季節や自然から子どもは学ぶもの。そこで大人が知っておきたい72候とは
感受性豊かな子どもにとって、季節や自然から学ぶことは多いもの。旧暦の72候には昔の人が感じた季節の移ろいが表現されていますから、まさに子どもに季節を伝える材料としてはピッタリです。公園など自然に触れるときや会話のきっかけに活用できますよ。
日本の暦と季節
みなさま、新年あけましておめでとうございます。さて今回は2023年最初の記事ということで、日本の暦と季節感についてお話ししたいと思います。子どもにそのまま伝えるには難しい部分もありますが、折に触れて日本の文化を伝えるための知識として、押さえておいてはいかがでしょうか。
日本には四季があり、変化に富んだ自然現象があります。現代は(特に都会では)自然と触れ合う機会が減り、年中食べられる食べものや果物もあるので、季節を感じる機会が減っている気がします。だからこそ、公園や市場などちょっとした機会を見つけて、季節感を子どもたちに紹介したいと思います。
72候とはなんでしょう?
さて、ここからが本題の暦のお話です。現在私たちが使用している暦は「新暦(グレゴリオ暦)」とよばれるもので、明治6年1月1日から正式に使用されています。それ以前に使われていたのが「旧暦」とよばれるものです。
旧暦では新月から次の新月までの約29日を1カ月とする太陰暦と、地球が太陽の周りを1周する動きを1年とした太陽暦を合わせた「太陰太陽暦」を使用していました。
旧暦で季節の指標となったのが太陽暦の1年を24に分けた「24節気」です。立春から始まり、啓蟄(けいちつ/穴の中で休んでいた虫が春を感じて外に出てくる時期)、春分、立夏、夏至、秋分、白露のように季節が巡り、大寒で1年が終わります。
24節気を5日ごと、3つに分けたのが「72候」です。それぞれを初候、次候、末候とよびます。72候は「東風凍を解く(とうふうこおりをとく)」や「草木萌え動く(そうもくもえうごく)」など季節感をそのまま表したものが多く、昔の人のセンスや感じ方を読み取ることができておもしろみがあります。
72候は元々中国から入ってきた暦ですが、江戸時代から日本の気候風土に合わせて書き換えられてきました。現代のように誰もが時計やカレンダーを携帯する前の日本人は、自然現象を肌で感じとり、季節の経過を実感していたのだなあと思いを馳せてみるのも楽しいですね。
1月の72候
24節気での1月は前半が厳しい寒さが訪れる前の「小寒」、後半は寒さ本番の「大寒」です。72候ではどんなふうに表現されているのでしょう。
小寒(しょうかん)
- 初候 1月5〜9日ごろ 芹栄う(せりさかう)
春の七草のひとつ、せりが育つころ。七草とはせり、なずな、ごぎょう、はこべら、すずな、すずしろ、ほとけのざ。1月7日に1年の健康を祝って七草粥をいただきます。
- 次候 1月10〜14日ごろ 水泉動く(すいせんうごく)
地中で凍っていた泉が動き始める頃。さらに寒さが厳しくなる時期に、昔の人は春に向かう自然の変化を捉えていたのですね。
- 末候 1月15〜19日ごろ 雉始雊(きじはじめてなく)
雄のきじが求愛の鳴き声をあげる時期。春が近づいている合図です。
大寒(だいかん)
- 初候 1月20〜24日ごろ 款冬華く(ふきのとうはなさく)
雪が残る地面からふきの花が顔を覗かせると、待ち焦がれた春の訪れです。
- 次候 1月25〜29日ごろ 水沢腹く堅し(みずさわあつくかたし)
沢の水は厚く凍っている時期。寒さが一段と厳しくなる頃ですが、日が少しずつ長くなりわずかに暖かさも増していきます。
- 末候 1月30日〜2月3日ごろ 鶏始乳(にわとりはじめてにゅうす)
春の訪れを感じて、にわとりが卵を産み始める時期です。
*新暦の日付は年によって1日ずれる場合があるので「ごろ」と記載しています。
季節や自然を伝えるきっかけに
表現力豊かに語られる72候は、昔の景色を想像させる力があります。今でも、自然の多い地域や公園の片隅などでも同じ風景が見られるかもしれません。そんな場面を探しながら散歩をしてみるのもロマンがあっていいと思います。
感受性豊かな子どもには、たまに昔のことを話して聞かせてあげるのもいいですね。私の勤務園では毎月、その月の代表的な植物や風景を写真を使って子どもたちに紹介しています。折り紙や切り絵の教材も、季節ごとに入れ替えて季節感を感じてもらえるように工夫をしています。
日本人らしい季節の感じ方や文化について、子どもたちに伝えるきっかけとして、ぜひ72候を活用してみてください。