異⽂化、多国籍、どう教える?子育ての中で意識してほしい2つのこと
海外からの観光客の増加や小学校での外国語必修化など、よりグローバルな世界の中で生きていくであろう、現代の子どもたち。パパ・ママ世代とは少し違う環境で育つ子どもたちに、異⽂化や多国籍についてどう教えたらいいのか、悩んでいる人も多いのでは。大阪教育大学教授で大阪教育大学附属天王寺小学校長の小崎恭弘さんに、「子育ての中で意識してほしい2つのこと」について教えてもらいました。
自分の子ども時代とはかなり違う?海外の人との交流
コロナも少し落ち着き、都市部や観光地では海外の人をたくさんお見かけするようになりました。先日、東京に6年生の修学旅行の引率で行きましたが、浅草には本当にたくさん外国の人がおられました。
面白かったのは、6年生の子ども達が道ゆく外国の人に、英語で一生懸命に話しかけており、また外国の人も一生懸命答えてくれようとしているのです。いきなり何の前振りもなく、先週習ったばかりの「Do you like sports?」と尋ねる小学生と、「Yes,Baseball!」「Oh,soccer!」と答えてくれる外国の人と、ちょっとしたカオスでした。その姿がとても面白く、また自分たちの子ども時代とはかなり違うなぁと感じました。
グローバルな世界に生きる子ども達のために、意識してほしい2つのこと
パパやママは小学校時代に学校で英語や外国語を習いましたか?私は現在55歳ですが、小学校では外国語も英語も習っていません。もちろん中学校からは英語がしっかりと教科としてありました。
時代の変化の中で、子ども達の学びも変化してきています。2020年に小学校の学習指導要領が改定となり、以前からあった「外国語活動」が、5・6年生は「外国語」となり必修化されました。3・4年生は「外国語活動」となっています。それだけ外国語や英語が身近なものであり、否応なしにグローバルな世界の中で生きていくことが求められています。
そのような大きな社会の変革の中で、どのように異文化や多国籍について子ども達に伝えれば良いのでしょうか?いろいろな考え方がある中で、子育ての中で意識してほしい2つのことをお知らせしましょう。
1.多様性の視点を意識する
日本は島国であり、標準時間や言語、文化や風習などが、決して同じではないものの、比較的同じようなものとして共有されています。当然のように同一の文化や価値観の中で、日々の生活を送っています。それが当たり前なので、特に異文化や差異を意識することはありません。これらが日本独特の「同調圧力」の、一つの理由なのかもしれません。無意識レベルで他の人と同じことを求めたり、その場の空気を読むことが最優先されることにつながります。
しかし近年は個性重視の時代であり、同じ日本においても、他者の価値観や生き方を尊重することが大切にされてきています。集団から個性を尊重する社会に変化しています。特に海外の人や文化と接すると、その当たり前という前提が大きく異なることに気づきます。まさに多様性の視点をリアルに感じます。これらの視点を、いろいろな人との関わりや生活の中で、大切にしていきましょう。異文化との関わりは、自分の価値観の変革のチャンスです!
2.日本の文化、自分たちの生活を大切にする
海外の人とお話をしたりすると、自分の持っている価値観やアイデンティティーに触れたり、意識することがあります。その根底にあるのは、これまで自分が生まれ育った環境とその文化の豊かさです。日本での生活が長ければ、日本という国の風土や自然、歴史、現状の知識や理解のことです。これは案外よくわかっていなかったり、知らないことが多いです。
異文化を理解することは、”外”を意識をすることではありますが、まずは自分の足元をしっかりと作ることも大切です。それは自分たちの生活や日本の文化を、理解したり経験することです。海外の人の方が、日本のことをよく知っていたりすることもありますから。
これから世界はどんどん近くなり、グローバル化はますます進展していきます。そんな社会に生きる子ども達は多文化共生が当たり前になります。そんな意識や経験を、パパやママが少しだけ持つことが、子どもたちの世界を大きく広げることにつながります。
教えてくれたのは
小崎恭弘さん
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。
http://kasei.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/teachers/5.html