もうすぐ新学期、トイレトレーニングの重要なポイントと大人のかかわり方
子どもが2歳を過ぎるとそろそろ意識し始めるのがトイレトレーニング。暖かい時期にオムツを卒業するのが理想だと思いますが、そううまくいかない現実もあったりします。新学期を控えて、今の状況はいかがでしょうか?
排泄の自立、最も重要なポイント
結論から言います。排泄の自立に向けて最も重要なのは、子どもが「心身ともに準備ができていること」です。
まずは体の発達が大前提です。赤ちゃんは膀胱に尿が溜まると反射的に排尿をしますが、2歳半ごろになるとある程度は尿を膀胱に溜めておけるようになります。オムツが濡れる間隔が2時間以上になってきたら、排泄機能が整ってきたサインです。
次に心の準備です。保育の仕事を通してたくさんの子どものトイレトレーニングを見てきましたが、周囲がどれだけ働きかけたとしても本人の気持ちが整わないうちはうまくいきません。
子どもの頭にはきっといろんな葛藤があるのだと思います。大人になってしまった私には想像することしかできませんが、おそらくは「変化に対する漠然とした不安」、「トイレに対する恐怖心(水の中に落っこちたりしないかしら?、ドアを閉めたらおばけが来るかも?)」、「(お兄さん・お姉さんへの憧れはありつつも)まだ甘えていたい」、「失敗したらイヤ」…などなど。3歳も近くなってくると想像力が働くようになります。心の中に作り出した不安、これらを克服するには準備が必要なんです。
まずは、子どもが前向きな気持ちでトイレトレーニングを始められる下地を作っていきましょう。大人の都合で時期を決めるのではなく、子どもが「自分で決めた」と感じることが大事です。もちろん大人の本音では「早くオムツを卒業してほしい」のですが、過度にプレッシャーをかけても子どもの気持ちの準備は進みません。段階ごとに、ちょっとしたコツを紹介していきます。
ステップ0:事前準備
できるようになったことを子どもと一緒に喜ぶようにしましょう。例えば、自分で靴を履けるようになった、ボタンをとめられるようになった…など「できたね!」「よかったね!」と喜び合う。ちょっとしたことでも大人が「見てるよ」とエールを送ることで、子どもは自信をつけていきます。トイレもチャレンジできるかも…と思える、そんな心を作っていきましょう。
ステップ1:きっかけづくり
子どもと一緒にかわいいパンツを買いに行ってはいかがでしょう。車や電車、かわいいうさぎちゃん、好きなキャラクター…なんでも構いません。子ども自身に好きなものを選んでもらってください。これだけでも気分が盛り上がります。
盛り上がったついでに、「おうちではいてみようか?」と誘ってみて、スムーズにいくならそれで構いません。でも…と何か理由をつけて先延ばしにしたいようならば「今度の連休の時はどう?」「3歳のお兄さんになったら試してみる?」など少し先の期日を提案してみてもいいと思います。
その時点では良い返事でなかったとしても、何かしら子どもの心には残っていて、気持ちの整理に一歩近づくはずです。ある日突然、子どもの方から「明日からパンツにする」と言い出す場合もあります。
この時点で「パンツにしないとダメ」「幼稚園に行けなくなっちゃうよ」などとネガティブな言い方は避けましょう。大人の都合を押し付けてしまうと、子どもが「自分で決めた」という気持ちになれません。保育園やプレスクールに通っているなら、トレーニング中の友達がいるかもしれませんので、それとなく誘ってもらうよう先生に協力してもらうのも良いですね。
ステップ2:トレーニングが始まったら安心感を
トレーニングの期間は子どもによってまちまちです。気持ちが決まってしまえば1日でパンツに移行できる子もいますが、大概は数週間〜それよりももっと長くかかる子もいます。
トレーニングが始まったら、大人の忍耐も大切。失敗を責めないことが大事です。子どもには「出そうになったらトイレに行こう!」と声がけをして、同時に「もしも失敗しても大丈夫」と安心感を持てるよう接してください。おもらしをしてしまった時には、怒らずさっと着替えるようにしましょう。トイレ付近に着替えセットを用意しておくと安心です。
外出時のおもらしが心配なら、初めは家にいる間だけパンツにしても良いと思います。リビングにはシートを敷くなどして備えておきましょう。何かと洗濯が大変だと思いますが、ここはグッと忍耐の時です。
ステップ3:つまづきポイントを排除する
オムツを外してみると子どものトイレサイクルがわかりやすくなります。排尿の間隔が短い子もいれば長い子もいますので、なんとなくタイミングがわかったらその時間帯に声をかけるといいと思います。遊びに夢中になってタイミングを逃すことも多いので、ごはんの前など決まったタイミングでトイレに行く習慣を作ってもいいと思います。
「トイレが怖い」問題は、初めのうちは大人が一緒にトイレに入って解消しましょう。便座の下にステップを置いて足が届くよう工夫するのもいいですね。おまるを使うのもありですが、いずれはトイレを使うようになります。それを見越して、初めからトイレでする練習をしてもいいと思います。
トイレにまつわる事柄は本当に個人差が大きく、つまづきポイントも子どもそれぞれです。子どもの様子を観察して、状況に合った手助けを考えてみてください。
子どもの気持ちの安定を大事に
トイレトレーニングがスムーズに行くかどうかは、子どもの気持ちの安定が大きく関わってきます。例えば下の子どもが生まれたばかりで赤ちゃん返り気味だったり、引っ越し時期が重なったり…など子どもにとって難しい時期があります。そのような時には大人も心の余裕がなくなりがちですから、事前に予定がわかっている場合にはあらかじめトレーニングの時期をずらすことも検討してみましょう。
子どもの気持ちが不安定な時は、無理せずトレーニングを中断してもいいと思います。そんな時は子どもが落ち着いている時にどうするのが良いか話しあってください。不安定に見えても本人が「パンツがいい!」というなら、続けて良いと思います。
最後に
モンテッソーリ教育を作ったイタリアの女医、マリア・モンテッソーリさんは子どもの成長に関わる大人の役割をこのように言っています。
私たち成人の仕事は物を教え込むことではなく、発達作業中の子どもの心に対して手助けをしてやることです。
ちょっと難しい言い回しがされていますが、つまりはこういうことです。子どもが成長するのに必要なのは、大人から教えてもらうことではなく、本人が成長しようという気持ちをサポートしてもらうことです。幼児には世の中に知らないことがたくさんありますから、必然的に「教えてもらうこと」が多いのですが、どうしたら子どもが「自ら学べるか」を常に考えることが重要だと思います。
トイレトレーニングについても同じく、大人が子どものオムツを外そうとやっきになるより、子ども自身が「パンツにしたい」「お兄さん・お姉さんになりたい」という気持ちを大事に、後方支援をするスタンスが良いのではないでしょうか。
排泄の自立は大切な成長の一歩。これを機に子どもの心は一気に成長しますので、楽しみな反面ちょっと寂しさもあるのかもしれませんが、親子一緒に成長の過程と捉えてみてください。応援しています!