九九もできない、漢字も書けない小4娘。将来に不安しかなく、どうしたらいいの?
困ったら増田先生に聞いてみよう!放課後相談室
Q.準備が遅く、勉強も大キライでキレやすい娘。将来が不安すぎる…
小4の女の子です。習い事、学校、レジャーにでかけるときにダラダラして、時間がかかります。怒ると「もう行きたくない! 行かない! イヤだ!」とキレます。本当にイヤなのかと思ったら、出先では楽しそうにしているので、そうでもないようです。
勉強は大キライで、宿題からも逃げます。九九も十分にできないし、漢字も2年生から書けません。書くのがキライです。それは私が保育園のときにムリやりドリルをさせたからかも知れませんが…。まわりの友だちより幼い感じがして、女の子とはうまく遊べなかったりします。男の子とはさらに体力、性格的に遊べません。自分より小さい子どもとは上手く遊びます。
高齢出産で甘やかしてしまったし、仕事が忙しくて勉強を見てあげられないと反省しつつ、どうしてこんなに何事にも頑張れない性格なのか、将来に不安しかありません(ゐづみ)
A.まずは「キレる気持ち」を受けとめましょう。できないことに対しては丁ねいに接し、よく見てあげてほしいです
親なら誰もが「しっかりして、何でもできる子」を求めます。それは当然だと思います。しかし、そんな子どもばかりでしょうか。子どもだけでなく、大人である私たちも含めて、誰もが発達のデコボコをもっているのではないでしょうか。
相談者さんが言う通り、娘さんはダメな部分しかないのでしょうか? お母さんのことを思いやったり、優しい言葉をかけてくれることはありませんか? そうしたプラス面も見てもらいたいと思うのです。
さて「キレる」ことは、子どもたちの中ではよくあることです。そうしたときに大切なポイントは、「キレる行為を怒る」ことではなくて、「なぜキレたのか理由を聞く」ことだと思うのです。子どもは理由もなく「キレる」わけではありません。
大人から見たら「そんなくだらないことで…」と思うようなことで怒っていることがよくあります。でも、その子にとっては真剣なのです。その思いを聴き取ってあげてほしいです。
出先では楽しそうにしているのですから、ダラダラ準備しているときの気持ちを聴いてもらいたいのではないかと思うのです。例えば、習い事になかなか行かない場合は「先生がすごく怒ることがある」とか、学校になかなか行かない場合は「友だちがあまりいないからつまらない」など、理由があるはずです。そうしたことを聴いて、子どものよき理解者になってもらいたいのです。子どもにとって一番の理解者は親しかいないのですから。
苦手な勉強は丁ねいに接しましょう
勉強が大キライで、宿題からも逃げる、九九も十分にできず、漢字も2年生から書けないとのことですが、2年生の学習でつまずいてしまった可能性があります。
2年生の算数ができれば「できる子」になれるし、まわりからも「できる子」として認知されるようになります。また、まわりの人を大切にできる子どもが大きく伸びる時期です。それは、人間は認められるだけでなく、認めるという行為を通して、他者のことを深く知っていくようになり、一人ひとりのもち味を理解するようになるからです。
1年生の授業時数は年間850時間あります。そのうち算数の授業は136時間で、数の概念の習得が中心になります。しかし2年生になると、各教科で本格的な学習が始まります。2年生の授業は年間910時間で、60時間も増加します。増えた60時間のうち39時間が算数です。増加分の65%が算数だということです。文科省は2年生の1年間が教育の勝負の年と考えているといえるのです。
2年生の指導範囲は「1.位取り」「2.くり上がり・くり下がりの完成」「3.九九」です。特に「くり上がり」「くり下がり」の計算が速いか遅いかは、その後の計算力を大きく左右することになります。つまり、2年生で「くり上がり・くり下がり計算」と「九九」を完璧に覚え込むことで、子どもの中に「数の暗黙知」が身につくのです。
※「暗黙知」とは経験的に使っている知識だが、簡単に言葉では説明できない知識のことで、すぐにパッと出てくるように染みこんでいる知識と言ってもいいかもしれません(例:自転車の乗り方)。
相談者さんの娘さんは、大事な2年生の九九でつまずいたことが、全体的に意欲をなくしてしまった理由のひとつとして考えられるような気がします。4年生になったから「もうダメだ」ではありません。4年生になったからこそ、2年生の九九が早く覚えられるようになっている可能性も高いと思います。実際、九九が覚えられなかった子を4年生で担任したときに、個人指導した結果、2週間で覚えきることができた経験があります。
九九を覚えさせるためには、特に「6の段」「7の段」がネックになります。6×7=42(ロクシチシジュウニ)、7×6=42(シチロクシジュウニ)などの言いにくい部分を、何度も繰り返させることです。
「ピグマリオン効果」と「ゴーレム効果」について
「ピグマリオン効果」という考え方があります。これは心理学における理論のひとつです。ロバート・ローゼンタール(R.Rosenthal)らが、1960年代後半にアメリカの小学校で行った実験です。
あらかじめ実験者から教師に「この子どもたちは近い将来、学力が伸びるであろうと期待されている高期待の児童群です」と伝え、指導にあたらせます。しかし、実際にはランダムに選ばれた子どもたちでした。それにも関わらず8か月後の検査では、そう伝えられなかった児童群より明らかに学力が上がっていました。どうしてそのようなことが起こるのでしょうか? 教師が「この子たちはできるようになると言われている子どもたちだから、できないはずがない!」と考え、できない場合は再度言い直して伝えたり、できるはずだというまなざしで見つめた結果なのです(別名「まなざし効果」とも言われています)。
「ゴーレム効果」とは「ピグマリオン効果」の反対です。子どもに対してネガティブに見ることによって、できなくなっていくのです。
良いところを見つけ、丁ねいに接しながら「できるはずだ!」というまなざしで見てあげることで子どもは変わっていくのです。そのためにも「できた!」「わかった!」という経験を積み重ねていくことが大事なのです。
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