「正しい子育てってなんだろう?」教育者が完ペキを目指すママ・パパに伝えたいこと
モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載がスタート。育児書や、しつけにまつわる記事をたくさん読みすぎて、かえって不安になっていませんか。そんなパパ・ママに専門家の立場から寄り添うコラムです。
モンテッソーリ教育との出会い
私は現在、カナダのバンクーバーで、幼児教育を学ぶ大学生たちに教えています。これまでの人生の大きな選択は、いつも自分の「これだ!」と思う感覚を信じて進んできたように思います。
大学時代、兄を病気で亡くし、自分の人生をどう生きるべきか模索していたとき、オーストラリアへの留学を決意しました。そこで出会ったのがモンテッソーリ教育です。「子どもを一人の人間として尊重し、科学的な視点で育む」というその考え方に心を動かされ、日本に戻って大学を卒業後、カナダに渡りモンテッソーリの教員資格を取得。その後、現地の学校でモンテッソーリ教師として働きました。
しかし、もっと子どもたちの成長や行動の背景を深く理解したいと思い、イギリスの大学院で児童発達学について学びました。30歳を超えてからの進学に親戚から心ない言葉をかけられることもありましたが、「学びに遅すぎるなんてことはない」という信念で飛び込んだあの経験は、今でも自分の人生の大きな財産です。
現在はカナダで、学生たちと幼児教育について学びを共有する日々を送っています。ただ理論を教えるだけでなく、それをどう現場で生かせるかを学生たちと一緒に考えながら進めていくことを大切にしています。
カナダに来て17年。海外生活も長くなりましたが、いまだに新しい発見や学びに満ちた毎日です。さまざまな価値観を吸収しながら、幼児教育について深く考えられる環境に身を置けることに感謝しています。
子どもに期待しすぎていませんか?
育児書を読みあさり、子どもへの熱心なしつけを行うあまり、子どもに過度な期待や圧力をかけすぎていませんか?
育児書をたくさん読み、専門家のアドバイスを参考にしながら「正しい子育て」を目指していると、「しっかりした親でいなければ」と思い詰めてしまうことがあるかもしれません。このようなプレッシャーは、子どもとの関係に影響を与えるだけでなく、親自身を疲れさせてしまうこともあります。
「大袈裟にほめすぎるのは悪影響」などさまざまな育児アプローチが
近年では、「ニューロペアレンティング」と呼ばれる、科学的根拠に基づいた育児アプローチが注目を集めています。研究結果をもとに、より良い親子関係を築く方法が提案されており、一見すると理にかなっているように感じられます。特に、研究で裏付けられた信頼性の高い接し方も多く含まれており、たとえば「大袈裟にほめすぎると自己肯定感に悪影響」といったアドバイスもその一例です。私自身も研究者として、個人の経験だけに頼らず、科学的根拠に基づいた情報をお伝えすることを大切にしています。
ただ、その一方で、こうしたアプローチが親に「常に完璧でいなくては」というプレッシャーを与えてしまうこともあるように思います。その結果、自分の感覚や子どもとの自然なつながりが見えづらくなり、育児がストレスに感じられてしまうこともあるかもしれません。
完璧を目指さず、自分にとっての最善を見つけましょう
育児で本当に大切なのは、「一般的に正しい方法」を探すことではなく、「自分と自分の子どもにとって何が最善なのか」を見つけることでしょう。科学的根拠に基づくアドバイスはもちろん助けになりますが、それを自分の家庭にどう取り入れるかは、親自身の感覚や価値観も大切です。科学の知見を多少参考にしつつ、自分らしい方法で子どもと向き合うことが、より良い親子関係を築く第一歩だと思います。
この連載では、科学的な視点や知識を共有しながら、皆さんの育児に寄り添っていきたいと考えています。ただ、私の言うことをすべて取り入れる必要は全くありません。役に立つと思える部分だけを選んでいただければ、それで十分です。むしろ、この記事を読んでくださっている時点で、すでに「より良い親でありたい」と考え、行動されている証です。その姿勢を、私は心から尊敬していますし、応援したいと思っています。
親として迷いや不安を抱えることは自然なことです。親が完璧である必要はありません。大事なのは、自分を責めすぎず、子どもと自分にとって心地よい距離感や接し方を見つけていくことだと思って、すこし肩の力を抜いてみてください。
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