにゃとした感触がおもしろいのかもしれません
- 1、2、3、4、5…と何度も発声している子どもは、歌のような音の連なりが楽しいのかもしれません
鉛筆で描き始めた子どもを見ると、大人はつい絵を描かせようとしたり、文字を書かせようとしがちですが、ちょっと待ってみてください。数に興味が出てきたとみるや、いきなり計算をさせようとするのもちょっと早過ぎます。大人と子どものペースは違いますので、今はゆっくり、子どもが楽しんでいることに目を向けてみましょう。
モンテッソーリの感覚教具「秘密袋」
モンテッソーリの教室には、感覚刺激を求める子どもたちに向けたさまざまな教具が用意されています。特に「秘密袋」は常に順番待ちになるほど人気です。
「秘密袋」は中に同じものが入ったふたつの巾着袋で、二人の子どもが一緒に遊ぶことができます。スプーンやクルミ、洗濯バサミ、コマ、貝殻、おはじき、サイコロなど形や素材が異なるものが5〜8種類入っています。
二人の子どもがひとつずつ袋を持って、順番に相手が出したものと同じものを自分の袋から取り出します。ただし、袋の中を見ないで、手探りで探すという約束があります。相手がコマを出したなら、自分も指先でコマを探します。目で見たものと同じ物を触感覚だけで識別するのは子どもにとってチャレンジですが、何度か試しているうちにうまく探せるようになります。
自分の感覚を存分に使える活動に子どもは大満足。「これとこれはおんなじ!」「同じの探せた!」と嬉しそうに繰り返して遊びます。なお、子どもには初めから物の名称は教えません。形や色、感触などに子ども自身が十分感じ取ったところで「これはコマだよ」と伝えます。
巾着袋にいくつかの物を入れれば即席の「秘密袋」ができますので、家庭でも同じような遊びが楽しめます。例えばママのバッグに入っているメイク袋でも同じことができるかもしれません。ブラシや香水の瓶、リップや手鏡…。ふたつセットでなく、ひとつの袋だけでも十分楽しめます。
最初に大人がブラシを取り出して子どもに見せてから袋に戻し、「今と同じ物を出してみて」と誘ってみてください。中を見ないように伝えるのをお忘れなく!
過去に詳しく紹介した記事がありますので、興味のある人は参考にしてみてください。
モンテッソーリ流感覚おもちゃ「ママのポーチ」。何が入っているかな?