モンテッソーリの国旗の活動を通して、子どもの世界はどう広がる?

毎日1枚、国旗の塗り絵に取り組む子どもたち

5歳児の活動の様子。少し難しいデザインの国旗を自ら選んでいます。

秋の運動会が近づくと、毎年子どもたちは国旗の塗り絵に取り組みます。先生が用意した白い国旗の中から、それぞれ気に入ったデザインの国旗を選んでいます。2歳児は日本やフランス、スウェーデン、カタールなど、比較的シンプルな国旗から始め、成長に従ってクロアチアやギリシャなど、より複雑なデザインの国旗に挑戦するようになります。

2歳児むけに作った色見本。クレヨンで色塗りされています。

次に、国旗の本や見本を見ながら色を確認し、必要な色鉛筆を用意します。モンテッソーリの教室には鉛筆立てに色鉛筆が用意されており、子どもが自分で取りに行って使います。

色別の鉛筆立てが並んで置かれています。必要な分だけ、取りに行って使うシステムです。

塗り残しがないように隅々まで丁寧に塗り、細かいデザインは色を正確に塗り分けることに集中しています。広い面をしっかり塗ることは、子どもにとって難しく時間のかかる作業ですが、自分の手を使って国旗を塗ることで、国旗に対する理解や感覚を深めていきます。まさに、五感を通して世界にアクセスする幼児期ならではの学びですね。

細かい図案を色塗りしている4歳児の様子。

「このかっこいい国旗の国は○○っていう名前だよ!」 「きれいに塗れたでしょ!見て見て!」

幼児期の子どもたちは五感を通じて物事を学びます。色をよく見て、手を動かして色を塗るという行為を通して国旗に親しみ、いつの間にか多くの国旗や国名を覚えていくのです。私たちは普段、国旗をよく目にする一方で、その意味を深く考えることは少ないかもしれません。しかし、国旗はデザインの基本でもあり、その色や形には多くの意味が込められているのです。ひとつひとつの国旗をじっくり眺めることは子どもにとって初めての経験です。その配色や形を通じて、美的感覚を養うことにもつながっているのです。

さらに、国旗に使われている色や形には、それぞれ意味があることを学んでいきます。たとえば、日本の国旗は赤と白の2色で、赤い円形は日の出を表しているとされています(諸説あります)。また、赤は博愛や活力、白は神聖や純潔を意味すると言われています。赤と白は日本の伝統的な色の組み合わせで、お祝いの場にもよく使われるため、日本人にとってはおめでたい色でもあります。

ひとつの国旗を理解すると、他の国旗にも興味が広がります。「この形にはどんな意味があるの?」というように、次々と疑問が湧いてくるのです。たとえば、フランスの国旗は青・白・赤で、それぞれ「自由」「平等」「博愛」を表しています。フランスの国旗を塗った子は、街の中でこの3色を見かけた時「あ、フランスの色だ!」と気づくようになります。

塗り終わった国旗は、先生に頼んで教室に吊るした紐に飾ってもらいます。子どもたちは自分の作品と友達の作品をよく眺めています。

「この国旗は誰が塗ったの?かっこいいね、僕も塗ってみたいな」

興味は塗り絵から他の活動にも広がる

一度興味を持ち始めると、活動は塗り絵だけに留まりません。教室にはパズルや世界地図など、国旗に興味を持った子どもが次に楽しめそうな活動が用意されています。これを機に国旗を知る楽しさにハマった子は、おうちの壁に世界地図(国旗が同時に掲載されているものだそうです)を貼って、たくさんの国旗と国名を覚えました。

地図の左右をピッタリ合わせると、裏側に国旗ができるカード。どちらがたくさん見つけられるか、先生と競争!

運動会の会場を彩る、国旗の塗り絵作品の数々

そして後日、たくさんの国旗の塗り絵は運動会の会場である体育館の飾り付けとして使われ、運動会の雰囲気を盛り上げる賑やかな装飾となりました。

運動会開催前の飾り付けの様子。

「これ僕が塗ったやつだよ〜」「こっちも!」 子どもはよく見ていて、よく気が付きます。

運動会が終わった後、教室で運動会の絵を描いた子どもたち。かけっこをしている場面、つな引きや組体操。それぞれの楽しかった思い出を絵にしたためました。人物の描写は年齢相応ですが、背景に描かれた国旗だけは驚くほど精密に描き込まれていました。

3〜5歳の子どもたちが「描く場所が小さいから簡単なのしか描けないねえ」と言いつつ、日本やドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、ノルウェー、バングラディシュ・・・など記憶を頼りにどんどん描き進めていったのです。

まったく、子どもたちの記憶力にはいつも驚かされます。自分の経験を通して知った事柄は、なかなか忘れないものですよね。

ライター

モンテッソーリ教育堀田はるなの画像

モンテッソーリ教育 堀田はるな

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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