【おしえて!SDGs】町ぐるみで取り組む子育て支援<伏見区こども京育食堂>「京セラ」
「京セラ」の子どもの貧困問題や健全な教育支援への取り組み
スマートフォン・携帯電話などの通信機器製造やセラミック製のキッチン用品で有名な京セラ株式会社。2023年5月29日から京都伏見区において運営開始されました「伏見区こども京育食堂」についてお話を聞きました。
お話を聞いたのは
左から)
京セラ株式会社 総務部総務企画部
小倉 慎哉さん
1990年入社。広報宣伝部で宣伝活動に従事した後、現在の総務企画部門を担当。趣味は人と知り合うこと。休日は自作の燻製器で手当たり次第食材を燻しています。
京セラ株式会社 総務部社会活動推進課
前田 拓さん
1991年入社。ソーラーエネルギー部門の国内営業に従事した後に、現在の社会貢献活動部門を担当。趣味はスポーツ。日々のジョギングの累積走行距離はまもなく地球半周。
貧困家庭や地域のコミュニティーの希薄化問題に挑む「伏見区こども京育食堂」
京セラは以前より企業として社会貢献活動をいくつか行っていて、その一つとして青少年育成活動を行ってきました。そんな中、貧困家庭の増加や、地域コミュニティーの希薄化などの社会問題を目の当たりにし、子どもたちのために何かできないかという想いで2年半ほど前から「こども食堂」の構想が立ち上りました。
プロジェクトを進めるにあたっては、伏見区役所のアドバイスのもと、食事の提供は地域の3つの商店街の飲食店と、子どもたちの見守りや学習支援、親子の精神的なサポートなどは京都文教大学との連携が実現し、2023年5月29日「伏見区こども京育食堂」の運営を開始することになりました
”本当に無料?”保護者からの声
運営開始当初は「本当に子どもは無料で食べられるんですか?」という問い合わせなどもあり不安の中でのスタートでしたが、「家計がとても助かってます」「普段子どもと外食する機会がなかったのですが、会話しながら食事を楽しむことができました」などのご意見をいただくことが増えるにつれ、保護者のネットワークを通じて利用者が大幅に増え、予想以上になる月もありました。現在、対象の小学校区2校、約1000人のうち約600人が利用登録中。運営開始から10000食を提供していて、利用者は当初の予想を上回る数となっています。この成功は、食事を提供するだけでなく、訪れた子どもたちを温かく迎え入れ、居場所をつくって見守ってくださる地域の商店街の情熱に支えられています。地域全体に子育て家庭を支援する輪が広がって、 子どもたちを取り巻く社会のコミュニケーションを深める大事な場所になってきていると感じています。
子どもたちへの学習支援や保護者向けセミナーも実施
「伏見区こども京育食堂」では京都文教サテライトキャンパス伏見大手筋を中心に、学生ボランティアによる子どもたちへの居場所事業や保護者セミナーなども実施しています。8月には和紙の折り染め体験などを行い、自由研究にする子どもたちもいました。小さな子どもたちとも風船遊びやレクリエーションをしたりと、夏休み期間中ということもあり、たくさんの子どもたちに利用してもらいました。 運営当初は保護者と一緒に来る子どもの割合が多かったのですが、今は友達同士で利用する割合が増え、安心して過ごしてもらえる居場所づくりができていると実感しています。
また、子どもの不登校やゲーム依存に悩んでいる保護者のために公開講座を実施したりと、子育てに悩む保護者の相談窓口としての役割も果たしていて、今後も継続的に行っていきたいです。(京都文教大学 地域協働研究教育センター センター長・臨床心理学部 准教授 松田美枝さん)
当たり前に利用できる環境サービスとして地域への定着を目指す!
昔はお父さん、お母さん、おばあちゃん、おじいちゃんがいて、今日あった出来事を話しながら食事をする機会が日常にあったと思います。現在は家族の多様化が進み、子どもたちを取り巻く食の環境が変化し、個々に食べる”コ”、孤独に食べる”コ”が増えてきていると感じています。食事をしながら、親を含め周りの大人たちや他者とコミュニケーションができる子どもたちの居場所づくりとして、一企業が取り組み始めた社会貢献活動ですが、伏見区役所や商店街の方々をはじめ、京都文教大学にも協力してもらい、今は町ぐるみで「伏見区こども京育食堂」を支えてもらっていると思っています。まだまだ始めたばかりですが、必要な人が、気兼ねなく当たり前に利用できるサービスとして定着できるようにこれからも運営を続けていきたいです。