主体性を育てるには?モンテ教師が「これだけはやってほしい」と思うこと
モンテッソーリ・メソッドでは、どんなに小さな子どもでも「自分のことは自分で」が基本スタンス。「自分でできた!」という経験によって自信をつけた子どもたちは、どんどん自立していきます。今回は「荷物を自分で持つこと」について考えます。
主体性を育てる関わり方とは?
私は2歳児クラスの担任をしていますので、日頃からよく子どもの身支度を手伝います。心がけているのは代わりにやってあげるのではなくて、子どもが自分でできるように手伝うこと。
靴をうまく履けない子どもがいても、教師が履かせるようなことはしません。そのかわり履き口に手を添えて足を入れやすくしたり、かかと部分を手で引っ張りながら足を前に出すやり方を教えるなど動作をサポートします。
最初の何回かは手を貸しますが、子どもが要領を得たらもう手出しをしません。「ひとりでやってみてね!」と見守っているだけです。
家庭で全く同じように接するのは大変だと思いますが、「せめてこれだけは」と私がお願いしているのは「自分の荷物を自分で持つこと」です。
ごく当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、2~3歳の子どもの話であれば大人が代わりに持ってあげることも多いのではないでしょうか。
普段、家を出るときや保育園からの帰り道、通園カバンを持っているのは誰ですか?休日に使うリュックの場合はどうでしょう?
いつも持っているカバンは忘れなくなる
子どもは大人よりも感覚刺激(「匂い」、「味」、「触り心地」、「音」など)に敏感なので、身体で感じたことを直感的に記憶します。
例えば、自分のタオルや洋服はいつもの「匂い」や「触り心地」がするので安心します。カバンもそれと同じで、いつも持っていると「感触」を覚えます。カバンの感触がなければ「あ、忘れてきた!」と自分で気がつくので、忘れものが少なくなります。
カバンの定位置があるといい
家の中にカバンの定位置をつくりましょう。フックもいいですし、専用のかごを用意してもOKです。「ここがカバンのおうちだよ」と子どもに伝えて、自分でカバンを置いてもらいましょう。出かけるときには自分で取りにいくようにします。
リュックだって、ひとりで背負えるよ!
休日のカバンはリュックという家庭が多いと思います。リュックを背負うときは後ろを見ない状態でストラップに手を通しますから、幼児にとってはなかなか難しい動きです。
はじめは大人の助けが必要かもしれませんが、そのうち1人でできるようになります。これができるともう「お兄さん」「お姉さん」になった気分。「できたね!」と言われてニコニコ顔です。子どもだって1人前扱いされたいんです。
自分で持ち物を管理しよう
出かけるときには自分で荷物を入れるようにします。休日に家からおもちゃを持って出かけるなら「リュックに入るだけにしようね」と声をかけます。欲張ってあれこれ入れればそれだけ重くなりますから、必然的に持ちすぎるということがなくなります。
また散歩の途中で拾った石や木の枝を持ち帰るときのために、ビニール袋は常に入れておいたほうがいいかもしれません。
帰ってきたら、荷物を出すのも自分で。拾ったものを入れっぱなしにしないためにも、初めのうちは「今日は何を拾ったの?見せて!」と楽しく出せるような言葉がけをするといいかもしれません。「臭くなるから、入れっぱなしにしないで」のようにネガティブな言い方は避けましょう。
「自分で持つこと」で子どもが学ぶもの
荷物を自分で持ったり、管理することを通して子どもが学ぶのは「人任せにしない」という主体性です。
自分で荷物を管理している子どもが忘れ物をしたときは「自分のせい」なので「残念だったけど次は気をつけよう」と発想できますが、大人にいつも持ってもらっている子は「お父さん(お母さん)が持ってくるのを忘れた」という発想になりがちです。(大人が「ごめんね」と謝ろうものなら、子どもはさらに勘違いをしますのでやめておきましょう)
カバンはひとつの例にすぎませんが、毎日の小さな積み重ねが成長の土台を作ります。ぜひ、気に留めておきたいですね。
大人ができるお手伝い
「子どもが自分でできるように」、大人が手伝うというのがモンテッソーリ・メソッドの基本スタンスです。カバンの場合はどうお手伝いしたらよいか、考えてみてください。
- 子どもがひとりで扱いやすいカバンを、子どもと一緒に選ぶ
- カバンの置き場所を決めて、子どもと一緒に確認する
- カバンを忘れているときは、「なにか忘れていないかな?確認してね」と声をかける
- 忘れたときは「次は忘れないようにしようね」と声をかける(怒らないで)
- 楽しくなるようなポジティブな言葉がけをする
忘れずに持っているときは「いいカバン持ってるね、かっこいいねえ」など楽しい会話ができるといいですね!