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落ち着きがない。こだわりが強い。コミュニケーションが苦手。そんな子どもの行動や発達が気になっている人へ。発達のスタイルは多様です。まずは子どもの特性について理解を深めませんか。子どもの発達が専門の本田秀夫先生に話を聞きました。
- 本田秀夫先生
- 信州大学医学部
子どものこころの発達医学教室 教授
生まれつきの脳機能の特性によるもの
本人の努力不足や
親のしつけは原因ではない
家庭や園で、ほかの子どもと行動パターンが異なる様子に、「うちの子、もしかして…」と発達障害の可能性を考える人もいるかもしれません。中には、集団行動が難しいなど、成長とともにまわりの人に注意される機会が増え、子ども本人が自信をなくしてしまったり、保護者が「育児の仕方が間違っているのでは」と自身を責めたりするケースもあるでしょう。
しかし、発達障害は生まれつきの脳の特性よるもので、本人の努力不足でもなければ、親のしつけが原因でもありません。発達における「一種の多様性」ととらえましょう。
発達障害の「障害」とは、発達の特性によって日常生活の中でさまざまな困り事が出てくることです。特性にはいくつかの種類があり、重複することがあります。また、特性の出方には強弱もあります。子どもの特性を理解し、子どもに合わせたかかわり方を知りましょう。子どもの困り事を減らすために、家庭で対応できる工夫がたくさんあります。
Q子どもが気になる行動をしたときに、どのように叱っていいか分かりません
A子どもの発達段階に合わせて伝える工夫を
「叱る」には大きく分けて3種類があります。
- ①教えるために「叱る」
- ②うさ晴らしのために「叱る」
- ③その場をおさめるために「叱る」
②と③は、どちらかといえば親の都合で叱っています。こういった叱り方だと、子どもの行動が改まらないことが多いです。
一方、①の教えるために「叱る」は、子どもが行動を改めるためにやり方を教えるものです。この場合、教えたことが子どもに伝わっているかを確認することが大事です。教えようとしている課題がその子の発達段階に合っていれば、数回言えば伝わり、子どもは行動を改めようとします。その場合は叱り方として適切です。
数回言っても伝わらないときは、その課題を教えるのはまだ早いのかもしれません。その場合は、叱っても親子関係が悪くなるだけなので、教えることを一旦止め、しばらくは親が手伝うなどの対応をするようにしましょう。
また以下のように、禁止するのではなく、肯定文で伝えることが有効な場合もあります。
- ・外へ出ちゃダメ ⇒ こっちへおいで
- ・走らないで ⇒ 歩こうね
- ・立たないで ⇒ 座っていてね
- ・たたかないで ⇒ お口で話をして
もっとも、危険な行動やお友達を叩いてしまうことなどに対しては、体を張って止めることも必要です。例えば、子どもが刃物などを触ろうとしたら、「危ないよ」などと注意しながら、その子の手を取ってやめさせます。そして、危険なものは子どもの手が届かないところに置きます。
とはいえ、親も人間です。イライラして子どもを感情的に叱ってしまうこともあるでしょう。親自身が仕事や人間関係などで、いろいろと無理をしていることもあると思います。子育ての工夫を実践してもうまくいかないときや実践する余裕がないときには、一人で頑張らず、発達の専門家に相談してください。
Q一つのことに集中すると、周りに一切注意がいかなくなり、
声を掛けても返事をしません
A無理に声掛けせずに温かく見守って
無邪気に夢中になれることは、子どもにとって重要なことだと思います。大きくなってから、何か打ち込めるものを見つけられるようになるには、子どものころから「ちょっとしたことに夢中になる」という体験を積み重ねていくことが必要です。ですから、ぜひ温かく見守ってあげてください。見守ることで、親子の信頼関係が強まることも期待できます。
Q集中できず、立ち歩いてしまうことが多い。
小学校に入学したときに授業中すわっていられるか心配です
A原因を特定し、それに応じた支援を相談して
集中できない原因は、さまざまなことが考えられます。まずは原因を特定し、原因別の支援を先生に相談してみましょう。原因別の支援は以下のようなものがあります。
<周囲の音に敏感で気が散ってしまう場合>
耳栓の使用や静かな別室などの対応で、集中して課題に取り組めるようにする
<ADHDによる不注意が原因と考えられる場合>
集中が途切れるものは、見えない場所に保管する
Q子どもの発達の遅れが気になります。進学や就職などの
ライフステージの変化にどのように向き合っていけばいいのでしょうか
A悩みを抱え込まず各機関に相談を
発達の特性に応じた対応や配慮が重要になります。発達について気になる場合は、医療・教育・福祉の各機関で相談にのってもらえます。本人や保護者だけで悩みを抱え込まず、必要だと感じたときは、各機関に相談してみましょう。
Q発達の特性について本人が理解し、
特性とうまく付き合っていくにはどうすればよいのでしょうか
A伝える意義を確認し、タイミングや伝え方の検討を
本人に伝えるのは、本人が自分自身の特性について理解し、自信を持って生活していけるようになるためです。発達の特性を理解してもらえず、小さいころから注意されたり、叱られたりすることが重なり、自信をなくしていることがあります。自身の特性を理解することで、これまでうまくいかなかったことを振り返り、これからどうしたらよいか考えるきっかけにしてもらいたいです。
周囲の同年代の子どもとの違いに気付き始めた学童期、学業や友人関係につまずいた思春期などは、自身の特性を理解することが力になる時期と考えられます。本人が普段から気付いている気持ちや具体的な特徴を例にとって説明することで、理解が深まるかもしれません。
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