「きょうだい育児」について、上の子・下の子で接し方に差が出てしまうと感じる時には?
子どもが複数いる人は、「きょうだい育児」について、悩んだ経験がある人も多いのではないでしょうか。上の子、下の子で接し方に差が出てしまうと感じる時にはどうすればいいのか、大阪教育大学教授で大阪教育大学附属天王寺小学校長の小崎恭弘さんに教えてもらいました。
「きょうだい」って難しい
「きょうだい」って難しいです。そこには2つの意味があります。1つは自分自身の体験から感じる難しさです。世の中にはたくさんのきょうだいがいて、それぞれに全部違います。もちろん仲の良いきょうだいもたくさんいれば、そうでないきょうだいもたくさんいます。お互い血が繋がり、そして人生のどこかのタイミングで一緒に生活をしていた存在です。気がつけは当たり前のようにいて、そして一緒に育ってきました。少なくとも、それぞれがお互いに影響を与え、与えられてきたはずです。それでもきょうだいは全く同じではないですし、相手のことがよくわかっているだけに、どこか譲れないところもあります。
大人になっても幼い頃の感覚や関係性が、なかなかに消えなくて、いつまでも呼び名は幼い頃のまま。いい年のおじさん・おばさんも「おにいちゃん」や「ともちゃん」と呼び合います。嫌ではないのですが、永遠の固定的な関係です。時にはそれに苦しみ、また悩みます。もちろん素敵なこともたくさんあります。そこが「難しい」ところです。
そしてもう1つは、自分が親になりきょうだいを育てる時に感じる難しさです。きょうだいそれぞれの性格の違い、育て方の違いに戸惑います。ケンカになっても、どちらも悪いしどちらも悪くない。そしてどちらの言い分もわかります。誰かの味方になれば、残った方が悪者になったり、拗ねたりします。どちらもかわいいのに、一度に愛せない。そんな葛藤が親を苦しめます。
「同じようにかわいいのに、関わり方に差が出てしまう」と感じる時に大切なこと
同じようにかわいいのに、その関わり方にどうしても差が出でしまう。そんな辛さを感じることは、きょうだいを持つ多くの保護者の皆さんが同じように感じます。けれどそれは当然なのです。なぜなら子どもたちに「順位」と「個性」の違いがあるからです。それを全て否定する必要はありません。ある程度その「差異」を認めて受け止めることが必要です。
大切なのは「平等」ではなく「公平」
ただしその時に大切なのは「平等」ではなく「公平」です。ついつい年齢も個性も違うきょうだいを、同じように扱っていませんか?ある意味仕方がないところもあります。目の前にその2人ないし3人等、その当事者がいるのですから。
「お兄ちゃんだけずるい」「私も同じじゃないといや」「僕は大きいのに、どうして一緒なの?」こんな場面や言い方をされれば、どうしてもみんな同じ!というように、平等が優先されてしまいます。だからこそ少し「公平」を意識して欲しいと思います。公平とは「必要なタイミングで、必要な人に、必要なだけ関わったり与える」ということです。
きょうだいはその前提として、当然ですが年齢が違います。つまり経験や発達なども違います。だから目前のきょうだいを同じように考えて、比較したり、優劣をつけたりしても、そのこと自体あまり意味がないことなのです。そのことを理解すれば、接し方に差が出できても良いと思っています。ただし「お兄ちゃんなんだから…」「妹なんだから…」というような言い方は避けた方が良いと思います。この言い方を使えば、親は全ての子どもたちをコントロールすることができてしまい、公平ではありません。
「公平に接する」とは
公平とは、結局はその子ども一人一人の想いに気づき対応することです。きょうだいの関係性やそれぞれの思いや関わりはとても大切なのですが、いずれきょうだいは別れ、自分自身の道を生きていきます。もちろん助け合えるような関係になればいいですが、それを前提とする必要もありません。その子一人一人がきょうだいとの関わりもうまく使いながら、成長していくことを目指しましょう。
教えてくれたのは
小崎恭弘さん
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。
http://kasei.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/teachers/5.html