子どもが自分でできるようになる!モンテ流「引き算」の手伝い方
モンテッソーリ教育では「日常生活」を学習領域として重視する
幼児期のモンテッソーリ教育には、「日常生活の練習」という学習領域があります。これは、立つ・座る、物を運ぶ、ドアを開閉する、手を洗う、スプーンで食べ物を食べるなど、日々の些細な動作を学びの一環として捉えるためです。
こうした動作の重要性は見過ごされがちですが、日常生活の中で体全体や手首・指先の使い方を学ぶことは、子どもの体の発達や精神的な自立を促します。たとえば、日常的に手をよく使っている子どもは、スプーンやフォーク、鉛筆、ハサミといった道具の扱いにもすぐに慣れます。はじめは苦労しても、練習を重ねるうちに「できた!」という喜びと達成感を味わいます。一つできるようになることで、「自分でできる」という自信が生まれ、それが「楽しい!」という好循環を生むのです。
この喜びを忘れがちな大人は、初めて自転車に乗れたときや、新しいレシピを試して美味しく仕上がったときの感動を思い出してみてください。達成感を感じ、再び挑戦したいと思った経験があるのではないでしょうか?
幼児の日常生活には、このような経験を積むチャンスが「毎日」あります。しかし、大人がその重要性を理解していなければ、せっかくの機会を見過ごしてしまいます。毎日が忙しく、そんな余裕はないと思うかもしれませんが、大丈夫です!ちょっとしたコツを知るだけで、忙しい中でもできることはたくさんあります。
いずれは子どもが自分でできることを、一時的に手助けしているだけ
私は2歳児クラスの担任として、日々子どもたちの日常生活を見守り、サポートしています。限られた保育時間の中で多くの子どもたちの手伝いをするため、一人ひとりに十分な時間を割くことは難しいですが、ポイントを押さえた手伝いをして、あとは自分でやるように後押ししています。
登園後の子どもたちには、靴の脱ぎ履き、上着を脱いでハンガーにかける、カバンから道具を出す、出席カードに印を押す、名札バッジをつける、手を洗うなど、数多くの「自分でやるべきこと」があります。まだうまくできない部分も多いですが、大人の手助けは「子どもができない部分」に限定し、いつかは自分でできるようになることを見据えて接しています。
「子どもの学びにつながる手助け」のやり方を知る
地下鉄で、赤ちゃんに上着を着せようとしているお父さんがいました。急いでいる様子で、赤ちゃんの腕をジャケットに通そうとしていますが、赤ちゃんは天井を見つめていて全く関心がありません。バタバタと腕を動かし、ジャケットを跳ね除けてしまいました。電車はまもなく駅に到着し、お父さんは赤ちゃんとジャケットをそのまま抱えて降りていきました。
この微笑ましいやりとりに登場する赤ちゃんはまだ自分で上着を着られませんから、大人が100%手伝ってあげる」必要があります。しかし、成長に従って徐々に70%、50%・・・と手伝う割合が減り、数年後には自分でできるようになります。
具体的にはどんなふうに手伝うとうまくいくでしょうか。
お手伝いのキーポイントは「引き算」で
子どものをお手伝いするときにありがちなのは、ついつい大人が全部やってしまうことです。大人がやった方が早いですし、子どもも大好きなパパやママにやってもらうことが大好きです。そこをグッと我慢して、なるべく「引き算」の手伝いを心がけます。
主なポイントを3つご紹介します。
①やっているところが「見えるように」
大人が「着せてあげる」場合であっても、大人が勝手に着せるのではなく「上着を着よう」と声をかけて、子供の意識を着ることに集中させます。「見ててね」と声をかけると良いと思います。やり方がよく見えるように意識して、大人が子供の後ろ側からボタンを閉めたり、ファスナーの金具を合わせるなど工夫します。子どもはやり方を目で見て学ぶことができます。
②最後の一手は子供に
上着をファスナーの金具を合わせることは難しいかもしれませんが、ファスナーを上に引き上げることは子供にもできるかもしれません。ボタンをボタンホールのそばまで持ってきてあげれば、子供がボタンをグッと押し込むことができます。できることからやってもらいましょう。
今回は上着を着る時を例にとって説明しましたが、他の場合も同じです。靴を履くなら、子供が履きやすいように整えてあげる、物を取る時は取りやすいようにしてあげる、口を拭くならタオルを渡してあげるなど・・・部分的に手伝ってあげます。
靴を履くのは子供、物を取るのは子供、口を拭くのも子供です。子供が動作の主体になるように、大人は部分的に手伝ってあげるだけ。最後の一手は子供にしてもらいましょう。そして、子供ができるようになったら、少しずつ手伝う分量を減らしていきます。
③使いやすい道具を選んであげる
子供が自分で扱いやすい道具を選んであげることも大切です。靴ならスリッポンやマジックテープで開閉するタイプのものが足を入れやすいです。とっておきのオシャレなブーツや紐付きの靴は、特別なお出かけの日だけにしておくと良いかもしれませんね。
自動ドアやエレベーター、リモコンなど便利な機能が整ったことで、体を動かす機会が減っています。大人の筋力が低下が心配されるこの頃ですが、それは子ども同じことです。成長期の子どもについては、特に大人が気をつけて体や指先の運動機会を作ってあげたいですね。