笑顔がない、限界…中学受験、始める前こそ考えておきたい「やめる」ライン
【中学受験連載】第4回/近年、都市近郊で増えてきている中学受験。「気になるけれど、実際どうなの?」「うちの子どうする?」未就学児〜小学生のママ・パパへ、焦ることなく、無知でもなく、「自分たちらしい選択ができるようになるための知識」をお届けします。
前回は、受験をスタートする前に夫婦で話し合うべきことについてお話しました。(前回はこちらhttps://enfant.media/learn/57020/)。今回はもう一つ、ご夫婦で話し合っていただいたらよいかなと思うテーマです。
「希望校に受からなかったときの対処法」
「受験をやめるときのライン」
最初に考えておいた方が良い理由
まだ始まってもないのに「やめるライン!?」と思われるかもしれません。「最初からそんな弱気では受からない!」と言う人もいるかもしれません。ですが、当事者は、まだ成長過程の子どもなのです。ときには、身体的な理由や、精神的な理由などで、方向転換の決意が必要になることも、あり得るのです。
「もうこの子の限界かな」「笑顔がなくなってしまったな」「身体にも悪い影響が出てしまっている」などと感じるときには、親の責任として「今は、違う方向を向くことで、あなたが将来もっと成長できると思う」と、そっと肩に手を置くことが必要な状況が、訪れないとも限りません。
また、中学受験は、第一希望合格者は少なく、第一希望以外の学校に入っていく子どもがほとんどの世界です。第一希望以外の学校に入っていく時に、本人がネガティブな気持ちにならない導きは、大人として大切な仕事だと思います。ましてや親であるご自身が不合格を失敗と捉えて、後ろ向きな気持ちにならないように!
そのような理由から、上の2つについては、親としてまだ冷静に考えられる、始める前の段階で、夫婦間で決めておくと、1つの指標になるのではないかと思います。それでも一旦始めてしまうと、その渦中に入り込み、客観性を失ってしまうものです。子ども自身ものめり込んでしまい、なかなか抜け出せなくなってしまうケースもあります。ですから、「フラットな感情でいたあの頃に、あのように考えていたよね」と、後で思い出せるようにしておくことをお勧めします。
それは決してネガティブなことではなく、挑戦することの大切さと同時に、自分に合った選択にシフトすることも、人生にとって大切なことだと教えてあげることで、どんな選択も、良い経験にしてあげること。保護者の責任として、そこまで考えておけたらいいですよね。
とはいえ、親は自身の子どもには、どうしても感情的になってしまう生き物。一度始めた道を引き返すのは、大変な勇気です。客観的視点を持ちながら、子どものことをよく知る存在として、祖父母などに「あの子が、危うい状況になっていると感じたら教えてね」などとお願いしておくのも、1つの手。あくまで、最終ゴールは、子どもの幸せ。そのために始めた受験だということを忘れずに。
夫婦は助け合うパートナー
中学受験生活は、そのくらい大変なことではあります。だからこそパートナーシップは重要です。ただでさえ大変なのに、受験が原因で夫婦喧嘩、のようなことになってしまったら…、そんなことは考えたくありませんよね。自分のせいで喧嘩をする両親の姿を、子供に見せたくもないと思います。ですから、そんな事態を避けるためにも、夫婦間でよく話し合い、あらゆる方針を決めることは重要です。夫婦は助け合うパートナー!と強く意識しましょう(シングルの人はご両親などの信頼できる存在と手を組み、相談したり助けてもらったりするとよいと思います)。
いつもお伝えしているのですが、教育に「絶対」はありません。どんな進路も、どんな学校も、どんな決断も、絶対的な1つの正解はないのです。子どもが、その先にどんな未来を描いていくのかは、誰にもわからないのです。
ですから、ご自身の価値観だけを信じて一方的に押し付けるのではなく、パートナーのご意見も尊重されながら、二人で子どもの幸せを真剣に考え、お互いに納得できる着地点を見つけていかれるのが、結果としてより良い形になる気がいたします。
子どもの幸せを夫婦で共に深く考えるきっかけを得たと思えば、とても有意義な経験になると思います。それは、自分たちの幸せを見つめ直すことでもありますから。家族で、大変だったけど良い経験だったね、と笑い合えるものにしていっていただけたらと思います。