更新 :
わが子が仲間はずれに…子どもの成長を妨げる親のNG言動
10月のNG言動は
「どうして仲間はずれにされたの?」
「あなたが悪いことをしたんじゃないの?」
「ママがお友達に話してあげる」
こんにちは、保育士のみやです。
朝からすっきりと晴れて、空気が澄み始めた今日この頃。日中は真夏のように暑い日もありますが、こんな時こそ外遊びに大喜びで飛び出す子どもたちです。
そして、年長(5-6歳児)さんは、時期を遅らせて開催することが決定した運動会の練習に励んでいます。徒競走や親子競技など、例年に比べて種目は減りましたが、『家族に見てもらえる』という期待感にあふれています。中でも、チームワークが必要なリレーの練習では、毎回勝利チームが変わるため、子どもたちのやる気もヒートアップしています。
2歳児、3歳児クラスの友達関係は
さて、今月は「お友達とのつきあい方」についてお話しましょう。
私はクラス担任ではなく、フリー保育士という立場で勤務していますので、すべてのクラスのお子さんにかかわる機会があります。
先日、2歳児のクラスで子どもたちと遊んでいたときのこと。UちゃんがYちゃんに「ねえ、一緒にブロックしよう」と誘っていました。そこへ、Rちゃんが近づいていったところ、Uちゃんが「今はUちゃんとYちゃんで遊ぶから、Rちゃんは遊べないよ」と告げたのです。Rちゃんはその場を離れ、別のお友だちと遊び始めました。
別の日、3歳児クラスではMちゃんが「家に帰りたい」と大泣きしています。落ち着いたところを見計らって理由を尋ねると、「だって、仲良しのAちゃんがお休みしているから遊べない」と言うのです。その日は、幸い気持ちを切り替えて、ほかのお友だちと遊び始めました。
5歳児クラスの友達関係は
さらに別の日のこと。5歳児のクラスでは、男の子たちがブロックで武器を作り、戦いごっこをしていました。その輪の中へ、粘土遊びを終えたTくんがするりと入ったのです。すると、戦いごっこをしていた男の子たちは、まるでTくんの存在に気付いていないかのように、場所を変えて声もかけずに遊びを続けていました。Tくんはまったく相手にしてもらえないことに気付き、別の遊びをしていたグループへ入っていきました。
距離の取り方や相手との相性を学ぶ時期
このような場面を保護者の方が見てしまったら、「仲間はずれはよくない」「みんなで仲良く遊んでほしい」などと感じることでしょう。また、「保育士が間を取りもつべきだ」「大人が仲良くさせた方がいい」などの意見もあるでしょう。
しかし、このお友達との距離の取り方や相手との相性を感じる力などは、幼児期から学んでいきます。特に、5歳児さんになるとグループが細分化され、いつも同じ仲間で遊ぶようになります。2歳児さんのように言葉で拒否を示すことは少ないのですが、いわば無視してほかの子を交えないといった場面も見られるようになります。
大人が介入しないからこそ育まれること
そんなとき、保育士はトラブルに発展しないよう見守りますが、過剰に関わることは控えています。子どもたちは誰と遊びたいか、何をしたいかという要求をストレートに表します。同じ方向を向いている子同士が仲良くなることは当たり前のことです。
そこへ、保育士が「みんなで仲良く遊びましょう」「仲間はずれはいけないよ」と声掛けすることはよい方法ではありません。子どもの「こうしたい」という気持ちを曲げることになるからです。
また、仲間はずれにされた子どもを無理に輪に加わらせようとしても、問題が解決するわけではありません。子どもたちの関係性は、大人の見えない時間でも育まれていますし、大人が介入できることではないからです。
仲間はずれをされた子に対しては、気持ちを落ち着かせるよう声がけをします。別の遊びに誘うことで、他のお友達と相性がよいことに気付くこともあります。思いがけず、楽しい遊びに発展するかもしれません。
目の前のできごとに心揺さぶられず、そっと見守ってください
就学後は、大人の目の届かない場面が格段に増えてきます。さまざまな園から、子どもたちが入学し、ゼロから友達関係を形成していきます。
親は、わが子が友達と仲良く過ごせていないと感じると、つい「どうして仲間はずれにされたの?」「あなたが悪いことをしたんじゃないの?」など、目の前のできごとに心を揺さぶられてしまいがち。「ママがお友達に話してあげる」と言いたくなることもあるかもしれません。でも、お子さんと一緒に「じゃあ、どうしたらいいか一緒に考えてみよう」「イヤな気持ちになったね。別のお友達と遊ぶことも楽しいと思うな」と、そっと見守っていただけるとよいと思います。
保護者のみなさんも子どもの頃を思い出してください。「最初は緊張して、誰とも話ができなかったな」「知っている子同士でグループができていて、どうしようかと不安だったわ」など、友達関係で悩んだことがあるでしょう。
そうした時、大人が介入するのではなく、自分で次の方法を考えたり、不安な気持ちを乗り越えていく力を身につけるよう寄り添っていくことが大切です。
それでも、モヤモヤとした気持ちがある時には、ぜひ保育士に相談してみてください。お子さんが自然に別の方向を向けるよう、ともに見守っていけると思います。
みや先生プロフィール
大学卒業後、障がい者関係の仕事を経て、療育センターに臨床心理士として8年間勤務。14年前からは私立保育園の理事及び保育士として勤務しています。今年度からはフリーの保育士という立場で全学年をサポート。
子ども達とかかわる中で大切にしているのは、「ひとりひとりの行動や言葉の中にたくさんの側面を見つける」こと。それらを保護者と保育者で共有していくことが子ども達の心身の健やかな発達に繋がると考えています。
プライベートでは3人の女子中高生の母。ワーママとしての経験や思いも保護者との関係づくりに役立っています。