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おとなしく引っ込み思案な子を心配する親がやりがちなNG言動
11月のNG言動は
「どうして、はっきり言えないの」
「みんなは楽しんでいるのに、なぜ楽しくないの?」
「どうしてお友達と遊べないの?」
こんにちは、保育士のみやです。
朝晩の冷え込みを感じはじめた途端、発熱や咳などの風邪症状が見られるお子さんが増えてきました。乳児さんのクラスでは欠席が目立つこともありますが、年長児さんのクラスは元気いっぱいに過ごしています。
天気がよい日は、子ども達は喜んで外へ飛び出していきます。この時期は公園でどんぐりや松ぼっくりをポケットにいっぱい拾ってきたり、落ち葉を集めてきたりします。
先日、年長児クラスで拾ってきたどんぐりをベランダで天日干ししていたところ、中から小さな虫が何匹も出てきて、子ども達は大騒ぎ! こんな場面から、虫への関心が生まれたり、どんぐりの中身を観察したりと、子ども達の世界は広がっていくのです。
就学時健診が始まる時期、年長児の気持ちに変化も
11月になり、私の住む地域では、就学時健診が始まりました。緊張の面持ちで小学校へ向かう子ども達へ「行ってらっしゃい!」と送り出しています。
そして、年長児さんのクラス活動にも少しづつ変化が見られています。グループで話し合って新しい遊びを作ったり、順番にお当番の仕事をしたりと自分の意見を言う場面が増え、責任を感じる機会も増えてきています。
積極的に自分の意見を言える子になってほしいという親の願い
さて、今月は『内向的・おとなしいということ』をテーマにお伝えしましょう。
園にはさまざまなタイプのお子さんがいます。いつも集団の中心にいて遊びを盛り上げる子、周囲の様子に敏感でハメを外さない子、ひとり遊びを楽しむ子、子どもよりも大人とのかかわりを好む子など千差万別です。
時折、保護者から「うちの子は引っ込み思案で言いたいことが言えません」「年長さんなのだから、いろいろなことに積極的に行動してほしいです」などのお話を聞きます。また、「家ではうるさいほどなのに、園ではおとなしくなってしまいます」というお話もよくあります。
親としては、たくさんのお友達に囲まれて、自分の主張をきちんと相手に伝えられる…そんな子どもになってほしいと願ってしまいますよね。
さまざまな「おとなしい」のタイプがあります
年長児のHちゃんは、豊富な語彙を使って大人びた話し方をする女の子です。身体を動かすこともお絵描きをすることも上手にこなします。しかし、失敗に対する不安が強いため、活動全般に消極的で、保育士に誘われると尻込みしながら参加している様子が見られます。
また、年長児のMくんは、発言することが少なく、いつも周囲の様子をじっと眺めているお子さんです。グループで遊ぶ様子を気にしながらも輪に入れず、ひとり遊びをしています。
年中児のYくんは、大人との関わりを好み、子ども同士の遊びに入っていこうとしません。常に保育士の周囲を離れず、保育士に声をかけられると嬉しそうな表情を浮かべます。
こうして見ていると、『おとなしい子』『積極的でない子』といってもさまざまなタイプがいることがわかります。
親はヤキモキして、「どうして?」と理由を尋ねてしまいがち
こうしたタイプのお子さんをおもちのママは、少なからずヤキモキしているようです。
「どうして、はっきり言えないの」「みんなは楽しんでいるのに、なぜ楽しくないの?」「どうしてお友達と遊べないの?」…どうして?とママは理由を尋ねたくなります。
でも、お子さんは理由がわからないし、ママの口調や態度から責められているような気持ちになってしまいます。
できたことをほめ、共感することを大切にしましょう
保護者のみなさんには、お子さんに対して、できないことを責めるのではなく、できたことをほめたり、共感することを大切にしていただきたいと思います。たとえば、お友達に上手に伝えられないことに注目するのではなく、保育士に伝えられたことをほめたり、「〇〇ちゃんは楽しめたかな?」など、あとから感想を聞くこともお子さんの心を知るきっかけになるでしょう。
園では、おとなしいお子さんに無理強いして行動を促すことはありません。しかし、活動に前向きになれるよう「先生と一緒にやってみない?」と誘ってみたり、「△くんのお話も聞いてみたいな」と声がけをします。ひとりだけが目立つことのないよう、クラス運営を考えているのです。時には、タイミングが合わず、お子さんがイヤな気持ちになることもあるかもしれません。そんな時は、保護者にお話し、双方で状況を共有できるよう心掛けています。
積極的で明るいことだけがベスト?視点を変えて見守りましょう
私達大人の世界ではさまざまなタイプがいますが、それぞれが自分のタイプを理解して生活しています。積極的で明るいことだけを求められることはありませんよね。きっとそれだけがベストではないと知っているからだと思います。
お子さんの成長の中で変化が出てくることもあるでしょう。今、気になることだけをズームアップするのではなく、お子さんの成長過程を見守る気持ちでいることがこの時期大切です。お互いが気持ちよく過ごすためにも、少し視点を変えてお子さんと接してみてはいかがでしょうか。
みや先生プロフィール
大学卒業後、障がい者関係の仕事を経て、療育センターに臨床心理士として8年間勤務。14年前からは私立保育園の理事及び保育士として勤務しています。今年度からはフリーの保育士という立場で全学年をサポート。
子ども達とかかわる中で大切にしているのは、「ひとりひとりの行動や言葉の中にたくさんの側面を見つける」こと。それらを保護者と保育者で共有していくことが子ども達の心身の健やかな発達に繋がると考えています。
プライベートでは3人の女子中高生の母。ワーママとしての経験や思いも保護者との関係づくりに役立っています。