生活指導教師おすすめ「夏休みの過ごし方」【4階建て理論】

生活指導教師おすすめ「夏休みの過ごし方」【4階建て理論】

大阪の公立小学校で教員(21年目)をしている松下隼司です。小5の息子と、年少の娘の父親でもあります。小学校に通うお子さんにとっては、長い夏休みが始まりますね。小学生は夏休みは登校しないですが、基本、私は毎日出勤しています。また、私の家庭は共働きで、妻も仕事をしています。特に夏休みは、親御さんの目が行き届きにくいこともあり、何かと心配事が多いかと思います。

「毎日、長い時間、1人で留守番できるかな~」
「変な人が家に来たら、ドアの鍵を開けてしまわないかな~」
「外に遊びに行ったとき、交通事故に遭わないかな~」
「不審者に遭わないかな~」
「家で、スマホばっかりさわっていないかな~」
「ユーチューブばっかり見てないかな~」
「ゲームばっかりしてないかな~」
「友達同士で、勝手に繁華街に行かないかな~」
「ちゃんと家で勉強してるかな~」
「言っておいたお手伝いをしてくれているかな~」
などなど、心配しだしたら本当にキリがありません…。

私は、校内の生活指導担当を10年以上やっています。そこで、お子さんが事故・事件なしで楽しく有意義な夏休みを過ごせる心構え(「夏休みの過ごし方」4階建て理論)を紹介します。お子さんや親御さんのお役に少しでもたてれば幸いです。

「夏休みの過ごし方」の優先順位 

お子さんにとっての長い夏休みを、どのように過ごしてもらいたいかを、あれこれもさみだれ式に言ってしまうと、逆効果になってしまうかもしれません。

私は、以前、失敗して、息子に
「分かってるし!」
「うるさいな~!」
と、言われたことがあります…。

親として子どもに、「夏休みをどう過ごしてもらいたいのか」を伝える内容と順番を整理していませんでした。何を1番大切にしてほしいのか、そしてどんなことにチャレンジしてもらいたいのか、整理して、優先順位の高いものから分かりやすく伝える工夫が足りていませんでした。

次は、私の親としての失敗経験と、小学校教師としての経験を元につくった「夏休みの過ごし方」4階建て理論です。

夏休みの過ごし方を、4階建ての家に例えます。一番大切なのは、土台となる1階です。この土台がおろそかになると、安定せずに崩壊してしまいます。逆に土台がしっかりしていれば、どんどん上の階へと積み重ねることができます。

夏休みの過ごし方で、自分の子ども、学校の子どもたちに、何を一番、大切にしてほしいかを絞って考えてみました。
それは、安全でした。
「子どもの安全」があってこその楽しい夏休みです。お子さんが事故や事件に遭ってしまうと、お子さんにとっても親御さんにとっても楽しい夏休みを送ることができません。
 
「安全な夏休み」の次に、どんなことをお子さんに伝えたいですか?
私は、つい、
「しっかり勉強しぃや!」
「いっぱい時間あるから、いっぱいお手伝いしてや!」
と伝えたくなります…。でも、よく考えみると、安全の次は、健康でした。風邪をひいてしまったら楽しい夏休みを過ごせません。昼夜逆転の不規則な生活リズムで過ごしてしまうと、2学期の学校生活にも悪影響です。

では、「安全で健康な夏休み」の次は、どんなことをお子さんに伝えたいですか? 勉強やお手伝いを親がいなくても自分でできるようになってもらいたい親心は、ものすごく分かります。

でも、子ども心はどうでしょうか?お子さんは「どんなふうに夏休みを過ごしたい」でしょうか?「夏休みにしたいことは何」でしょうか?多くの子どもたちは、「楽しい夏休み」を何よりも望んでいます。
友達と遊びたいし、ゲームをしたいし、テレビやユーチューブを観たいし、山や海やプールに行きたいし、のんびりしたいし…。
もちろん、安全・健康を冒してまで楽しさを求めるのは絶対にだめです。

でも、楽しさあってのお手伝い(自立)だと子ども目線で思います。(親目線だと、つい逆転してしまうのですが…。)特に日本は、休日の休み方やリフレッシュの仕方が外国の人たちに比べると上手くないようです。(私も休日や帰宅後もつい仕事をしてしまいます。家でごろごろしている息子を見ているとイライラしてしまいます…。)「休むときは、しっかり休む」という気持ちをもつのも大切かと思います。

1階・・・「安全」な夏休みにするために

親御さんがお仕事で、お子さんが1人で過ごす時間が長いと、一番心配なのがお子さんの「安全」かと思います。お子さんの「安全」をもう少し具体的に考えると、お子さんが「事件」や「事故」に遭わないことです。

「事件に遭わない」ために、私の家庭の場合は、次の2つを息子に伝えています。

(1)誰がインターホンを鳴らしても、絶対に返事をしない。
親が家にいるときは、配達のインターホンが鳴ったときは応えてもいいですが、親がいないときは怖いです。もしかしたら、配達を装っているかもしれないからです。
不審者が配達を装ってインターホンを鳴らしたときに、子どもが
「今、お母さん(お父さん)、いません。」
と答えてしまったら、不審者の思うつぼです。何とか子どもを言いくるめてドアの鍵を開けさせようとするはずです。だから、一切反応しないようにするのが安全かと思います。

(2)遊びから帰って家の鍵を開ける前に、まわりに人がいないのを確認する。
家のドアを開けるときだけでなく、エレベーターに乗るときも、周りの状況を確認することが大切です。不審者がお子さんについてきているかもしれないからです。
お子さんが家の鍵を開けて、家に入るのを見計らって、不審者が家に侵入する危険があります。これは、お子さんが将来、一人暮らしをするときにも大切な防犯意識です。もし、近くに不審に思う人があったら、家の鍵を絶対に開けないことを伝えることをおすすめします。

そして、実際に練習してみることもおすすめします。(親御さんが不審者役で、家の外からインターホンを鳴らしてみたり、お子さんが鍵を開けるときについてきたりして、お子さんが上手に対応できるように)

2階・・・「健康」な夏休みにするために

親として、教師として、お子さんの健康な夏休みの過ごし方で一番、気がかりなのが2学期への影響です。夏休みだからといって、ついつい夜更かしが続き、朝起きる時刻が遅くなってしまうと、2学期が始まったときに学校に行くのがしんどくなってしまいます。
頑張って、学校に行けたとしても、しんどいから授業に集中できません。 また、しんどいから、ちょっとしたことでもイライラしてしまい友達とのトラブルが多くなってしまうかもしれません。
だから、学校のある日と同じ時刻にお子さんを寝かせる・起きるようにする(早寝・早起き)ことがとても大切です。
私の家庭では、子どもたちを毎晩8時半に寝かせています。
小5の息子(11歳)も、午後8時半に毎晩、寝かせています。夏休みや冬休みだけでなく、普段の土日などの休日もです。「小学5年生で、夜8時半に寝るって早くない?」と思われるかもしれません。でも、外国と比べると、日本は世界で1番、子どもも大人も睡眠時間が短いそうです。小学生の子どもは10時間の睡眠が必要だそうです。
(息子は朝の5時半~6時ごろに起きて、漫画を読んだり、ゲームをしたり、テレビを観たりして、好きなように時間を過しています)

睡眠偏差値 調査結果2023
https://brain-sleep.com/service/sleepdeviationvalue/research2023/

また、睡眠に関わって、ゲームやスマホの使用時間の上限も決めておくことをおすすめします。ゲームやスマホは、子どもにとってテレビよりも依存性が高いと感じます。私の息子にはまだスマホを持たせていませんが、ゲーム機の使用は1日2時間までにしています。

3階・・・「楽しい」夏休みにするために

子どもと一緒に過ごせる時間は、カウントダウンです…。親御さんの中には、もしかしたら「もっと自分の時間がほしい」と思われている方もおられるかもしれません。でも、子ども一緒に過せる時間は年々、短くなっていきます。特に、私の場合、息子が小学生の中学年(3・4年生)になると一気に激減しました。平日の下校後や土日、ほとんど家にいません。友達と遊んだり、ソフトボールの練習をしたりしています。中学生になると、もっともっと一緒に過せる時間は減るかと思います。ですので、今のうちにお子さんとできる限り、楽しい夏の思い出をつくられるのをおすすめします。

4階・・・「自立」につながる夏休みにするために

やっとお待ちかねの「自立」です。自立とは、1人の力で判断し独立して生きることです。つまり、大人です。その自立(大人になるため)の練習の1つとして、お手伝いがあります。では、お手伝いといったら、どんなお手伝いがあるでしょうか? そして、そのお手伝いは何歳ぐらいからできるでしょうか?(もちろん、一人ひとりの発達段階で違います。)
 
次の資料は、お手伝いの内容と、適正年齢がとても整理されています。
  ↓
年齢別お手伝い実践一覧表
https://www.misawa.co.jp/kosodate/report/pdf/nenreibetsu.pdf
※出典:ミサワホーム/キッズデザイン製品開発支援事業(経済産業省)による子育て住宅調査より

この表では、お手伝いを大きく5種類(「料理」・「食事の準備・片付け」・「収納・ごみ捨て」・「掃除」・「洗濯」)に分けています。さらに、各種類ごとに具体的にお手伝いの内容と適正年齢が示されています。例えば、「掃除」の中に、「床や窓の拭き掃除」があります。これは、6歳の50%の子どもが可能です。「食後の準備・片付け」の中に、「コップ洗いや、すすぎなどの簡単な食器洗い」があります。これは、8歳の50%の子どもが可能です。
このような形で、「料理」のお手伝いが11個、「食事の準備・片付け」のお手伝いが7個、「収納・ごみ捨て」のお手伝いが5個、「掃除」のお手伝いが6個、「洗濯」のお手伝いが6個、合計35個のお手伝いが適正年齢と一緒に載っています。お子さんとご家庭に合わせてご活用ください。
お子さんに見せながら、一緒にどんなお手伝いをやってみたいか、やれそうかなど考えなから決めてみてください。

小学校の高学年では、林間・臨海学校でカレーライスをつくる学校が多いです。そこで、カレーライスをお子さんと作ってみるのもいいかと思います。
また、家庭科の調理実習もコロナ禍の制限が解除され復活してきています。野菜炒めやサラダづくり、お味噌汁づくりをしてみるのもいいですね。お子さんとの楽しい夏の思い出づくりにもなるはずです。

「夏休みの過ごし方」4階建て表の使い方

上記1階〜4階の内容をお子さんに口で言っただけでは、あっという間に忘れてしまいます…。毎日、同じことを繰り返し言わないといけない日々が続いてしまいます。そうなってしまっては、お子さんも親御さんも辛いです。口で言うだけでなく、視覚的に見て分かるように残すことで、お子さんの抜け落ちを防ぎます。下の表は、「夏休みの過ごし方」4階建て理論を、お子さん用にしたものです。例えば、「安全(  )」は、お子さんが安全に夏休みを過ごせるように気をつけてほしいことを、お子さんと一緒に考えながら書き込みます。


夏休みの過ごし方 4階建て理論 (お子さんに示す編)
書き込んだら、お子さんの目に触れやすいところに貼っておいてください。もしお子さんにスマホを持たせておられるようでしたら、写真に撮って待ち受け画面に設定するのもいいかもしれません。
お子さんが見ること間違いありません(嫌がられるかもしれませんが、これも愛情です)。


ライター

小学校の先生松下 隼司の画像

小学校の先生 松下 隼司

大阪の公立小学校教員、2児の父親/令和4年度文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞。教科書編集委員/Voicyパーソナリティ。著書に絵本『せんせいって』『ぼく、わたしのトリセツ』、教育書『むずかしい空気をかえる 楽級経営』『教師のしくじり大全』

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