子どものけんかは成長のチャンス! 表面的な「ごめんなさい」より優先すべきこと

子どものけんかは成長のチャンス! 表面的な「ごめんなさい」より優先すべきこと

モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第16回は子ども同士のけんかの後の親の対応についてです。

けんかのあとに必要なのは「謝る力」や「誰とでも仲良くなる力」だけではない

子どもが友達とけんかをして、なかなか謝らない姿にやきもきしたり、いつまでも気にしている様子に「気にしてもしょうがないのに」と思ったりすることもあるでしょう。けれど私は、子ども同士のいざこざがあったとき、すぐに謝ることや、誰とでも仲良くできることだけをゴールにしなくてもいいと思っています。

むしろ大切なのは、けんかをきっかけに自分と相手の行動を振り返り、これからその友達とどう関わっていくのかを考えられるようになることです。まず教えたいのは、謝ることの意味です。子ども同士で問題が起きると、私たちはつい「ごめんなさいは?」と謝罪を求めがちです。もちろん素直に謝ることは大切ですが、ただ「ごめんなさい」と言わせることと、謝ることの意味を理解することは同じではありません。

4歳から9歳の子どもを対象にした研究では、子どもたちは、友達が自分から謝ったときと、大人に言われて仕方なく謝ったときでは「謝罪すること」の意味を同じようには受け取っていないことが分かっています。特に、年齢が上がると言わされた謝罪には誠意を感じにくく、言葉だけの「ごめん」では納得できなくなるのです。

考えてみれば大人も同じです。形だけの「ごめん」と、自分のしたことを理解した上での「ごめん」では、受け取る側の気持ちは全く違います。だからこそ、謝罪で大切なのは言葉そのものではなく、自分は何をしたのか、その行動によって相手はどう感じたのか。そして、どうすればよかったのか。そこまで考えることなのです。

子ども同士のけんかがあったときは、すぐに謝ることで表面上の解決を促すのではなく、子どもが自分の気持ちと行動を分けて振り返れるよう手助けしてみましょう。腹が立ったり、悲しかったりする気持ちは否定せず、その上で「自分は何をしたのか」「相手の行動はどうだったのか」を一緒に考える。もし自分の行動について謝る必要があると気付いたなら、そこから自分の行動に責任を持つことにつながっていきます。

誰とでも仲良くすることをゴールにしない

もう一つ、私がモンテッソーリの教員をしていた頃から大切にしてきたのは「誰とでも仲良くすることを一番のゴールにしなくてよい」ということです。けんかやすれ違いの中には、人との関わり方を学ぶきっかけがたくさんあるからです。

同じけんかでも、たまたまその日だけうまくいかなかったこともあれば、似たような負のやり取りが何度も繰り返されていることもあります。そのため、仲直りを急ぐ前にその関係の中で何が起きているのかを見てみます。自分は何をしたのか、相手はどうだったのか。自分が変えられることはあるのか。それとも、何度伝えても同じことが続いているのか。こうして友達との出来事を振り返ること自体が「自分と相手の両方を見ながら他人との関係を考える」練習になるのです。

そして「自分はどんな友達と一緒にいたいのか」「自分は相手にとってどんな友達でいたいのか」についてもお子さんと話してみてください。誰とでも仲良くできることより、自分が大切にしたい友情のあり方を学んで、その中で自分自身も相手にとってよい友達である努力をすること。子ども時代の友人関係は、そんなことを学んでいく場でもあるのだと思います。

「思いやり」は、相手に全て合わせることではない

思いやりというと、相手の気持ちを優先的に考えたり、我慢したりすることを思い浮かべるかもしれません。もちろん、それが大切な場面は日常生活にはたくさんあります。しかし、よい人間関係をつくるためには、自分の気持ちを伝える力も必要です。例えば、勝手に物を使われたなら「使う前に聞いてほしい」と言う。からかわれたり、嫌なことをされたりして傷ついたなら「それは嫌だった」と伝える。こうしたことには勇気が要りますが、自分を守るために必要な力です。

そして、自分の気持ちを伝えたときに、相手がどう応えるかを見ることも大切です。話を聞いてくれるのか、気持ちを受け止めてくれるのか。それとも、何度伝えても無視したり、同じことを繰り返したりするのか。相手の反応を見ることで、その関係が自分にとってどんなものなのかも少しずつ見えてくることを子どもと話してみましょう。

子どもにとって相手を思いやることと同じくらい、自分の気持ちや意思に耳を傾けることも大切です。自分が間違ったときには責任を持ち、必要なら謝ったり行動を改めたりする。嫌なことには嫌だと言い、時には距離を取る。子ども時代の友人関係は、そうやって人との距離や関わり方を学んでいく場でもあります。大人にできるのは、すぐに仲直りさせたり、謝らせたりすることではありません。子どもが自分で考え、自分なりに友達との関係を築いていけるよう、その過程を支えることなのだと思います。

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学び・遊び・教育

児童発達学研究者 島村華子

オックスフォード大学修士・博士課程修了(児童発達学)。日本人で唯一の、モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育の二つを司る研究者。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わりながら、日本でも教育・子育てについて、親や教育者に寄り添ったアドバイスを発信している。著書『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て(主婦の友社)』『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』『親子でできる モンテッソーリ教育とマインドフルネス(創元社)』

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