少子化でも増え続ける中学受験、わが家はどうする?

少子化でも増え続ける中学受験、わが家はどうする?

近年、都市近郊で増えてきている中学受験。「気になるけれど、実際どうなの?」「うちの子どうする?」未就学児〜小学生のママ・パパへ、焦ることなく、無知でもなく、「自分たちらしい選択ができるようになるための知識」をお届けします。




はじめに

コロナ渦を経て、「中学受験」というものが、より一般的になってきた昨今、「わが子も、中学受験をする?しない?」と迷われている保護者も多いのではないでしょうか。この連載では、子どもの進路を決める上で、受験をするにしてもしないにしても、後悔せず納得感のある選択ができるようになるための知識や情報をお届けします。進学だけでなく、教育・育児全般のコンテンツ編集に携わってきた私が、教育ジャーナリストとして、あくまで公平な立場からお伝えしたいと思います。

子どもの教育は、正解が1つではなく、ましてや小学生以下の子どもには確固たる選択能力もなく、保護者が導くのは、大変難しいことです。でも、「知らなかった!」ではなく、「知って・考えて・選んだ道」であれば、どんな道でも正解にしていけるのではないでしょうか。この連載を読んで、”迷える保護者”で、自分なりの教育観をもつ保護者へとなっていただけたらと思います。それにはまず、知ることが第一歩です

中学受験者数は、より広範囲に増えている

最近「中学受験」という言葉をよく聞くようになったな、思われていらっしゃるかもしれません。その通りです。実際に2023年度入試の東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県を合計した中学受験者数は5万2600人(実人数)で過去最多となりました。(※森上研究所調べ)

近年の少子化にも関わらず、受験人口は過去最多。それまでの最多時の数字と比べても1500人も増えています。なお、この入試受験率は、1都3県で割ると18%に迫る勢いです。

都心23区では加熱と言っても良いほどで、東京都の受験者数は13万1464人で、前年比は103.8%。東京周辺の埼玉・神奈川・千葉・茨城にも新たに私立の中学・高等学校ができてきているので、この増加傾向はしばらく続きそうです。

公立の学校ではダメなの?日本の公教育はオワコン?

中学受験とはそもそも何なのでしょう?「公立ではダメなの?」「日本の教育はオワコン?」などと、ネット上では、様々なご意見を見て、不安や疑問をもたれている方もいらっしゃると思います。ですが、私の答えはNO! 公立がダメなわけではありません。日本全体の学力を世界と比較しますと、日本の学力レベルは現在も高いからです。

その証拠に、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)では、日本は現在も、数学的リテラシーや、科学的リテラシー、読解力などあらゆる能力が世界で上位トップ3くらいに入っています。読解力が2018年に11位になったことがあり話題になりましたが、今はまた2位に復活しています。私自身が長年全国の公立学校を見学してきた感触をもってしても、日本には優秀で誠実な現場の先生が多いと思います。海外の公教育は、エリアによってもっと差があるケースが多く、人々の知識の差も開きがちです。ですから「うちは公立に通っているから、かわいそう」なんて思う必要はありません

一方、日本の私立学校はどうでしょうか? 私たちの親世代の時代には、小・中から附属校がある学校は数えるほどでした。それが、近年では大学の附属以外にも進学目的の中高一貫私立校や、特色のある私立が、増えてきました。

わが国では、戦後アメリカのGHQと日本政府が共に作った教育制度により、全国津々浦々、子どもたちが歩いて行ける場所に小学校がつくられました。それは非常に高い効果を上げ、特に1980年代までは高度経済成長に寄与したのです。これは、世界でも珍しいほどの効果を上げたと言えるでしょう。

ですが、時は経ち、世の中は激変しました。世の中が変われば、求められる力も変わり、教育も変化する必要があります。今、文部科学省を筆頭に急いで教育改革が進められています。「一人一台端末」が実施され、英語科も小学校5/6年生から教科化になりました。そんな変化の流れを受け、私立では、さらに英語に強かったり、探究型授業に力を入れていたりなどの独自の強みや校風を意識した学校が、続々と登場してきたのが昨今です。

教育も個別最適の時代に。中学受験にかかる費用は?世界と比べると?

これは何を意味するのでしょう? 私は、「教育の選択肢が増えた」という喜ばしいことだと思っています。学校の数が増えれば、今までは、地元の公立しか選択肢がなかった家庭も、小・中学校から子どもの適正に合わせて校風や環境や教育理念を選べるようになるのです。教育は個別最適の時代になったということです。直射日光でこそよく育つ植物もあれば、室内の方が良い植物もあるように、子供にも個性があります。子どもの成長を考えた時、その子に適した環境であれば、より、のびのびと成長しやすいですよね。

た、私立は学費が高い、というイメージがあるかと思いますが、欧米諸国に比べると、比較的安価と言えます。イギリスやアメリカの名門私立校は、もっと高額だったりもします(両国とも近年のインフレでさらに値上がりしています)。それに比べると、一般的なサラリーマン家庭が、私立の中学受験を1つの選択肢として考えられる日本は、まだ恵まれているとの見方もできると思うのです。

中学受験にかかる塾費用は小学校4年生から3年間塾に通ったとして、およそ200万円と言われています。それが、高いのか妥当なのか?…判断するには、中学受験のメリットがなんなのか?をもっと詳しく知りたいですよね。

次回は、「子どもの中学受験、どんなメリットがあるの?デメリットは?」「私立と公立の違い」について、お話ししたいと思います。 


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担当カテゴリー

学び・遊び・教育

教育ジャーナリスト 田口まさ美

出版社の小学館で教育誌・ファッション誌編集含め23年以上(教育編集者として10年)携わり2022年独立。教育ジャンルでは初等教育教員向けコンテンツ中心に教育、学習、子供の心の育ち、非認知能力・海外の教育などのコンテンツ編集を経験。現在教育ジャーナリストとして親子に役立つ情報を発信。カナダ留学中の娘の母。Starflower inc.代表取締役。

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