子どもの中学受験メリット・デメリットとは?私立と公立の違い

子どもの中学受験メリット・デメリットとは?私立と公立の違い

近年、都市近郊で増えてきている中学受験。「気になるけれど、実際どうなの?」「うちの子どうする?」未就学児〜小学生のママ・パパへ、焦ることなく、無知でもなく、「自分たちらしい選択ができるようになるための知識」をお届けします。

前回は、中学受験の前提としての知識をお伝えしました。では、中学受験には、どんなメリットまたはデメリットがあるのでしょう?

まず一つ目の違いは、当然ながら大学までのトータルの受験回数とタイミングの違いです。公立の場合は、高校受験→大学受験となりますが、中学受験の場合、附属系の私学を受けた場合はそのまま付属の大学へ上がる場合(付属系では大学の外部受験するのは少数派という学校が多いです)その後の受験はゼロ。また付属以外の進学系私立の場合は、→大学受験となります。このことは、どんなメリットとデメリットにつながるのでしょうか?

受験タイミングと回数によるメリット・デメリット

メリット
中学受験をするメリットとしては、高校受験がないので思春期の6年間を、同じ学舎で同じ仲間と過ごせることです。高校受験のための準備が必要ないので、大学受験を要するケースでも、6年間でのカリキュラムの中で準備をすればよく、学校側も本人も長期的な学習プランが立てられます。また、6年間変わらない環境の中で学友との絆も深められるでしょう。「私立で6年間を、好きなことに没頭させたい!」というのは、学校の校風次第です。進学対策に熱心な私立学校ですと、こまめにテストがあったりして、やはり受験に向けた学習が中心の生活になるかもしれません。逆に、塾の代わりに、そういった学校を選ばれるケースもあります。ご家庭の指針次第です。

・デメリット
デメリットは、小学生という身体が未発達の時期に、机に向かう時間が増える点です。これは、中学受験の最大のデメリットと言えるかもしれません。言い換えれば、早くから学習習慣がつくというメリットでもあるのですが、身体的には、視力の低下や筋力の未発達、睡眠の不足などが起こるリスクを抱えることになります。

この時期に運動することは脳の発達にも関係しますし、睡眠はホルモンの発育にも大きく関係します。特に男の子は、まだまだ遊びたい盛り。運動量が必要な子も多いです。どの子も言われるがままに机に向かうとは限りません。その子の特性や、精神的な発達段階、反抗期がいつ来るか?などにもよってきますので、努力ではどうしょうもない面もあります。保護者は、わが子の見極めが大切になってきますので、どちらを優先するか?慎重に検討してください。

私立には校風がある

二つ目の違いは、「校風」があるかないか。校風とは、公立学校にはないものです。公立学校は、全国で等しく同じ教育が受けられることを主な目的としているので、学校ごとの校風というものは設けません。ですが、私立には校風があります。社会のリーダーを育てるという校風、協調生を重んじる校風、自ら道を切り開くことを尊ぶ校風、自由を尊ぶ校風、女性の自立を促す校風、などなど。

付属の私立出身の大人に会ったときに、「あの人は慶應っぽいな」「早稲田っぽいな」「青山っぽいな」などと思うことはありませんか? その「〜っぽさ」。それこそが校風です。

ご家庭として、お子さんにどんな空気をまとった大人に育ってほしいと願うのか。その「風格」とも言えるものを身につけることが私立学校に入ることの一つの価値となります。ですから、ご家庭の方針と学校の校風が合うかどうかは、受験校を選ぶ際にも、大切な軸となってきます。

教育・カリキュラムに特色がある

三つ目の違いは、校風ではなく教育の特色があることです。ここは、なんとなく感じている方も多いのではないでしょうか。例えば英語に強みを持っている学校。ネイティブの先生がたくさんいたり、最近は英語をAIで学んだり、留学研修制度や交換留学制度が充実している学校もあります。(大学の一般受験での英語力の比率も高くなっており、英語教育が充実した私立を選ばれるご家庭が多い理由となっています。) サイエンスコースを設けていて、充実した実験室を備えた学校もあります。お子さんの得意なことを伸ばしてくれそうな学校を選べるというのも、私立の大きなメリットです。

大学進学に関するメリット

また、大学へ進学する際のメリットです。付属校であれば、一定の成績が取れていればそのまま受験なしで同大学へ入学することができます。ただ全員が入学できるわけではありません。在校生の何割を入学させるかは、その学校によりますので、事前に調べておくと良いと思います。

一つ、大切なことを覚えていてください。大学受験をする場合でも、一般入試をする学生は大幅な減少傾向にあります。2023年度の大学入試における一般入試の割合は、国立大学で81.8%、私立大学では4割程度とされています。それ以外の学生は、一般入試以外のなんらかの受験方式により入学しているのです。このことは視野に入れておくと良いと思います。その意味合いでは、私立は有利です。

なぜなら、私立中高には、自校の付属以外にも私立大学への指定校推薦枠を持っている学校があるからです。いわゆる伝統のある学校では、長年に渡る他校とのパイプがあり、他大学への指定校推薦の枠を多く持っているケースもあります。つまり、学校で好成績を収めれば、大学受験をしなくても推薦で入学できるチャンスが広がります。このように、昨今では複雑化した大学受験を避けたいということで、私立を選ぶ人も増えています。実は、あまり着目されませんが、この指定校推薦枠の多さと学校の偏差値は必ずしも比例しません。大学受験で指定校推薦を視野にと思われる方は、その辺りも一度お調べになるとよいかもしれません。

大学受験では自己推薦入試や総合型選抜(旧AO入試)というものも増えており、それには面接で語れるボランティアや部活や留学など、机上の学習以外の豊かな経験をしている子が有利に働く傾向にあります。そのため、高校受験準備のない6年間を過ごせる私立の方が比較的向いていると言えるでしょう。

デメリットとしては、高校生になった時に、自分が目指したい学部が付属の大学になかったケース。外部受験者の少ない付属系私立だった場合、自分だけ周りに流されずに受験に向かうのは、当人にとってなかなか大変なことかもしれません。小学生のうちから、将来の道を決められる子どもは、ほとんどいませんから、そこは一考すべき点です。

さて、これらを鑑みて、中学受験をするかしないか?迷われているご家庭で何度も話し合ってみてください。夫婦の意見をすり合わせることが、受験をスタートする前に超重要事項!となります。受験生活や受験結果を左右するほど重要な「夫婦のすり合わせ」。それは、なぜか?次回は、「受験における夫婦のすり合わせ」について詳しくお伝えします。

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担当カテゴリー

学び・遊び・教育

教育ジャーナリスト 田口まさ美

出版社の小学館で教育誌・ファッション誌編集含め23年以上(教育編集者として10年)携わり2022年独立。教育ジャンルでは初等教育教員向けコンテンツ中心に教育、学習、子供の心の育ち、非認知能力・海外の教育などのコンテンツ編集を経験。現在教育ジャーナリストとして親子に役立つ情報を発信。カナダ留学中の娘の母。Starflower inc.代表取締役。

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