子どもに名前を聞くときに心掛けていること
あんふぁんWebをご覧のみなさん、こんにちは! 子育てポータルサイト「パパしるべ」の編集長の杉山です。
僕は編集長でもありますが、放送作家という仕事もしています。いわゆるテレビやラジオに関係する台本を書いたり、情報を調べたりする仕事です。世の中の多様化や、さまざまな変化が起こっている中で、とても表現に気を使うことが増えています。いわゆる「コンプライアンス」というものです。
「May I have your name, please?」と「What’s your name?」
「コンプライアンス」とは、辞書で調べると「法令遵守」というのが直訳になるようですが、実際は法令だけでなく、社会規範といったいわゆる世間一般のマナーなども意識した行動や発信が必要になります。
そんな影響もあって、かつて当たり前だったテレビやラジオの企画も違う形が求められています。ワイドショーでよく見る街頭インタビューもその一つ。特にここ数年は距離を保つことが必要なのでマイクを長めの棒に取り付けたものが使われることが増えました。また、事前の許可が必要なので、多くは収録したものであり、名前まで出るようなものはほとんどありません。
僕が子どもだったころは、かなり豪快な街頭インタビューがたくさんありました。その一つが朝の番組でウィッキーさんという外国の方が、街行く人に突撃インタビューをするもの。インタビューは基本英語。そして生放送。今ではなかなか考えにくい企画です。その中で特に印象に残っているのは、ウィッキーさんがインタビューする相手に名前を聞くときに使っていた文章。
May I have your name, please?
直訳すると「私にあなたの名前を教えてもらうことはできますか?」となるでしょうか。最初のうちはこれにすごく違和感がありました。我々世代が子どもだったころに知っていた名前の聞き方が
What’s your name?
だったからです。後に学校で英語を習うようになって分かったのは、これを直訳すると「名前、ナニ?」くらいフランクな言い方であり、初対面の人に使うにはあまり丁寧な表現ではなかったということ。特に社会人になったりすると、仕事で出会う相手にいきなり「名前、ナニ?」なんて聞かないですよね。
ところが、親になってから、ある時ふと気づいたんです。
僕の名前は〇〇です。君の名前を教えてもらえる?
娘の友達や友達の子どもなどに会ったとき、僕は特に意識することなく「名前、ナニ?」と聞いていたのです。多分気にする必要もないことなのかもしれませんが、これってコミュニケーションとしてどうなんでしょう?と、ひっかかってしまったのです。もし自分が誰の子どもであっても、一人の人として尊重できていれば初対面でこんな聞き方はしないのではないかと。
同時にもう一つ気になったことがあります。
ある日、娘から「きょう、公園でパパのこと知っている人に会ったよ」と報告されたので「誰?」と聞くと「うーん、おじさん」と言われました。当然、それでは娘と話したのが誰かは分からないのですが、根本的なところとして、そもそもその男性は自分のことをちゃんと名乗っていないんじゃないかと思ったのです。自分にも心当たりがありました。自分の名前を名乗らずに、子どもに名前を聞いたり話したりしたことは山ほどあります。自分は名乗らずに相手のことだけ質問するのもまた、大人同士ではしないことですよね。
そのことを意識してからは、必ず「僕の名前はジョージです。〇〇小学校の〇年生の○○のパパ。君の名前を教えてもらえる?」と言い方はフランクなままですが、できるだけ丁寧に伝えるようにしました。すると、子どもってすごく順応が早いのでちゃんと対応してくれる子がほとんどでした。
幼いころからの「丁寧なコミュニケーション」の大切さ
子ども相手にここまでする必要があるかは、人それぞれの考え方によると思いますが、“どうせ子どもだから”“言ってもわからないだろう”とは考えないようにすることは、やっぱり大事なことだと感じています。そして、幼いころから丁寧なコミュニケーションをされることや、そういう大人を見て育つことは、その子のコミュニケーションの成長にもきっと影響すると思います。
子どもは成長にともなって、社会を徐々に広げていきます。その広がっていく過程でいろいろなコミュニケーションを学んでいくのかもしれませんが、幼いころの小さいコミュニティーにいるうちから基本のコミュニケーションを知っておくと、よりスムーズに社会の広がりに対応できると思います。
大人同士のやり取りのコンプライアンスはしっかりと意識できている人でも、ちょっと忘れがちな部分のように感じます。改めて子どもに対するコンプライアンスを考えてみてはどうでしょうか?
教えてくれたのは
杉山錠士
1976年、千葉県生まれ。
兼業主夫放送作家(株式会社シェおすぎ所属)。子育てポータルサイト「パパしるべ」編集長。ファザーリング・ジャパン会員。
18歳と10歳という年の離れた2人の娘を子育てする兼業主夫放送作家として、FMラジオを中心に情報番組、子育て番組などの構成を担当。「日経DUAL」をはじめWEBメディアでは各種コラムや記事を執筆。
地域ではPTA会長やパパ会運営を歴任。FJ内プロジェクト「秘密結社 主夫の友」では広報を担当。「主夫の友アワード」「娘のためのパパ家事スクール」「パパ家事サイエンス」「日大商学部」「筑波大学」や大田区両親学級、品川区男女共同参画課などで講演を実施。子育てアイテム「パパのツナギ」企画制作販売、パパ向けスクール「スゴパパ工場」工場長。
■著書
*新ニッポンの父ちゃん~兼業主夫ですが、なにか?~(主婦の友インフォス情報社)
*急に「変われ」と言われても(共著:熊野英一 小学館クリエイティブ)
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担当カテゴリー
学び・遊び・教育
兼業主夫放送作家 杉山錠士
1976年、千葉県生まれ。兼業主夫放送作家(株式会社シェおすぎ所属)。子育てポータルサイト「パパしるべ」編集長。ファザーリング・ジャパン会員。アドラー心理学勇気づけ勉強会ELMリーダー。品川区内小学校の現役PTA会長。20歳と12歳という年の離れた2人の娘を子育てする兼業主夫放送作家として、「ちょうどいいラジオ」(FMヨコハマ)「宮﨑薫のHump Night With Me」(TOKYO FM)などFMラジオを中心に情報番組、子育て番組などの構成を担当。「日経DUAL」をはじめWEBメディアでは各種コラムや記事を執筆。地域ではPTA会長やパパ会運営を歴任。FJ内プロジェクト「秘密結社 主夫の友」では広報を担当。「日大商学部」「筑波大学」や大田区両親学級、品川区男女共同参画課などで講演を実施。著書に「新ニッポンの父ちゃん~兼業主夫ですが、なにか?~」(主婦の友インフォス情報社)「急に『変われ』と言われても」(共著:熊野英一 小学館クリエイティブ)