味覚の成長を助けるモンテッソーリ教具「味見つぼ」。味や匂いを感じる力を育てる工夫とは?
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味覚の発達を助ける教具『味見つぼ』
モンテッソーリ教育では、2~6歳の感覚器官が最も発達する時期を助けるために、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)に対応した活動を用意しています。「味見つぼ」はその名の通り、味覚に対応した教具です。さまざまな味を体験しながら、これは「甘い」「酸っぱい」「塩辛い」「苦い」と言葉で表現していきます。
「味見つぼ」は4種類のどれかの味がする液体が入った小瓶が2本ずつ、合計8本あります。
・甘い:砂糖を溶かした水
・酸っぱい:レモン果汁
・塩辛い:塩水
・苦い:センブリを薄く溶かした水
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勤務先の子供の家で使っている味見つぼです。
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スポイトで中の液体を取り出すことができます。
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4種類の味のつぼが8本で1セットになっています。
初めにそれぞれの味を子どもと一緒に体験し、「これは甘い」「これは酸っぱい」と紹介していきます。その後はランダムに選んだ瓶を味わいながら、「どんな味?」と質問したり、同じ味の瓶を探す活動を通して味覚を深めます。
「味見つぼ」は子どもが味覚だけに集中できるように、同じ瓶に液体を入れて活動しますが、時には応用の活動として、さまざまな食材を用意して味わってみることもあります。キャンディやジャム、おせんべい、塩昆布、梅干し、レモン、薄めたコーヒーなど・・・それぞれを味わってみて、4種類の味に分類してみます。
瓶に入っている液体と違って実物を見るとどんな味かわかってしまうので、この時はアイマスクを使って見えないようにします。子どもの口に小さく切った食材を入れて、「どんな味?」と質問します。「甘い!」「うーん、これは・・・塩辛い?」などと答えてもらい、様子を見ながら何種類か繰り返します。お友達があてている様子を見たり、自分の番がきてちょっとドキドキしたり・・・楽しいゲーム感覚で子どもたちに人気の活動です。
モンテッソーリ教育では、「感覚教育」を子どもの成長の基礎と位置付けています。感覚を研ぎ澄ます活動を通じて、環境に対する気づきや集中力、思考力が育まれるのです。特に味覚や嗅覚は、感覚の中でも軽視されがちですが、実は子どもが「食べる楽しさ」を知り、健康的な食生活を身に付けるために重要な役割を果たします。
味見つぼの活動を通じて、子どもたちは味について考える習慣がつきます。これは、食材や料理への興味を深め、食育にもつながります。また、「甘い」「酸っぱい」といった言葉を学ぶことで表現力が豊かになり、他者と感想を共有するコミュニケーション能力が育まれます。
家庭でも簡単にできる食体験
家庭では、特別な教具がなくても「味覚」を育む活動ができます。たとえば、冷蔵庫にある調味料や果物を使って、「どんな味がする?」と問いかけるだけでも良いでしょう。また、目を閉じて味を感じたり、匂いを当てるクイズにするとさらに楽しくなります。
味見つぼの活動をすると、幼児はたいてい「おいしい」「おいしくない」といった抽象的な表現をしがちです。これを広げるために、家庭では以下のような工夫が役立ちます。
・食事中に「甘いね」「ちょっと酸っぱい味がするね」など具体的な味を一緒に感じてみる。
・同じ食べ物でも「最初は甘いけど、後で少し苦い味がするね」など、変化に注目する。
・食べ物の味だけでなく、「香ばしい匂いがするね」「さっぱりした香りだね」と匂いも含めて話題にする。
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冬休みなど時間に余裕がある時には、活動を発展させて「味覚地図」を作るのもおすすめです。「甘い」食材を集めてリストを作ったり、「酸っぱい」ものを探してみたりと、子どもが自分で分類する楽しさを味わえます。
このような活動を通じて、子どもたちは五感を豊かに発達させるだけでなく、味や匂いについての表現力や感じる力を養うことができます。家庭でも、日常の食事の中で少しずつ取り入れてみると、親子の会話が広がり、楽しい時間を共有できるでしょう。