学校では優等生な小1の娘。家では母を叩いたり、なぐったり…どうしたらいいの?
Q 学校で優等生な反動か、家では叩いたり、なぐったりします
小1の女の子です。学校では優等生で、「素直ないい子」だとよくいわれます。しかし、家では叱られると泣き続け、人の話も耳に入らず、同じことをいい続けたり、母を叩いたり、なぐったりします。「やめて!」と言ってもやめません。
ひどいときは1時間も大声で泣きじゃくります。そういうときはどうすればいいかわからず、放っておきますが、叩かれ続けるのはイヤなので、強く叱ってもまったく変わりません。
学校で気を張っている分、家では溜まったストレスを発散させているのかなと思いますが、私自身も忍耐の限界に来ています。どうすればいいのでしょうか?(ノンノン)
A 自己肯定感が低く、他者からの承認欲求が強い子」に起きやすいケース
「優等生で素直ないい子」と学校でいわれているようですが、気をつけた方がいいケースかもしれません。家にいる時に「泣き続け、親を叩く」ことが、とても気になります。
親や大人は子どもが「素直でいい子」といわれるとうれしいものですよね。しかし、子どもはそんなに簡単なものではありません。「いい子でいる」ことは、子どもにとってはストレスが溜まるものなのです。「いい子でいる」ことは、他者の評価を絶えず気にし、それに行動や考えを合わせるという作業がつきものだからです。
そうしたことを繰り返しているうちに、「いい子でいる自分」が本当の自分であるというように思い込んでいくことで、「いい子の仮面」が内面化してしまうことがあります。こうしたことを「ペルソナ」といいます。
「ペルソナ」(1)とは、外向き・表面的な人格のことで、その場にふさわしい役割を演じることが、社会的には適応するので、自分自身が不安定化(批判を受けたり、叱られたり)することを防ぐ心理的機能のことをいいます。心理学者のカール・ユングが提唱した概念です。
必ずそうであるといっているわけではありませんが、今回のご相談と似ている気がします。難しい話の連続でわかりにくいと思いますが、ひと言でいえば「外面的評価を内面化することを通して、自分の生き方を<他者からの評価を基準>に決めてしまうこと」です。実はこうしたことは誰にでも起こることですし、起こっていると思います。
例えば「学歴が優秀だと自分の価値も上がると思ってしまう」「役職が上であることが人間的にもすばらしい証である」「大企業に勤めていると人間的に上である」などと思っている部分がないでしょうか。私達は誰もが「ペルソナ」をかぶって生きているといっていいのかもしれません。
相談者さんのお子さんは小さい時から「物わかりのいい子だね」とか、「しっかりしているね」といわれてきたのではないかと思います。その積み重ねが、他者評価を基準にするようになってしまったのかもしれません。
「良い面」も「悪い面」も認めてあげよう!
子どもは日々バカバカしいことを考えているものです。また悪いことも、ついしてしまう存在です。そうした時にも、認めてあげることが必要なのです。「良い面も、悪い面も含めて、あなたなんだよね!」と認めてあげることが大切です。もちろん「ダメな時はダメ!」と叱ることは必要です。きちんと叱る理由を説明したあと、「そういう悪いことをついしてしまうのも、人間だからだよね。こんなことで、あなたのことをキライになったりしないよ!」とつけ加えることが必要です。それが内面化した「ペルソナ」をはがしていく一番の方法なのです。
「バカバカしいこと」を一緒にしてみよう!
大人だって、つい「いけないことだ!」と思っていてもやってしまうことがありませんか。「早く帰らないと、妻に怒られるな~」と思いながらも、つい居酒屋で飲みすぎてしまうことってありませんか(私もついやってしまうのですが…)。
親子でバカバカしいことをやってみるというのも面白い方法ですよ。私が担任したクラスの子どもがこんな詩を書いてきました。(2)
この詩のように、子どもと一緒にバカバカしいことをやってみて、笑い合うことで自然な感情の交流ができるようになっていくのです。「いい子」であることを迫られる現代だからこそ、大切なことなのではないでしょうか。
【引用文献】
(1) 「ペルソナ」 https://yasabito.com/489
(2) 「子どものココロが見えるユーモア詩の世界 親・保育者・教師のための子ども理解ガイド」(増田修治著、ぎょうせい)
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