小学館『幼稚園』10・11月号の付録は「おやこで!AEDたいけんセット」
小学館『幼稚園』10・11月号の付録は「おやこで!AEDたいけんセット」 いざという時に慌てず迷わず行動するための予行訓練を気軽に AED付録で“遊びながら学ぶ”命の救い方
2024年8月30日(金)に小学館から発売された雑誌『幼稚園』9・10月号では、市街地などに設置されているAEDのメーカー・日本光電とコラボ!付録は毎回定評のある本物さながらのクオリティで、普段なかなか触れることのできないAEDの仕組みを遊びながら体験することができます。
未就学児に限らず、子どもから大人まで、いざという時に大切な命を救う疑似体験ができる今回の付録は、まさに知育の真骨頂。医療機器だからこそ間違いなく使えるよう、付録の細かいギミックにもこだわったという日本光電の小関晶子さんと小山友梨乃さん、『幼稚園』編集部の今村祐太さんにお話を聞きました。
「AEDの使用率は4.26%で決して多いとはいえません」(小関さん)
―――2004年から一般市民が使用できる形で公共施設などに設置されるようになったAEDですが、実はあまり活用されていないというのは本当ですか?
小関さん 総務省消防庁から今年発表されたデータによりますと、一般市民が目撃した心停止は2万8834人もありますが、そのうちでAEDを使用した一般市民は1229人にとどまっています。その使用率は4.26%で、決して多いとはいえません。
普段過ごすエリアで、どこにAEDが設置されているかをご存知の方もかなり少ないのではないでしょうか。それでも、2004年からの累計で、AEDによって救命された人は8000人にものぼります。
「AEDってさわったことがないよね、というところからスタート」(今村さん)
―――AEDを付録で紹介しようと思った理由を教えてください
今村さん もともと『幼稚園』の付録は子どもたちが触りたくてもなかなか触れないものをテーマにしているので、「AEDって触ったことがないよね」というところからスタートしました。記事をつくっているうちに、やっぱり「知ってもらう」というのが一番大事なのかなと感じるようになりました。
というのも、僕自身もこの企画を進め始めてから、通勤途中に「こんなところにAED設置マークがあったんだ」と気付き、目に入ってくるようになりまして。子どもたちにもそういう体験をしてもらえるのではないかと思っています。
「動作として重要な部分を削らず、しっかりと伝わるように」(今村さん)
―――AEDの付録をつくるにあたり、特にこだわったポイントを教えてください
小関さん 本当にびっくりしたのは、この付録、写真ではないんですよね。全てイラストで、プロのイラストレーターさんの技をすごく感じました。当社の技術部門やデザイン部門も「こんなにそっくりなんだ」と驚いていて。デザイン部が特に驚いていたのが、AEDの丸みですね。医療機器の怖さを和らげる目的で、当社のAEDはちょっと丸みを帯びたデザインにしているんですが、そのこだわりの曲線を紙で再現するのはとても難しいと聞いていたので、再現性の高さに驚きました。
今村さん イラストレーターさんも、今回は特に筆が乗っていると感じました。
あと日本光電さんから、AEDのパッドを人体に貼る際に、必ずシートを剥がす必要があり、ここがとても重要と聞いたので、その動作が再現できるように工夫しました。音声ユニットから流れる音声も、「パッドを青いシートから剥がして」という部分を入れ込んでいます。
小関さん 本来のAEDの音声はとても丁寧にもっと長く説明が流れるんです。付録では小さいお子さんの集中力が続く長さとして、最初は15秒とご提案いただいたんですが、それでは重要な部分も削らなくてはいけなくなってしまうので、30秒に伸ばしていただきました。
今村さん 30秒の中で動作として重要な部分を削らず、しっかりと伝わるように編集しました。胸骨圧迫のリズムを刻む「プープー」という音も少し長めに入れた方が良いかもしれない、など試行錯誤しましたね。
小関さん あとはスピーカーの仕様ですね。当社のAEDは蓋を開けたら自動で音声が流れるようになっているのですが、付録ではそういうわけにもいかないので、小さなボタンを押すと音声が流れる仕組みにしました。当社の技術部門と相談して、本物のAEDのスピーカーの部分にボタンを配置してもらいました。ここから音声が流れるんだよ、というイメージが付きやすくなっていると思います。
「まずはAEDからガイドの音声が流れるんだよ、ということを知ってほしい」(小関さん)
―――AEDの付録でどのように遊んでもらいたいですか?
小関さん まずはAEDからガイドの音声が流れるんだよ、ということを知っていただきたいですね。AEDは「小さなお医者さん」と言われるように、必要なことを全て音声で指示してくれます。今までAEDのおもちゃはいろいろありましたが、音が出るというのは珍しいんです。付録には実際の音声データを提供させていただきましたので、どんな音声ガイドが流れるかを聞きながら、それに従ってパッドを貼るという体験をパパ・ママと一緒にしてほしいと思います。
最近は運転免許の教習所や保健体育の授業などでAEDに触れる機会もあるのですが、そういう制度がスタートする前に免許を取ったり、学校を卒業したりした世代の方は実際にAEDの音声を聞く機会もないと思うので、大人の方にも繰り返し聞いてもらえるのが、この付録ならではなのかなと思っています。
小山さん 『幼稚園』の記事の中でも実際に人が倒れた時に、周りの方と協力して救助するシーンが描かれているのですが、やはり一人で救助するのではないというところがとても重要ポイントだと思います。ですからこの付録も、お子さん一人で遊ぶというよりも、「パパ・ママと協力してAEDを使って救助する」ということを体験していただきたいなと思います。
今村さん 子どもが周囲の人の異常…「何か変だな」と察知する力がついてくるのは4歳くらいなんだそうです。周りの人が倒れるような場面に遭遇した時、子どもでなくても怖いと思うんですが、そこで少し勇気を出せるというか、後押しできるような記事構成を意識しました。
付録の音声は緊張感があるというか、緊急性の高い音に聞こえるかなと思うんですが、それを普段から聞き慣れた音にしておくことで、少しでも落ち着いて行動をしてもらえるきっかけになったらと思います。「勉強」というより、子どもたちがよくやるお医者さんごっこの一歩先、みたいな感覚で遊びながらAEDに親しんでもらえるとうれしいですね。
「命の大切さをご家族で話し合うきっかけにしていただければ」(小関さん)
―――遊びを通して、とても大切なものを学べると強く感じられる付録ですね
小関さん まずは楽しく遊びながらAEDの中身を知ってもらう。そして実際に緊急事態に遭遇したら、まずAEDを取ってくる、または周りの人に持ってきてもらう。誰かと一緒に、みんなで救助するということを遊びながら学んでいただけたらうれしいです。
同時に、大事な命を救うことや、命って大事なんだよ、周りの人の命も、自分自身の命も大切なんだよってことをご家族で話し合うきっかけにしていただけるといいなと思っています。
今村さん 命というものを考えるような付録は今までなかったので、これはかなり新しいというか、初めての試みだなと思っています。これを遊びながら学ぶというのが、本当に知育の真骨頂というか。遊びながらまずAEDを知ってもらって、日常の中でもAEDの設置マークを意識していただき、さらにそこから、なぜAEDを使うのかというと命を救うため、じゃあ命はなぜ大事なのか、というように、どんどんテーマを広げていただければうれしいです。
実際に幼児にAEDの使い方を細かく知ってもらうというよりは、まずはAEDというものの存在を知っていることが重要だと思っています。それがこれから小学校、中学校と進んでいく中で、授業などで触れる機会に「あの時のAEDだ。私もこれを使えるようになったんだ」なんて感じてもらえたらいいなと思っています。
PROFILE
小関晶子さん(写真右上)
日本で初めてAEDを搭載した国内航空会社に教官として勤務経験もある。日本光電でAED製品企画・広報担当。看護師・BLSインストラクター資格保有者。
小山友梨乃さん(写真左上)
日本光電の製品企画、AED事業推進・普及啓発、広報担当、AED担当。
今村祐太さん(写真下)
小学館 幼児誌編集室幼稚園編集。『幼稚園』の付録を担当。
取材・文/山田朋子
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