「バカ」と言うと「バカ」になる。親の言葉は一生もの
子育てに自信のあるママなんて、どこにもいない!家庭教師・塾講師、東大生・早大生を育てた母であり、子育てセミナーを主催する楠本佳子さんに教わる連載コラム「能力をのばす子育て」。3回目は「親の言葉は一生もの」。
[能力をのばす子育て3]
子どもが小さい時から「バカ」と言うのが口癖のおかあさん
小さい頃から子どもが失敗したり、お母さんの言う通りにできなかったら「バカじゃないの」と言っているお母さんがいました。そのお母さんは本気で子どもをバカと思っていたわけでもなく、小学生の頃から他の子ども以上に勉強させて良い大学に入れようとしていました。
ただ「バカじゃないの」って言うのが口癖になっていたのです。お母さんは、何の気なしに言っていたのかもしれません。でもその子どもは一体どうなるのだろうと思っていました。
毎日「バカ」と言われ続けた子どもはどう感じているのでしょうか。お母さんが毎日バカと言うのだから、自分は本当にバカじゃないかと、無意識に思っていくのかもしれません。
その子がほんとにバカだったかと言うと、全く反対で非常に優秀な子で性格もやさしい子どもだったのです。しかし、それから何年もたち、高校受験する時、その子はこんな風に言ったそうです。「どうせ俺はバカなんだから、入れるならどこでもいいだろう。」
努力しようとしない、上を目指そうとしない、非常に無気力な子になってしまいました。親が長年かけてつぶしてしまったのです。とてもかわいそうでなりません。
こわいお母さんの口癖
「バカ」とは言わなくても「どうして〇〇できないの! 」と言った言葉をよく子どもに言ってしまうお母さんは多いのではないでしょうか。
大人には簡単なことでも子どもにとって難しいことがたくさんあります。それなのにできないことを頭ごなしに叱ると、子どもは自分が何もできない人間だと思ってしまいます。
もしお母さんに、今、物理の問題の解き方を教えて、「他の問題を解いてください」と言ったら皆さん解けるでしょうか?解けない人に「どうしてできないの!」と頭ごなしに怒ったらどう思うでしょうか。
大人の感覚と子どもの感覚
子どもがまだ生まれてきてから数年しか経っていないのです。知らないこともたくさんあるし、できないこともたくさんあります。理解するのも時間がかかるでしょう。
知識の多い経験豊富な大人の感覚でわかるのと、まだまだ経験の浅い知識の乏しい子どもの感覚でわかるのは違います。生きてきた年数が違うのです。当然のことなのになぜかすぐ忘れてしまいます。
それを考えて言葉を選んでくださいね。「どうしてできないの」と親に言われたら、どうしてできないのか聞きたいのは子ども、どうやったらできるようになるのか知りたいのは子どもの方なのです。
少し忍耐力がいるかもしれません。でも生まれてきてから何年なのか、どんな経験をしてきたのか考えて、やさしく丁寧に教えてあげてくださいね。
30代でも40代なった大人でも、実の親に「バカ」だとか「ブス」と言われて育ったと話される方が何人もいらっしゃいます。子どもの頃に何気なく言った言葉は、大人になってからも、一生、根強く頭の中に残っています。
バカだと言われたら自分はバカだと思い、ブスだと言われたらコンプレックスをもったまま生きています。他人がなんといっても、親の言葉はしこりのよう残っていきます。子どもは親が言ったとおりに育っていくのです。
教えてくれたのは
- 楠本佳子さん
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「こどもみらい塾(岡山)」塾長。自身の子育てや教育経験を活かし、ママを対象としたセミナーや個別相談も行っている。著作に「12歳までに勉強ぐせをつけるお母さんの習慣」