【就学相談 第5回】支援級から通常級には戻れない?悩む保護者への回答は
小学校入学を控えた子どもの発達について心配や不安があるときに考えたい「就学相談」。
シリーズ第5回では、「就学相談で保護者が悩むことへの回答」をお伝えします。
「支援級と通常級、どっちにも不安がある…」「子どもの進学先を選んだあとで後悔したくない!」
子どもの人生に関わる大きな決断をすると思うと、なかなか簡単には決められませんよね。そこで今回は、実際に寄せられた保護者の悩み(以下の3点)についてお話ししたいと思います。
・支援級へいくと通常級にはもどれなくなる?
・支援級の子はいじめられる?
・支援級だと勉強についていけなくなる?
Q1.支援級へいくと通常級には戻れなくなる?
Q1.就学先を支援級と通常級で悩んでいます。就学相談では支援級を勧められていますが、先輩ママから「一度支援級へ行ったら通常級へは戻れなくなる」という話を聞きました。これは本当ですか?
A.制度上では、支援級から通常級に戻れないということはありません。どの学級を選んでも、子どもの状況を見ながら柔軟に転学できることが文部科学省から正式に通知されています。
しかし支援級に通う家庭の保護者が「通常級へ移籍したい」と伝えた場合、担任の先生や管理職の先生から引き留められることは多々あります。
考えられる理由は、以下の3点です。
通常級は人数が多いため、子どもの特性が強く出やすいという心配がある
通常級は進むスピードが早いため、授業や活動についていきにくくなる可能性がある
校内で合理的配慮の体制が整えられない
通常級では子ども約30人に対して担任が1人ですので、物理的に子ども一人ひとりに目が届きにくくなります。
支援員の追加配置なども、教育委員会の事情でかなわないこともあります。
こういった特別な配慮を要望しないのであれば問題はありません。
ときどき学校の都合で引き留めるケースもありますので、その際は文科省から出されている通知をもとに、管理職や教育委員会に相談するという手はあります。
お子さんにとってどの環境が一番合っているのか、お子さんが楽しく通える場所はどこなのかなどを最優先に考えられるといいですね。
(参考:文部科学省「就学相談・就学先決定の在り方について」)
Q2.支援級の子はいじめられる?
Q2.支援級に入ったとして、通常級の子どもたちからいじめられないかと心配しています。支援級の子どもは通常級の子どもたちから差別されたり、仲間はずれにされたりするものですか?
A.支援級の子たちが通常級の子どもにいじめられているという話は聞いたことがありません。
どちらかというと支援級の子は「校内の有名人・人気者」という感覚が近いと思います。
通常級と支援級で交流がある場合はとくに、同じ学年の子が支援級の子に「おーい!〇〇くん!」と声をかけている様子をよく見ました。
近年は特別支援に対する理解が広まってきています。
小学生の頃、クラスに転入生が来てうれしかった経験はありませんか? 支援級の子との交流はあの感覚そのものです。
通常級の子どものほとんどは、支援級の子が自分のクラスに来るのを楽しみにしています。
また支援級の子どもは人数が少ないので、担任以外の先生たちもひとりひとりの名前をよく覚えます。廊下を歩くときも、いろいろな人に話しかけてもらえるでしょう。
念のためにお伝えしますが「突然大きな声を出す」「急に走ったり、怒ったりする」という特性のあるお子さんの場合は、一時的にほかの子どもから注目を集めることもあります。
ただこれは、大きな声を出している子にびっくりして注目しているだけです。「支援級の子だからおかしい」と思っている子どもはあまりいません。
差別や仲間外れについては、安心して大丈夫だと思います。
Q3.支援級だと勉強についていけなくなる?
Q3.支援級に入ると、学習の進み具合が遅くなるので心配です。通常級と学習進度に差が出てしまうことはありますか?
A3.支援級の学習進度は、子どものペースに合わせますので遅れる場合もあります。
たしかに、学習の進み方に注目すると心配になるかもしれません。
しかし「子どもはよく理解していないけど早い進度」と「しっかり理解してゆっくりな進度」ではどちらがいいでしょうか? おそらく、しっかり理解している方がいいと思われるのではないでしょうか。
子どものペースに合わせて無理なく学習を進めると、学習の定着度が上がるだけでなく二次障害を防ぐことができます。
二次障害というのは「特性に対して適切な支援を受けられず、心理的な傷つきや精神的不調を抱え、それが日常生活の支障となること」を言います。
理解できないまま授業が進んで「自分にはできない」と自信を失ってしまう子
「みんなのスピードに合わせられない」とあきらめて自暴自棄になってしまう子
がんばりすぎてオーバーワークになり、チックなど身体症状が出てしまう子
二次障害にはこのようなケースがあります。
一度自己肯定感が下がったり自信を失ったりすると、もとに戻るには膨大な時間と労力を必要とします。二次障害は不登校にもつながる深刻な状態です。
ですから支援級での学習進度は、あまり気にしないことをおすすめします。
就学先で悩むのは当然、一緒に考えていきましょう
小学校は幼稚園・保育園と環境が大きく変わります。「子どもにとっていい環境を整えたい」と思うのは、親であれば当然のことです。
だからこそ就学先の選択は、悩みが深くなりますよね。
このシリーズでは次回も保護者の方のお悩みにお答えしていきます。お子さんの入学先を選ぶための参考にしてみてくださいね。
就学相談シリーズ第6回(10月下旬公開予定)では、「就学相談と親の悩み その2」をお伝えします。