今すぐやめて!「ほかの子と比べる」にひそむ3つの注意点
新年度が始まると同じ年頃の子ども達が集まる機会が増え、親にとってにわかに気になり始めるのが、わが子とほかの子との違いです。子どもには言わないようにしていても、自分がどうしても気になってしまったり、子どもにもちょっとは気にしてほしい!と思って口から出してしまったりすることも。
しかし、わが子とほかの子を比べることには、意外な落とし穴もあり、気をつけたいことが多いもの。今回は心理カウンセラーの立場から、ついつい子ども同士を比べてしまう親が気をつけたいことや、対処法をお伝えします。
「ついつい比べちゃう」にひそむ3つの注意点
わが子とほかの子を比べることにひそんでいるのは、どのような落とし穴だと思いますか? 見落としがちな注意点を挙げると以下のようなものがあります。
1.親の不安が子どもに伝わり、自己否定感が強い子どもに
親がわが子を、ほかの子と比べていると、口には出さなくても強い不安感の原因になることがあります。この不安は、わが子を信頼していない雰囲気として伝わってしまうので注意したいものです。
実際に、ほかの子と比べる言葉をわが子に聞かせていると、その空気はいっそう明らかなものとなります。自分よりもほかの子、ほかの兄弟姉妹のほうが「できる」と感じる子どもは「自分は何をやってもダメ」と思い込むようになり、自己否定感を強めてしまうでしょう。
2.親が子どもの頃と比べても利点はゼロ
きちんとした人、しっかりした人に多いのが、自分の子どもの頃とわが子を比べるタイプです。
「自分はもっと先を読んで行動できた」「勉強も手伝いもしっかりやった」という自覚があると、わが子を見て「どうして、何ごともしっかりできないの?」「私はそうじゃなかった」「もっとちゃんとできるでしょう」などと声をかけてしまいがちです。
しかし親が育った頃とは世の中の状況や動きが違いますし、そもそも親子で性格も違って当たり前。そのうえ子どもから見れば、親がしっかりできていた証拠はどこにもありません。残念ながら何の効果も発揮しないでしょう。
3.「みんな」と「よそはよそ」のダブルバインドになりがち
「みんなできているのに、あなただけできていない」「ほかの子はちゃんとやっている」というようなことを子どもに言いながら、子どもが何かを「みんな持っているから買って」と言ったときに「よそはよそ、うちはうち!」と答えたこと、ありませんか?
これぞ、親が陥りがちなダブルバインド(矛盾した理屈)です。ダブルバインドにはいくつものデメリットがあります。
子どもが親を信用できなくなり、また子ども自身の判断力も低下して思考が停止する、自信がもてない、自己主張ができない、相手の顔色を見る、友達を脅してコミュニケーションをとろうとするなど、挙げればキリがありません。
比べてしまう自分にほどこす対処法5つ
ほかの子とわが子とを比べていても、頭の中では「比較しないほうがよい」とわかっている親はたくさんいます。それでも無意識に比べていたり、頭のなかで常に比べていたりして落ち込んでしまうという人も多いでしょう。
ついつい比べてしまう…そんなときの対処法をお伝えします。
1.視野を広くもつ
わが子とほかの子に限らず、自分の親とほかの親、自分と他人などを比べてしまう人は、活動範囲が狭い可能性があります。家族と近所という狭いエリアしか移動しない、人づきあいできる相手が少ないといった状態では、いろいろな子どもの様子を見聞きする機会も少ないため、少ないサンプルばかりを気にしてしまいがちです。
人間関係を広げるか、本や新聞を読んで学ぶか、いずれにしても多くの事例を見て、人との会話を増やし、子育てに限らずたくさんの知識を求めて世界を広げましょう。世界は広く、比べるまでもないことが理解できてくる可能性が高いでしょう。
2.結果よりも過程に目を向ける
「いつまでに何ができた」「何の教科で何点が取れた」これらはすべて、結果に対する評価です。ただ結果だけでは計れないことも多いということを大人はよく知っているのではないでしょうか。
わが子が何をどれだけ頑張っていたのか、結果よりも過程に目を向ける努力が必要です。また結果をよくしたいと思うのなら、充実した過程が過ごせるようサポートするのは親の役割と言えるでしょう。
3.得手不得手が誰にでもあることを再認識する
当然のことですが、得手不得手は誰にでもあります。また不得手な状態から、練習や勉強によって得意が生まれることもよくあります。
要は、わが子が現時点でなにか不得手だったとしても、得意なこともあるはずですし、将来的に状況が変化する可能性もあるということです。そういった長期的な視点を持つことも、比べてしまう思考によい影響を与えます。
4.以前のわが子と比べる
ほかの子と比べてしまってモヤモヤしたときは、比べついでに、以前のわが子とも比べてみてはいかがでしょうか。以前はできなかったことができているケース、以前よりも点数が上がっているケース、さまざまな成長があるでしょう。もちろん、結果だけではなく過程にも目を向けてあげてください。以前はできなかった努力ができるようになった、というのもれっきとした成長です。
わが子が成長しているのが見えると、ほかの子と比べてどうだったとしても、成長スピードの違いだけなのだと思えるようになるかもしれません。
5.親自身が自信をもつ
子どもを比べる行動に、親自身が他の誰かから認められたい…そんな気持ちが隠されていませんか? 「できのよい子であってほしい」というのは、「自分が他の親と比べてできのよい親でありたい」ということなのかもしれません。
子育てに自信のない親ほど、わが子とほかの子を比べることで優位な点を探そうとする可能性があります。しかし誰かと比較することで子どもの自信を失わせ、それがまた親の自信喪失を招く悪循環になってしまうかも。親が視野を広げ、自信をもつことで、今まで比較していたことは「ささいなことだった」と思えるようになるでしょう。
比べてしまった時は顔に出さずに対処!
2つのものがあれば、比べてしまうのは人の自然な心理でもあります。大切なのは、わが子とほかの子を内心比べてしまったときも、顔や言葉に出さないこと。次に大切なのが、比べない自分になることです。
つい、比べてしまったら…「そんなこともあるよね!」と自分を受け入れられる親でいることも大切なのではないでしょうか。親自身が自己肯定感を高く保つことで、少しずつ、比べる親から比べない親に変化していけることでしょう。