更新 :
小学生の「ぐずぐず癇癪」成長を妨げるNG対応に注意!
小学生になったわが子が、時々ぐずぐずと癇癪を起こす…なんてことはありませんか。
小学生になるとひとりでできることも増えて、頼もしい姿に感動することもあります。一方で赤ちゃん返りのように癇癪を起こす一面を見ると、学校でうまく過ごせているのか心配になりますよね。
今回は癇癪を起す原因、親のNG対応について、小学校の通常級担任や特別支援教育コーディネーターとして活動した経験から、詳しくお伝えします。
年代別の癇癪のパターン
ちょっとしたことに対して大げさに怒ったり泣いたりと興奮状態になってしまう癇癪(かんしゃく)。お子さんが小学生になるまでにも、数えきれないほど相手をしてきた経験があるのではないでしょうか。癇癪は年齢によってその内容に変化があります。
・0歳:主にお腹がすいた、眠いなど生理的な欲求
・1~3歳:気持ちをうまく伝えられなかったり、やりたいことができないことへの反発
・3~5歳:理解してガマンができるようになるが、それでもやはり未熟さから爆発することも
・6歳~:注目・関心を引きたい、コミュニケーションの手段として身に着けてしまっている
5歳以下で見られる癇癪のパターンは、小学生になる頃にはあまり見られなくなります。思考力・理解力が上がってくる年齢だからです。回数や頻度がいきなりゼロにはなりませんが、抱きしめてあげたり、「こういう気持ちなのかな?」と代弁してあげることで落ち着く場合がほとんどです。
しかし、小学生以上になると、もっと具体的に助けてもらうことを求めて癇癪をくり返すことがあります。
くり返さないために「誤学習」を防ぐ
小学生では本来減ってくるはずの癇癪ですが、時々、子ども自身が「癇癪を起こすこと」を誤学習している場合があります。
【誤学習とは?】
過去に都合の良い結果が起こった時の行動を覚えて、それが不適切なやり方であっても繰り返してしまうこと。
例えば「癇癪を起こしたら、わからない問題をやらなくて済んだ」という経験をしたとします。このときに「癇癪を起こせば、イヤなことから逃げられる」と誤学習してしまうと、同じような場面でいつも癇癪を起こすようになってしまいます。
一度誤学習したやり方は本人にとって「正しいやり方」として身についてしまっているので、直すには時間がかかります。繰り返しを防ぎ、身につけてしまった誤学習を修正するためにも「癇癪を起こしてもよい結果にはならない、よい振る舞いではない」と根気よく伝えることが重要です。
「癇癪を起してから」の支援はNG
子どもたちは小さいなりに葛藤しながら日々を過ごしています。まだ自分でうまく対処できない時には、大人の目線から支援することも大切です。
・見通しが立てられないときには、手順や段階を細かく示してあげる
・目の前にやるべきこと(宿題であれば音読する教科書やプリント)を並べて視覚的に分かりやすくする
・休憩やささやかなご褒美でやる気を起こす
ただし、こういった手助けを「癇癪を起こしてから」やってあげると誤学習してしまう可能性があります。事前の約束をして、大人は徹底して約束を守ります。もし癇癪を起こした時は付き合わないことを徹底しましょう。相手をしすぎてしまうと「やっぱりこのやり方でいいんだ」と無意識に誤学習が強化されてしまいます。
「落ち着いてから話そうね」など声をかけて、物理的に距離を置くのも効果的ですよ。
癇癪コントロールのカギは「子どもが自分できることを探す」
大人でも感情が爆発しそうになることはありますよね。「そういう時はこれをやる!」とリラックスしたり発散する方法を決めている人もいるかもしれません。
子どもにも、本人に合ったやり方を探してあげましょう。
・お気に入りのタオルやぬいぐるみを抱きしめる
・好きな匂いをかぐ
・落ち着ける部屋や空間でひとりになる
・気持ちや出来事を文字や絵でかく
・新聞紙を破る
子どもが落ち着いている時を見つけて、どんなことをやると落ち着くか、落ち着けるものは何かを話し合ってみましょう。「ひとりでいつでもできること」があればベストですね。
何がよいかが分かれば、癇癪を起こしそうになっている時に、「ちょっと〇〇してみる?」と促してあげることができます。また子ども自身が「どうすれば落ち着くか」を自覚することで、徐々に自分で対処できるようになっていきます。
癇癪もひとつの成長の証!
仕方ないとはいっても毎度毎度となるとうんざりしてしまう子どもの癇癪。しかし自分の主張を通すためのような、誤学習してしまった癇癪に対して助けてあげていると、騒ぐことで周囲に対処を求める困った人になってしまうかもしれません。
時には癇癪の原因を聞いて大人の手でトラブルを取り除くことも必要ですが、生きていれば誰しも思うようにいかない時はありますよね。子ども自身も癇癪を起こしている時点で、自分は今うまくできていないと自覚しています。ぶつかることも成長のひとつで、乗り越えたりかわす方法を学ぶことでさらに子どもたちは成長していきます。
親自身がいっぱいいっぱいで心がつらくなった時は、その時の状況や気持ちをノートにメモしてみましょう。後々、解決のきっかけを導き出せると思います。
ナビゲーター
担当カテゴリー
子どもの健康・発達
公認心理師・スクールカウンセラー・発達凸凹支援コンサルタント 西木 めい
大学教育学部(特別教育専攻)卒業。小学校の通常学級の担任を8年、特別支援学校(小学部) の担任を5年、自治体の就学支援委員会(就学相談)の調査員、特別支援教育コーディネーターを経験。
「優秀な同僚の先生たちが、保護者と揉めて心を病んで、どんどん学校を辞めていく現状」を見て、専門職であるスクールカウンセラーになることを決意。現在は、小学校と中学校のスクールカウンセラーとして、親子や先生のカウンセリング、学校内の環境調整のコンサルティング、不登校や登校しぶりの再登校のサポートなどを行う。
一方で、SNSを通じた「発達凸凹支援コンサルタント」として、これまで2300人以上のママ・パパ、先生のお悩み解決コンサルを行いながら、発達凸凹っ子のママや、子どもの不登校・登校しぶりに悩むママに向けたオンライン講座、小学校の保護者100名以上が集まる子育て講演会などを開催。特別支援教育が「教育の一番の根本」であることを啓発している。2児の母。著書に『発達障害のある子を支える担任と保護者の連携ガイド 』(明治図書)がある。