「不思議」「面白い」が栄養源知的好奇心の育て方
子どもたちの成長のカギとなるだけでなく、将来的に豊かな人生の源にもなる知的好奇心。
そんな大切な知的好奇心の育て方について、脳科学のスペシャリスト・瀧靖之先生に聞きました。
イラスト/てづかあけみ
“栄養の与え方”をアドバイス
子どもの知的好奇心を育むために、親はどういったことができるのでしょうか?
瀧先生に聞きました。
図鑑は知的好奇心の源泉 「ちょっと知っている」状態を作ろう
知的好奇心を引き出すために活用したい脳の特徴として、「単純接触効果」と「流暢性効果」があります。
- 単純接触効果:特定の対象(物、食べ物、音楽、人など)に繰り返し接すると、興味・関心を持つようになること
- 流暢性効果:見慣れている物や人などに好感を持ちやすいこと
つまり、子どもたちは「ちょっと知っている」対象の方が興味や好感を持ちやすいということ。そのきっかけとして手軽でおすすめなのは、「図鑑」です。植物や魚、乗り物、宇宙など、さまざまな図鑑を身近に置いてみて、子どもが何に興味を示すのか探りましょう。
バーチャルな知識×リアルな体験が脳の発達につながる
脳には、変化・成長していくことができる力=「可塑(かそ)性」が備わっていて、何かを突き詰めれば突き詰めるほど、その力は高まります。
そこで、子どもが図鑑で「バーチャルな知識」を得たら、次は「リアルな体験」をさせてあげましょう。電車に興味を持ったら駅に行ってみる、花に興味を持ったら公園で探してみる、などです。バーチャルな知識とリアルな体験が結びつくと、子どものワクワクは大きくなり、知ることの楽しさを感じます。そして、家に帰って図鑑を読み込んで新しい発見をして…、と知識・体験を繰り返してください。それが、脳の可塑性を高めてくれます。
子どもは親の鏡 まずは自分が楽しもう
人は何かを学ぶときは、基本は模倣、まねから始めます。脳には「ミラーニューロンシステム」という機能があり、行動だけでなく感情もまねをして学ぶと言われています。だから、子どもにたくさん図鑑を買い与えて、親はスマホばかり見ている…のではなく、親自身が図鑑を子どもと一緒に見て読んで、楽しみましょう。そして、一緒に博物館や水族館などでリアルな体験を満喫しましょう。子どもが物おじしてなかなか一歩を踏み出せないといったときは、まずは親自身がいろいろなことに取り組み、楽しんでいる様子を見せてあげてください。
一つのことに集中させてあげよう
「うちの子は恐竜にしか興味がなくて、何もかもが恐竜ばかり」といった場合は、それでOKです。脳には「汎化(はんか)」という、何か一つの能力が伸びると、連鎖的に直接は関係しない能力も伸びていく作用があります。「恐竜に没頭」することが、全体的な脳の発達につながり、知的好奇心を育んでくれるでしょう。
結果ではなく努力を褒めよう
子どもの自己肯定感を伸ばすためにも、褒めることは大切です。意識したいのは、「努力」を褒めること。「結果」や「才能」だけを褒めると、失敗を恐れてそれ以上の努力をしなくなる…ということも。努力することで、脳の「可塑性」も高まり、さまざまなものに知的好奇心を持つことができるようになります。
外で思いっきり体を動かす習慣を
一見、関係がないと思いがちですが、運動習慣は子どもの脳の「可塑性」を高めることにも関係しています。特に前述のように、幼児期は運動野の発達がピークを迎える時期。体全体を動かす運動習慣を付けてあげましょう。幼児であれば、外に出て遊ぶだけで十分です。
睡眠は大切!しっかりとって
睡眠はとても大切です。園児であれば、できれば10時間以上とりたいもの。記憶は、寝ることで固定されると言われています。知的好奇心を育むためにも、記憶は欠かせないものです。