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「人の話を聞かない子ども」は大人のかかわり方のせい!?
7月のNG言動は
子どもと視線を合わせないで話す、一方的に話を進める、子どもが話の内容を納得・理解しているかを確認しない
こんにちは、保育士のみやです。
先日、保育園で七夕パーティーが開かれました。短い時間でしたが、保育士が人形劇を披露したり、七夕の由来をお話ししました。園庭には、立派な笹が飾られ、園児全員の短冊が揺れています。「消防士さんになりたい」「アンパンマンに会いたいです」。そして、「コロナが終わりますように」「みんなと楽しく遊びたいです」という短冊も…今年ならではのお願いごとですね。
ママやパパに「見てもらえた」満足感が次にモチベーションに
園では、幼児クラスは自分で内容を決めたものを保育士が代筆したり、自分で書いたりします。乳児クラスは保護者が書いて園に提出します。
子どもたちは、登降園時に保護者へ「ボクの(私の)短冊はここだよ!」と誇らしげに示します。だって見てもらいたいのです、自分のお願いごとを。
ぜひ、子どもたち自身が示したものには、毎回「そうなのね」「よくできてているね」と声がけをしてください。『見てもらえた』という満足感は、次の活動のモチベーションになります。
わが子が「話を聞いていない」という悩み
さて、今月は「人の話を聞かないこと」についてのお話です。
「どうしてママの言うことを聞かないの!」「同じことを何度も言わせないで」「先生はなんて言ってたの?」
毎日、頻繁に聞かれる親子のやりとりです。たいがい、ママたちは怒った表情を浮かべ、声にもトゲがあります。一方の子どもたちは、涼しい顔をしてへっちゃらということも少なくありません。
ご存知の通り、小学校に入学すると45分~50分の時間割が5〜6時間続きます。自分の席に座って、先生の話を聞き、理解し、応じることが求められます。先生の話を聞いていないと、ママにプリントを渡し忘れたり、授業で必要な物を用意し忘れたりします。
年長児になると、保護者のみなさんからは、『他の子に比べて落ち着きがなくて話を聞いていないんです』『いつになったら、先生のお話を聞けるようになりますか?』という相談を受けることが多くなります。
気ままなおしゃべりをしないで、大人の話を聞き、的確に答えられる…どの保護者もわが子がそのように成長してほしいと願います。でも、実際は…。そうした心配から、つい「ねえ、聞いてるの?」という確認の問いかけをしがちになります。ちょっと怒ったりイライラしたりしながら…。
話を聞いていないときの子どもの様子と保育士のかかわりかた
まず、子どもが話を聞いていないときには、次のようなことが考えられます。
1.自分とって都合の悪い場面なので、話を聞かない(聞きたくない)
『これを言ったら(やったら)怒られるな』と感じると、話を聞かないふりをすることがあります。これは頭ごなしに叱られることや非難されることを子どもがイヤだと感じるためです。
保育士は、最初から子どもを否定せずに、子どもの立場から話を引き出そうとかかわります。子ども達は自分の話を聞いてもらえると感じることで大人の話を聞くようになります。
2.遊びに夢中になっているため、話を聞いていない
『今はこれが楽しい』と集中しているため、話しかけられていること自体に気づかない場合があります。誰だって、楽しい時間を遮られることは不快ですよね。しかし、小学校では時間割通りに進むため、自由に楽しい時間を過ごすことは難しくなります。
そこで、保育士は子どもの背中越しに声をかけるのではなく、きちんと視線を合わせることや手を止めさせてから言葉がけをします。話を受け止める姿勢を作ることを大切にするのです。
3.言われていることの意味がわからない
たくさんのことを一度に言われて、話の内容がわからない時も子どもは話を聞いていないように振る舞います。情報を処理しきれていないのです。年長児にもなると、大人顔負けのおしゃべりをする子がいますが、人の話を理解する力が追いついていないことがあります。
そのため、保育士は分かりやすい言葉でゆっくりと話しかけることを心掛けています。
大事なのは「話を聞く姿勢を作り、話を受け止めて、応じること」
保護者のみなさんは「私の話を聞いてくれないんです」と言われます。
しかし、ときどき『話を聞くこと=親の思い通りに行動してくれること』と思われているのではないかなと感じることも。
しかし、大人にとっても子どもにとっても、『話を聞くこと』とは『人の話を聞く姿勢を作り、話を受け止めて、応じること』だと私は思います。
これは一方的な発信だけではなく、受信する力が必要になります。子どもにとって、この2つの力がバランスよく身につくことがコミュニケーションの力を伸ばすために重要となるのです。
保護者のみなさんは、お子さんに話をする場面では、きちんと視線を合わせること、一方的に話を進めないこと、お子さんが話の内容を納得したり理解しているかを確認することを大切にしてみてください。また、私もやりがちなのですが、同じ小言を繰り返さないこともポイントです。まるで言葉が念仏のように流れてしまい、大切なワードも聞き漏らしてしまうなんてこともありがちです。お子さんに考えさせる時間を作ることが、話を受け止める力を育てることに繋がると思います。
また、ご家庭でのお子さんと園でのお子さんの姿は、大きく違うものです。自宅で「話を聞かない」と心配されるのであれば、クラス担任に園での様子を聞いてみることもよいでしょう。園では先生の話をきちんと聞いて行動できていると分かるかも。お子さんの違う一面を知ることで、ママたちに心の余裕ができるかもしれません。
みや先生プロフィール
大学卒業後、障がい者関係の仕事を経て、療育センターに臨床心理士として8年間勤務。14年前からは私立保育園の理事及び保育士として勤務しています。今年度からはフリーの保育士という立場で全学年をサポート。
子ども達とかかわる中で大切にしているのは、「ひとりひとりの行動や言葉の中にたくさんの側面を見つける」こと。それらを保護者と保育者で共有していくことが子ども達の心身の健やかな発達に繋がると考えています。
プライベートでは3人の女子中高生の母。ワーママとしての経験や思いも保護者との関係づくりに役立っています。