モンテッソーリ教師が考える子どもの自己肯定感を育てる「褒め方」

モンテッソーリ教師が考える子どもの自己肯定感を育てる「褒め方」

「叱り方」にお悩みの人は多いと思いますが、「褒め方」を迷うことは少ないかもしれません。しかし、「褒める」ことは子どもの自信や価値観を作る大切なコミュニケーションです。今回はモンテッソーリ教師の私が考える「褒め方」を取り上げます。

皆さんは子どものときに褒められた経験を覚えていますか?いま思い出しているのは良い思い出でしょうか、それともちょっと不満な気持ちでしょうか。

褒められるという経験は、意外と大人になるまで覚えていて自分の価値観や自己肯定感に大きく影響を及ぼしているものだと思います。そう考えると、子どもを「褒める」大人の責任は重大かもしれません。さて、どんなときに、どのように声をかけるのが良いのでしょうか。

「褒める」より「共感」することの大事さ

「自分でできる」を目指し、子どもを手伝うのがモンテッソーリ・メソッドの考え方ですが、これは「褒める」という状況にも当てはめることができると思います。

本音を言えば、私は子どもをことさら褒める必要はないと思っています。むしろ大事なのは、子どもの気持ちに「共感する」こと。「褒める」とは、相手の優れているところを評価をするという意味ですから、子どもを褒めることは、すなわち大人が子どもに評価を下していることになります。

しかし、何かを達成したときのいちばんの褒め手は子ども自身です。何かを頑張って達成したとき、子どもはとてもうれしいと感じています。そんなときに子どもの気持ちを最大限に理解して喜び合うのが大人の立ち位置だと思います。

初めて逆上がりができて、子どもが喜んでいるのなら「できるようになってよかったね!」「頑張ったね」「うれしいね」と気持ちに寄り添ってみましょう。大人の率直な気持ちとして「すごいね」「かっこいいよ」と伝えるのも良いと思います。

公園で摘んだ花を部屋に飾ってくれたのなら、「お花を飾ると部屋がきれいになるね」「すてきなお花だね」と一緒に花を愛でるのも良いでしょう。大人が子どもと同じ目線で気持ちを共にすることは、子どもにとって単に「えらいね」と言われるよりもずっと心に残る良い経験だと思います。

そんな経験を重ねていくと、子どもの内面には次のようなことが起こります。

  • 自分を肯定し、自信を持てる
  • 自分独自の価値基準ができて、判断力が育つ
  • 自分の好みや得意なものを認識できる
  • 自分を好きになる、満足する

どれも自己を確立していくために、とても重要な要素です。幼児のうちは大人が子どもを励ましたり、勇気づけたりする必要がありますが、子どもの内面が育っていくに従って、大人のサポートは少しずつ減っていくはずです。いつか人生の中で苦しい時期がやってきても、自分自身を励ませる大人になっていくはずです。

逆を言えば、子ども自身の気持ちへの理解や共感がないとこういった能力が育ちにくいと言えます。

結果だけでなく過程を褒めて

誰しも褒められればうれしいものですが、大人目線で褒めるばかりでは子どもの心は育ちません。良かれと思って褒めているつもりが、子どもの達成感や満足感を大人がコントロールしている状態になってしまいます。

極端な例で説明すると、子どもが大人にとって都合の良い行動とした場合にだけ「いい子にしていてえらいね」と褒めていたり、良い点数をとったときだけ「すごいね」「えらいね」と褒めるなど、大人の満足を優先させた褒め方は良いとは言えません。

これではいくら子どもが頑張っても、結果が良くなければ認めてもらえないことになってしまいます。子どもなりに努力をしても、うまくいかないことがあるのかもしれません。結果だけでなく、過程にも目を向けて声をかけてください。

また、子どもの興味のある・なしに関わらず「すごいね」と褒めて、あれこれさせようとすることも子どもの価値観を歪めてしまいます。子どもが大してやりたくないことであっても、大人の「すごいね」が欲しくて行動するようになってしまいます。

パパやママが喜んでくれる、褒められたい、という動機づけは一見良さそうに見えて、長期的に見れば子どもの自己評価が上がりません。自己評価ができなければ、いつも大人に評価を求めてしまいます。また、大人の関心がなければやる気も起きません。

これを積み重ねた結果はお察しの通りですが、こんなことが考えられますね。

  • 自分に自信が持てない
  • 自分の価値基準が育たないので、誰かに判断を求める
  • 誰かに褒められることがモチベーションなので、自分自身の本当にやりたいこと・好きなことが見つからない

子どもが自分自身を好きになって、幸せな人生を送ることは大人に共通した願いだと思います。もしも「褒め方」に迷ったら、子ども自身が一番の褒め手になっているかという視点を持ってみてください。

ライター

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モンテッソーリ教育 堀田はるな

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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