「エレベーターにひとりで乗ったら危ないよ」と指示したら…難しい!子どもへの伝え方

子どもを犯罪から守るために

子どもが巻き込まれる怖い事件・犯罪が後を絶ちません。親として、いかにしてわが子を安全に守っていくかは、大きな課題でもあると思います。
幼稚園・保育園時代とは違い、小学校に入ると子どもだけで行動することも多くなりますよね。わが家では、子どもがひとりで行動する時に守るべき約束事をいくつか子どもに伝えてあります。
・子どもだけで家にいる時は、チャイムがなっても出ない、電話には出ない
・外から家のカギを開ける時にはまわりに誰かいないか確認する
・出かける時は、誰とどこに出かけて何時に帰るのかわかるようにしてから、カギをしめて出る
など、ごく基本的なことを伝えてありました。
そして、「ひとりの時はエレベーターは使わない」もそのひとつでした。

エレベーターは危ないから階段で…と伝えた結果

エレベーターの形状は、住んでいるマンションなどによっても違うと思います。
わが家はマンションの4階住まいですが、入口がオートロック式ではなく、エレベーターも階段も誰でも自由に使用することができるような造りになっています。

エレベーターはひとりで乗っている時に、悪い人が乗ってきたら逃げられないから危ない、と子どもたちには伝えてありました。
うちのマンションは、両端に階段があるのですが、片側の階段は大きな道路に面していて、まわりの手すりがオープンで人が使用しているのが外から見えるようになっています。そして、面している道路は比較的人通りの多い通り。加えて、そちらの階段側の部屋は小学生の子どもがいる家庭だったり、お付き合いのあるご近所さんだということもあり、大きい道路に面した側の階段を使用すること、という約束にしていました。
万が一の場合も何かあったら大きな声を出す、防犯ブザーを使用するなどすれば、誰かが気づいてくれるであろうというつもりで、子どもたちにはエレベーターではなく階段を使用するように伝えていました。

素直すぎる子どもの理解

その結果…。

2年生のある日、2歳上のお姉ちゃんから、「〇〇(妹)が、自転車持って階段あがってた」との報告が。
私の頭の中、?????どういうこと?「なんで?」と私。「知らん」とお姉ちゃん。

次女に確認してみたら、4階においてある自転車に乗って友達と遊びに行くのに、4階から階段で自転車を下ろし、帰ってきたらまた4階まで自転車を運んだとのこと。
それを聞いても私の頭はまだ?????
よくよく聞いてみたら、
お母さんからエレベーターには怖い人が乗ってくるからひとりの時は階段を使いなさいと言われていた→「エレベーターは怖い」「エレベーターはひとりで乗ってはいけない」=自転車で遊びに行く時も階段を使わないといけない

こういう図式ができあがっていたようです。

もう本当に驚きました! その後、苦渋の決断として、「自転車を使う時にはエレベーターを使いなさい」と言い直したのでした。ブレブレな親の態度で振りまわしているようで申し訳ないなと思いつつも、それしか方法が思いつかず。

現在小4の次女。この記事を書くにあたり、本当にそんなことをしていたのか再度確認すると、「5回くらいはやったと」。今でもできる?と聞いてみたら、実演してくれました。当時より一回り大きい自転車になっていますが、割と軽々と持ち運んでいました

大事なことを、子どもに正しく伝えるにはどうしたらいいのか?

それ以来、子どもたちに何か伝える時には、できる限りきちんと伝わっているか確認するようにしています。
「うん、わかった」という返事があった場合でも、「何がわかったの?」と聞き直して、子どもがどう理解したつもりになっているのかを確認します。子どもの中の常識と、大人の常識との認識のズレというのがおおいにある、ということに気づいたからです。

そうは言っても、大人としての経験の積み重ねからの常識というのは、なかなかそこから出るのは難しい! まさかこんな発想が?と思えるような、大人の常識では考えられないような変換が子どもの脳内で行われることもしばしば。
気をつけているつもりでしたが、今年の夏はこんなことがありました。

子どもたちだけで留守番する時に、「暑い部屋にいたらダメ。涼しい部屋にいなさい」という指示をしていました。
仕事中、子どもから電話がかかってきました。「頭が痛い」と。熱中症での死亡事故などがニュースになっていた時期です。
その日はきょうだいがでかけていて、留守番は4年生の娘ひとり。私は心配になり、仕事を抜けて家に向かいました。帰ってみると、エアコン設定25度に扇風機をつけていて、体が冷え切っていました。

子どもたちは学校でも熱中症の危険を聞かされています。ニュースを一緒に見た時には、「熱中症で死んだんやって!」というような話題を親子でもしていました。そのため「暑い→熱中症→死ぬ」と考えた結果、どんなに体が冷えてきてもエアコンの温度を上げるという選択肢はなかったようです。

結論、大人はありとあらゆる想像力をふくらませて!

子どもに4階から階段で自転車を上げ下ろしさせたのは、本当に私の言い方が悪かったのだと思います。私が、「〇〇ちゃんとどこどこで遊ぶのに自転車で行っていい?」と聞かれ、「いいよ」と許可したのですから。
常々「エレベーターは危ないから階段を使いなさい」と言われ、「エレベーター=怖い」という恐怖感を持った子どもは、「自転車で遊びに行きたいからエレベーター使っていい?」とは聞いてこないんです。
聞かれなければ、一般的な大人の感覚として、「まさか自転車を4階から階段で下ろさないでしょ」と思うのは私だけではないのではないでしょうか。

でも今は、〝エレベーターを怖がっている子どもなら階段を使うかもしれない〟という、そんな壮大な想像力を持って子どもに接することができるようになりたいと思っています。その大人の想像力こそが、子どもを守るカギになるのではないでしょうか。

ライター

絵本専門士鳥山由紀の画像

絵本専門士 鳥山由紀

絵本専門士、絵本セラピスト(R)。 乳児親子向け施設、小学校等絵本読み聞かせの他、絵本に関する講演・執筆、大学講師等。2021年絵本販売店「絵本選書・販売 月のクローバー」を開業、イベント等にて出店。2017年より、京都市保育士会機関紙「ほほえみ」連載中。2018年から絵本読み聞かせと箏演奏のユニット「ことえほん」を立ち上げ活動中。3児の母。 ブログ「えほんらへん」

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