絵本を通して子どもと考えたい「戦争」と「平和」

絵本を通して子どもと考えたい「戦争」と「平和」

「戦争しないで話し合ったらいいのに」テレビを見ていたわが家の中学生がつぶやいたひとこと。そうだよね、みんなそう思ってる、きっと。でも…。

ウクライナとロシアの状況を知らせるニュースからは、破壊された街並みやケガをした子どもを抱いて歩く人、爆撃の映像などが飛び込んできます。そんな様子を見て、状況を理解できる中学生はもちろん、小学生や小さな子どもたちも、心を痛めて不安を感じているのではないでしょうか。簡単に説明はできないけれど、何が起こっているのか、子どもたちにもきちんと伝えることはできないかと私は考えました。
今回の記事では、衝撃的な映像で戦争の恐怖を感じさせるのではなく、しっかりと平和の大切さについて親子で考えられる絵本を紹介します。

小学生の息子に読んでみた「へいわとせんそう」

文:谷川俊太郎、絵:Noritake ブロンズ新社

毎晩読んでいる寝る前の絵本は、いつも子どもが選んでいますが、先日はあえて私の選書で読みました。
この絵本は、戦争の状態と平和の状態が絵で見比べられるようになっています。でも味方の顔も敵の顔も変わりません。味方の赤ちゃんも敵の赤ちゃんも。味方の朝も敵の朝も同じようにやってきます。
読み終えた後、「なんで戦争するんかな」とつぶやいた息子の言葉が印象的でした。
どこにも「戦争反対」とは書いていないけれど、子どもと一緒に読んで、なんのために戦争をするんだろう、平和がいいよねという会話が生まれ、平和について考えるきっかけをくれる絵本です。

ポーランド語でも伝えたい!「へいわってどんなこと?」

作:浜田桂子 童心社

絵本に描かれている「おもいっきりあそべる」「あさまでぐっすりねむれる」。当たり前のように感じていたこれらは、平和が保たれないと失われてしまうということが、暗い影のある絵とおもいっきり楽しく明るい絵との対比で描かれます。
ロシアによる侵攻以来、ウクライナ隣国のポーランドには、多くの子ども、女性、高齢者が避難していて家庭などでも受け入れを行なっているとのこと。ウクライナの隣国であるポーランドで、自国の、またウクライナから避難してきた子どもたちにこの絵本を届けよう!と、ポーランドと日本の学生の共同プロジェクト「おにぎりプロジェクト」が、ポーランド語での朗読映像を公開しています。
作者の浜田さんは、インスタグラムにこう書かれていました。「ポーランドの子どもたちが、この絵本を見ることで、隣国の子どもの立場、友達になることの大切さが理解できるのではとポーランド全土での配信のご依頼がありました。喜んで承諾するとともに、日本での配信もすることに致しました。一刻も早く、戦争が終結することを強く願っています」。

『へいわってどんなこと?』ポーランド語での朗読
期間:2022年3月1日〜2022年4月末
主催:滋賀大学/ポーランドのヤギェウォ大学「おにぎりプロジェクト」

自分にできることなんだろう?「へいわってすてきだね」

詩:安里有生、画:長谷川義史 ブロンズ新社

「ああ、ぼくは、へいわなときにうまれてよかったよ。これからも、ずっとへいわがつづくように、ぼくも、ぼくのできることからがんばるよ。」
これは沖縄の小学1年生の男の子の詩です。平和を思う素直な気持ちが伝わってきます。「へいわなときにうまれてよかったよ」いつの時代の誰もがそう思って生きていけますように。長谷川義史さんが沖縄を訪れて描きあげた絵本です。

ニュースに心傷めた子どもにどう向き合う?「いっしょにおいでよ」

文:ホリー・M・マギー、絵:パスカル・ルメートル、訳:なかがわちひろ あかつき教育図書

たくさんの人たちがにらみあって怒っているテレビのニュースを見て、女の子は怖くなります。そして「こんなのっていやだ。どうしたらいいの」とお父さんに尋ねます。
そんなとき、あなたならなんと答えますか? 「子どもはそんなこと気にしなくていいの、大丈夫!」と言いますか?
私もこの本を読んで、自分はなんて答えるだろうと悩みました。小さい子どもには難しい絵本かもしれません。パパママが読んで、自分の子どもに何をどう伝えたいのか、伝えるべきなのかを考えるための1冊のように感じました。
作者からは「わたしたちは ちっぽけだけれど 無力ではない」とメッセージが送られています。

目を閉じて聞こえてくるのは誰の声?「しあわせになあれ」

詩:弓削田健介、絵:松成真理子 瑞雲舎

親が子どもに名前をつけるときに願うことはただひとつ「しあわせになあれ」。今これを読んでいるみなさんも、そう願って、お子さんに名前をつけたのではないでしょうか? そしてあなたの名前もあなたを大切におもう人が「しあわせになあれ」と願ってつけたはずです。
この本のあとがきには、目をとじて心の中で自分の名前を何度も呼んでみて、誰の声がきこえてくる?と問いかけています。
絵本を通して、子どもたちに「しあわせになあれ」という願いが伝わるといいなと思います。

ありがとうって言ってみよう「ありがとうございます」

作:塚本やすし 冨山房インターナショナル

おじいちゃんから、ありがとうをたくさん言うと気持ちがいいよ、と教えてもらい、それを実行します。いろんなもの、人に感謝の気持ちで「ありがとう」を伝えます。おじいちゃんの言う通り、気持ちよくなりました。そしてそのことを教えてくれたおじいちゃんに「教えてくれてありがとう」と伝えます。「ありがとう」を伝える、これも自分に今できることのひとつなのかもしれません。

今回は、実際に子どもたちが爆撃の様子やけがをした人の映像を見ているかもしれないという状況を考えて、できるだけ戦争の恐怖が目に見える絵本は選書しませんでした。これらの絵本をお子さんと一緒に読むことで、身近なところから平和や幸せについて考えるきっかけになればと思います。

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ライター

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絵本専門士 鳥山由紀

絵本専門士、絵本セラピスト(R)。 乳児親子向け施設、小学校等絵本読み聞かせの他、絵本に関する講演・執筆、大学講師等。2021年絵本販売店「絵本選書・販売 月のクローバー」を開業、イベント等にて出店。2017年より、京都市保育士会機関紙「ほほえみ」連載中。2018年から絵本読み聞かせと箏演奏のユニット「ことえほん」を立ち上げ活動中。3児の母。 ブログ「えほんらへん」

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