子どもの「なぜ?」「どうして?」に向き合う余裕がないママ・パパへ…オルタナティブ教育ではこう考える

モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第13回は子どもの「なぜ?」「どうして?」という質問責めへの対応についてです。
幼児期の子どもは、日々の生活の中で「どうして?」「なんで?」と何度も尋ねてくるようになります。「どうしてセミはミーンミーンってなくの?」「なんでお菓子食べたらダメなの?」と次々に問いかけられると、忙しいときには困ってしまうこともあるでしょう。きちんと答えてあげたいと思っても、毎回うまく説明できるわけではありません。また、時間に追われていたり、気持ちに余裕がなかったりして、ゆっくり向き合えないことも多いと思います。
それでも、この時期の「どうして?」は、できるだけ大切に受け止めたい子どものことばだったりします。5歳頃は、会話のやりとりを続けたり、聞いた話について答えたり、自分の考えをことばにしたりする力が大きく伸びる時期です。ことばを使って、自分のまわりの世界を理解しようとする力が育っていくのです。
子どもの問いにレッジョ・エミリア・アプローチを参考に
こうした子どもの問いを考えるときに参考になるのが、レッジョ・エミリア・アプローチの考え方です。レッジョ・エミリア・アプローチとは、イタリア北部のレッジョ・エミリア市で育まれてきた幼児教育の哲学と実践です。子どもを、まだ何も知らない未熟な存在としてではなく、豊かな可能性を潜めた能力と権利をもつ市民として捉えるところに特徴があります。
遊びやお絵かき、話し言葉、身体の動きなど、子どものさまざまな表現を大切にすることでも知られ、オルタナティブ教育(従来の一斉指導型とは異なる子ども中心の教育の考え方)に関心のある人たちのあいだでは世界的によく知られたアプローチです。私の住むカナダのバンクーバーでも、レッジョ・エミリア・アプローチはよく知られた考え方で、多くの園で取り入れられているだけでなく、家庭で子どもの声にどう耳を傾けるかを考えるうえでも、参考になるヒントがたくさんあります。
大人は「子どもの隣で一緒に考える人」で良い
レッジョ・エミリア・アプローチでは、子どもの問いそのものが学びの出発点になります。だからこそ、「どうして?」と聞かれたときに、大人の役割は、すぐに正解を教えて会話を終わらせることではありません。「どうしてだと思う?」「もしこうだったらどうなるかな」「一緒に調べてみようか」と声をかけながら、子どもが自分で考えられるように支えることを大切にしています。大人は、何かを教えなければいけない人ではなく、子どもの隣で一緒に考える人でいて良いのです。
「どうして?」には会話を続けたいという思いが
実際、5歳くらいまでの子どもの「どうして?」は、いつも厳密な理由だけを聞いているとは限りません。スイス大学の研究では、家庭での食事中の会話を分析したところ、子どもの「どうして?」の質問には、説明を求める働きと、やりとりを続ける働きの両方があることがわかりました。つまり、「どうして?」には「理由を知りたい」という気持ちだけでなく、「もっと会話を続けたい」という思いが込められているということなのです。
だからこそ、子どもの「どうして?」は、できるだけ無視せずに受け止めたいものです。親が子どもの気持ちやことばを受け止めながら関わることは、子どもの自己肯定感とも関係するといわれています。もちろん、質問に全部答えれば自己肯定感が高まる、ということではありません。ただ、子どもが問いかけたときに、「あなたの声を大事にしているよ」という姿勢で向き合うことには、大きな意味があります。自分の思いや疑問を受け止めてもらう経験は、「自分は大切にされている」という感覚につながっていくからです。
とはいえ、毎回ていねいに付き合うのは現実には難しいものです。夕食の支度中や仕事で手が離せないときまで、すべてに立ち止まる必要はありません。そんなときは、「いい質問だ!忘れないようにしておこう」と言って、携帯電話のボイスメモに残しておくだけでも十分です。あるいは、5歳くらいなら、絵や簡単なことばで書き残せる子もいるでしょう。たとえば、家に「不思議ボックス」を置いて、思いついた問いを紙に書いて入れておき、週末に一つ選んで一緒に調べるのもよい方法です。図鑑を見たり、散歩しながら観察したり、絵に描いてみたりする中で、「どうして?」は親を困らせるものではなく、親子で一緒に世界を見つめる入り口になっていきます。
すぐに分からなくても、向き合えなくてもOK!
子どもの「どうして?」は、必ずしも知識を得るためだけの問いではありません。ことばの発達や考える力、想像する力とともに、大好きな親とつながっていたいという子どもの願いも、そこには込められているのです。だからこそ、親に求められるのは、いつでも正しい答えをすぐに教えることではありません。わからないことがあってももちろん大丈夫ですし、すぐに向き合えない日があってもかまいません。その代わりに、「あなたの問いは大事」「一緒に考えてみよう」という気持ちをできるだけ見える形で伝えていくことが、子どもの学ぶ力と親子関係を育てていくのだと思います。
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