繊細で優しい小1の息子、帰宅後のひどい癇癪に困っています。どうしたらいいの?

繊細で優しい小1の息子、帰宅後のひどい癇癪に困っています。どうしたらいいの?

【Q】ADHDの疑いがある息子。学校と家での違いに苦しんでいます。家庭ではどう対応すればいいですか?

小1の息子は、とても繊細で、優しく、集団生活ではまわりをよく見ていて、困っている友達がいると助けてあげる姿が見られます。まわりの状況は把握しているのに、いざ自分のこととなると気持ちを言葉で表すことができず、困ったときにヘルプを出せません。
そんな息子ですが、家では180度姿が変わります。毎日、帰宅後に癇癪を起こして暴れるのです。例えば「宿題をやりたくない」とイスをひっくり返す。コップに入った飲み物をひっくり返す。用意していたご飯をひっくり返すなど、とにかく暴れます。「バカ」「ぶっ殺すぞ」など暴言、殴る蹴る、物を投げるといった暴力は当たり前なので弟(4歳・年中)への影響も心配です。突然大声を出したり、走りまわったり、親のものを隠したりと、イヤなことばかりする毎日なので、私も疲れてしまいます。
愛情不足なのかと2人きりの時間を作ったり、時間の許せるときには夕方でも公園にでかけます。それはそれで「もっと遊びたい」と癇癪が始まってしまいます。
専門医に相談したところADHDの疑いがあるといわれ、そのことも含め私は受け入れています。今後、息子のためにどう対応してあげたらいいのでしょうか?(にこ)

【A】医者の「様子を見ましょう」の通りにしてはダメな場合もある

1歳半健診で発達に軽い異常が感じられた場合、医者はたいてい「様子を見ましょう」とアドバイスします。その結果、何も働きかけないまま時間が過ぎていきます。

胎内にいるときから6歳までの間に、子どもの脳の80%以上が成長します。出生後、新生児の脳細胞とシナプスは急激に増加し、2~3歳でピークを迎えます。その後、使われない脳細胞の密度は「シナプスの刈り込み」で10歳までに大きく減少するといわれています。高速道路がたくさんできても、車が通らないとその道路は廃れてしまいます。それと同じことが脳細胞でも起きるということです。

可能な限り手を尽くして経過を観察するのなら、「様子を見ましょう」も意味があるとは思いますが、何もしないまま様子を見るとするなら、子どもが変化することはあり得ません。現在は脳科学が進歩し、脳科学的アプローチで子どもを育てていくことができる時代になっています。子どもの脳のタイプを考え、それに沿った脳へのアプローチや刺激を与えることが大事なのです。一番、脳の可塑性に優れている時期を「ただ見守るだけ」ではあまりにももったいないと思いませんか。

もちろん障害をなくすこと難しいですが、ある程度、改善することはできるはずですし、それを考えていくのが子育てや教育というものではないのではないでしょうか。

暴力・暴言に合わせた関わり合いをしていこう

相談者さんの息子は、集団生活で困っている友達がいると助けてあげるとのこと。また、まわりの状況を把握しているとのこと。

このことが、ADHDの子には難しいことなのではないかと思います。つまり一生懸命に気を遣っているので、ストレスが溜まってしまうのではないかということです。しかも、自分のこととなると気持ちを言葉で表すことができないので、余計にストレスが溜まってしまうと思います。

そうした反動で、家庭で暴れるのではないでしょうか。家で癇癪を起こし、暴言・暴力に走っているのですから、それに合わせた対応をしていくことでかなり改善していきます。まずは、親がパニックにならないことです。パニックになって大声で注意したりすると、子どもはもっと癇癪がひどくなります。

言葉で自分の感情を表現することが苦手なのが一番の問題なのです。ですから、急に暴れる時もあるとは思いますが、暴れるには何かしら子どもなりの理由があることが多いです。その理由をきちんと見ていて、暴れたあとに「こういう理由でイライラしてしまったのだよね?」とか、「こういう理由で暴れたのかな?」と理由を親が推測し、語りかけてあげることが必要です。

そうしたことを積み重ねていくうちに、「自分の行動を言語化する回路」ができあがっていくのです。また、そうした回路ができると、自分の行動の原因を自分なりに考えるようになり、いずれはそうした問題行動が減っていくことになります。

早いうちに、子どもの脳のタイプに合わせた対応をしていくことで、脳の中に回路ができあがっていきます。ですから「うちの子は、ちょっと行動がおかしいかも?」と思ったら、すぐにその対応を子どもに合わせて考え、その問題行動を解消していくための回路を作ってあげることが大切です。そのためにも、なるべく早い年齢から対応していくことが大切なのです。

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増田修治先生 あんふぁんサポーター
白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。
1980年、埼玉大学教育学部を卒業後、埼玉県の小学校教諭として28年間勤務。
若手の小学校教諭を集めた「教育実践研究会」の実施や、小学校教諭を対象とした研修の講師なども務めている。
「笑う子育て実例集」(カンゼン)、「『ホンネ』が響き合う教室」(ミネルヴァ書房)など、著書多数。

ライター

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&あんふぁん編集部 &あんふぁん編集部

「子育ての迷いに、頼れるコンパスを。」子育て中のママ・パパの気持ちを楽にする記事を発信中。未就学児〜小学生を子育て中の現役ママ・パパも多い編集部です。

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